表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
173/244

174.これもある種の刷り込みだろうか?

 

 

 それは飛ぶというよりは、落下してくるといった方がある意味正しいと思う。

 翼をたたみギュルンギュルン身体を揺らしながら頭を下にこっちに向かって落っこちてくる。正確にはゴトの真上に。

 あれって何かのアーカイブで見た記憶がある。確か曲芸飛行の失速技だったかな。なんかそれっぽい。

 

『ぎょぉぉるぅぅうくぉぉおろろろおおぉぉぉ~~~~っぅ!!』


 見事な禿頭に鋭い嘴。細長い首をくいくっとしならせながら、その茶色い翼をゴトの真上に来るとバササ~~~っと広げて停止し滞空する。おおっ、ハゲワシっ!かっきー!!

 

「すんごく珍しいのです。ロックヴァルチャーというレアモンスターなのです」

 

 ほへーと呆けた表情でララが言葉を漏らす。

 ララが言うにはこの街道襲撃イベントではLuk値が高いと稀にやって来るらしい。Luk値ねぇ。でもそれ必ずしも幸運ではない様な気がするのは僕だけだろうか………。

 

 広げた翼の長さは5m程で拳で攻撃して来たゴトをものともせずに、ヒョイとその鋭い爪を持った足でゴトの両肩を掴むとバッサバッサと羽ばたき北へと飛んで行ってしまう。あ、ゴトがなんか言ってる?よく聞こえないな。

 

「さらばなのですっ!」

「グッ!グッグッグ!!」

「あでゅ~」

 

 ララ達がビシッと敬礼をゴトへとやってる。ふむ、僕もやった方がいいかな?

 

『………はっ!野郎どもっっ!!こいつ等をやっちまえ!ただし従魔には傷をつけるなよっ!!』

『『『『おうさっ!!』』』』

 

 突然の出来事に我を失っていた忍者―――もとい盗賊頭が我に返り攻撃を指示する。それに応じて盗賊たちが僕達に襲い掛かってくる。

 だけどすでに警戒していた僕達は、すぐに攻撃に対処をする。

 と言ってもララとウリスケによって、後ろにいた盗賊は倒されて行ったのだけど。

 

 ウリスケが後方の1人へと音もなく突進して行って体当たりを繰り返して倒してしまったのだ。

 音にすれば、どぎゃ、ばぎゅるるどががんっ!!って感じだ。

 その後右端にいた盗賊のみぞおちにドドンと体当たりを食らわせて、蹲ったところへオーバーヘッドキックを後頭部へとヒットさせて悶絶させる。


 そして剣を振り上げてこちらに向かって来た盗賊達には、ララの土魔法がマシンガンのごとく幾つも幾つも盗賊へと命中して無力化してしまう。やるな、ララ、ウリスケ!!

 ララとウリスケが後方の盗賊を倒していくのを横目で見ながら、僕とアテスピ団の皆で前方の盗賊と対峙する。

 

『ちぃいっ!やれぇっっ!!お前等は後ろの奴をやれぇっ!!』

『『へいさぁっ!!』』

『『おっさぁっ!!』』


 

 盗賊頭の命令で2人の盗賊が前に進み出て、剣を振り上げて襲い掛かって来る。

 そして盗賊頭の後ろにいた2人の盗賊が弓を構え矢を放ってくる。もちろん狙いは後衛の僕とアスカちゃんだ。

 

「アクアウォール!」

 

 飛んできた矢をアスカちゃんが水魔法の壁で防ぐ。いや、ぎりぎりずぶりと先端が壁から突き出てけっこー危ない。

 あ、こっちにも飛んできた。シュパンと2発。

 ガントレットで角度を調整し逸し弾く。

 

「なら、こっちも同じ手で。とりゃ」

 

 僕は弓を構え矢を番え狙いを適当に2連射する。

 

『ちいっ!』

『あぶっ!』

 

 さすがに適当に狙っただけなので、当たる事はなかった。

 まぁ、要は時間稼ぎの攻撃だから。

 

「アクアシュータス!」

 

 そこにアスカちゃんが待ってましたとばかりにの水魔法を後ろにいる盗賊へと放つ。

 狙い過たず見事にズドドンと2人へと命中する。おおっ、やるぅ。


『ぐはっ!』

『いてぇっ!』

 

「ウィンドカッタ」

 

 ドドンッッ!

 

『ぎゃああっっ!ぐあああぁっ、っでぇえっっ!!』

 

 はえっ?何?一体何が起きた!?

 僕が音のした方を見ると、そこには僕の頭から飛び降りて杖を掲げてるアトリと、その先に痛めた右腕を左手で押さえている盗賊頭の姿があった。

 

「ばくだん。ふせいだ」

 

 ん?あ〜………なる程。こっちに向かって爆発物を投げようとしたのを、アトリが防いでくれたという事なんだろう。

 

「やるな―アトリ。ありがとなー」

「ぬほー」

 

 僕はアトリに礼を言いながら、指で帽子越しにその頭をグリグリ撫でていく。

 アトリは目を細め変な声を上げて喜ぶ。喜んでるよね?

 

「マスター終わったのです!」

「グッグッグ!」

 

 そこにララとウリスケが戻って来た。後ろにいた4人の盗賊達は死屍累々と言った感じで倒れている。

 ん?何で盗賊あのひと達は消えないんだ?

 僕がちょっと気になった事をララに聞こうとすると、何故かララは頭をこっちに差し出してきた。

 

「ララ達も撫でてなのです」

「グッ」

 

 いや………今戦闘中なんだけど。………いいのか?

 少しだけ心配になってちらとアテスピ団の方を見ると、盗賊相手に特に苦もなく戦っていた。

 ちょっとだけならいいかな?という事で皆には申し訳なく思いつつララとウリスケの頭を撫でていく。

 

「ララとウリスケもご苦労さん」

 

 なでなでなでなで。

 

「ぬほほぉう………」

「グゥ〜〜ン………」

 

 ララとウリスケの頭を撫でると、2人は恍惚の表情を見せる。

 ララの髪はさらさらふわで、ウリスケは少し固めでもその刺激と触り心地はとても良い。うむふ〜、僕はその触り心地にしばし陶然(ほえ〜)となる。

 

『おいっ!まだテイム出来ないのかっ!?早くしろっ!!』

 

 そこに焦りを含んだ怒声が聞こえてきた。あっと、そうだった。

 今は戦ってる最中だった。いかんいかん。撫でるのをやめて盗賊へと意識を向ける。

 

『頭ぁっ!俺じゃあダメでさぁ!こいつ相手じゃLvが足りねぇっ!!』

 

 馬車の中から顔を出して残りの盗賊が、情けない声を上げて盗賊頭へと言い訳をする。

 

『ちっ!仕方ねえっ!俺がやる、お前ぇはこいつ等を抑えてろっ!』

「……………」

 

 やり取り自体は妥当ではあるんだけど、なんとも芝居臭さが鼻につく。いや、いいんだけどさ。ゲームだしね。

 そして盗賊頭が馬車へ移動する所に、ララが土魔法が火を吹いた。

 

「行かせないのですっ!グランディグ!」

 

 足元の地面に穴が開き盗賊頭は見事にバランスを崩してビタバンと倒れ顔面を強打する。

 

『なっ?ぐぅあだっ!!』

 

 ご褒美(なでなで)を邪魔された憤りを晴らすかのように見事に決まった。

 

 顔面強打した盗賊頭を見て怒りの目で馬車にいた盗賊が、槍を手にこっちに襲い掛かってくる。

 

『死ねやああああっっ!!』

「グッ!グッグッグッグ!!!」


 

 でもその前にウリスケがストトトと音も少なくその盗賊に接近して、その脇腹に体当たりを食らわせる。しかも身体を捻りながらだ。まさしくコークスクリューボディアタックだ。

 

『げヒャぁ!?あっ、ババババッ!!』

 

 そして顔を歪ませて盗賊が横へと吹っ飛んでいく。

 僕は僕で倒れこんだままの盗賊頭へと矢を放っていく。さくさく。

 よくよく考えると、僕魔法ってほとんど使ってなかったわ。

 確かアテンダントスピリットはPCの使うスキルに準拠するって話なので、僕が持ってるものじゃないと使えないって事だった。

 

「うむむ………こりゃイカンがな」

 

 僕はついそんな事を呟いてしまう。よし、これからしばらくは魔法縛りで戦っていく事にしよう

 という訳で、ではさっそく。

 

「ウィンドカッタ』

 

 目標あいてに手を向け翳して呪文を唱えると、白く太った三日月の様なエフェクト(もの)がクルクル回転しながら飛んでいき、見事盗賊頭へと命中する。

 

『ぐああっ!き、きっさまああっっ!!』

「ウィンドカッタ、ウィンドカッタ」


 ペイくんとハヤトくんが戦っている盗賊の横側に周り魔法を放つ。

 

『ぐあっ!』

『アガガッ!』

 

 どうやらパーティーを組んでいなくても、同じイベントに参加してるという事らしく、特に何かに阻害されることはない様だ。って今更か。

 

「シィールドバァアッシュっっ!!」

「ハングアッパァア――――ッッ!!」

 

 ペイくんが盾で当族を突き飛ばし、ハヤトくんがアッパースィングでハンマーを盗賊へとかち上げる。

 エフェクトがキラっと光りちょっとかっこいい―。

 スキルLvを上げていくとアーツが使える様になるってのは分かっていたけど、あー言うのを見てしまうと やっぱりいーなぁと思ってしまう。

 

 そういや弓とか手甲とかアーツって覚えるんだったけ?そういうの確認してなかったなぁ。うむむ。

 いやいや、そんな事を言ってる場合じゃなかったよ。

 だけど周りを見てみると、盗賊達が倒れ伏しているのが目に入ってくる。

 

「?」

 

 いや、やっぱり少し考えてみるとおかしい。何でこの盗賊達は消えないのかと。

 やっぱイベント絡みなのかな?

 

「アクアヴァリクス!」


 

 ズドドンと派手な音を立てて水の矛が盗賊の1人を貫く。

 

『げ、はっっ!』

 

 その一撃に盗賊のHPがつきて動かなくなる。そしてピコンと白い旗が身体の上に表示された。

 白旗ってなんともベタなものを。

 

「ララ、あれってなんなの?」

「はいなのです。あれはイベント時の討伐表示なのです。イベントで倒されたNPCは、この後のイベントに必要なので場合によってはこの様な事になってるのです」

 

 あーぶっちゃけちゃったよ、ララさん。まぁそれはそれで達成感はあるのかな?

 どうやら盗賊の1人はワンダーとアスラーダ、しーちゃん達がとどめを刺し、もう1人はウリスケが倒したようだ。

 後は盗賊頭だけど、ズリズリと馬車へとこっそりと匍匐前進している姿があった。バレバレですがな。

 

「ウィンドカッタ」

「ウィンドカッタ」

 

 取り敢えず魔法撃っとけという訳で風魔法を放つ。

 アトリもその後に魔法を放つ。

 

「ぐはっ!まさか、こんな簡単に………」

 

 ガクリと頭を落とし盗賊頭はそのまま動かなくなり、ピコンと白旗が上がる。

 

 ピロコリン!コングラッチュレーション!

 [イベント07−a:盗賊を退治せよ!]を クリア しました

 

       盗賊頭 1/1 5000 GIN

       盗 賊 9/9 4500 GIN

       EXP 3000

       ガチャチケット を 10枚 手に入れました

 

 おーガチャチケ10枚とは大判振るまいな。でも多分またタワシなんだろう、きっと。

 

 どうやらこれでイベントはクリアしたみたいでほっとする。

 これでララとウリスケが奪われるという危機は去ったのだ。

 

「おっ、レベルアップだ!

 スキルスロット増えた!

 よっし!アーツ生えた!」

 

 アテスピ団の皆もリザルトの出たホロウィンドウを見て喜んでいる。そっか僕はスキルスロットの代わりにガチャチケって事なんだな。

 僕もちょっと確認しとこうかな。

 

「あ、呪文覚えた。Lvも上がってる。ふんふん、けっこー美味しかったんだなこれ」

 

 なんてったって風魔法数発しか撃ってないのにLvが上がって呪文を覚えるのだから、相当なんだと思う。

 

「マスター、それは単にLvが低いからなのです」

「………だよねー」

 

 ふんふんと僕が呟いてると、ララから突っ込みが入ってくる。まぁ確かに全然使ってなかったもんなぁ魔法。今度から気を付けよう。

 さて、それでこれからどうすればいいものやら。

 

「しばる。まとめる」

 

 僕が倒れてる盗賊達をどうしたものかと眺めていると、アトリが頭の上(ていいち)から言ってきた。

 しばる?まとめる?………ああ、なる程

 

「みんなー、とりあえずこの盗賊達を縛ってひと纏めにしとこう。後から来た人達に迷惑にならないようにさ」

「分かりました、ラギさん

 うん、りょーかいー  

 おっしゃあ、やるかっ! 」

 

 こうしてアテスピ団のみんなと協力してずりずりと盗賊達を引きずって馬車の横へとまとめて行く。

 さすがに10人もいると大変だった。

 

「ラギさん、何か縛るものありますか?」

 

 ペイくんが手持ち無沙汰に聞いてくる。

 ハヤトくんとアスカちゃんを見ると、首を横に振ってくる。だよねー。

 

「マスター、馬車の中にあるかもなのです」

 

 ララが馬車の幌の中を覗いて言って来る。

 おー、その手があったか。

 さっそく僕達は馬車の幌を全開にして中のものを検める事にする。

 

「うわぁ~………」

「「「これって………」」」

 

 明るくなった馬車の中、そこにはいくつもの獣檻ゲージとその中に入れられたモンスターが目に入ってきた。

 ほとんどの小型のモンスターがこっちを見て警戒する様に唸り声を上げている。

 少しばかりビビりつつ、目的のものを見つけ出す。

 ロープが入った箱が手前にあったのだ。

 

「じゃ、僕達がやっておきます

 じゃ、あたし達がやっておくね

 おう、俺達がしばっておくぜ! 」 

 

 アテスピ団の皆がそう言いながらロープを持って馬車を出て行く。

 

「しっかし、これ何するつもりだったんだろうね」

 

 ケージの中のモンスターは僕が見たことのないものばかりだった。敵意むき出しで小さくてもちょっと怖い。

 そして何より特におっかないのが、正面にある大きなケージの中にいる蛇型のモンスターだ。

 毒々しい紫色の身体に山吹色の斑点がポツポツとついている。いかにも“毒持ってます私”って主張してるのが分かる。

 

「どうやらこのヴェノンパイソーを従魔にして対抗しようとしたみたいなのです。このモンスターは超強力な毒を持ってる超危ないやつなのです」

 

 ララが側に来て説明をしてくれる。もしかしてかなりヤバかったのか?このイベント………。

 僕がジト汗を感じながら後退あとずさると、何かが足に当たる。


「ん?なんだろうか、これ?」

 

 焦げ茶色のいわゆるズタ袋というものだ。僕が両腕で抱えられる程の大きさのそれは、口が紐で固く縛られている。

 そしてその中で生き物が入ってる様に何かがもぞもぞ動いている。そこにくーくーという哀しげな声が聞こえてくる。

 もしかして人が!?とも考えたけど、そこまで酷いことやるかな15禁じゃないよねぇこのゲーム。

 

 油断といえば油断なんだけど、僕はその声を聞いてつい結び目を解いてつい袋を開け始めてしまう。くぅ、かったいなこの結び目。

 結び目を何とか解き袋口を開けると、途端に何かが飛び出して来て、僕はそれに驚き尻餅をついてしまう。

 

「うわっ!」

「マスター!」

 

 スタリと床に着地したそのコは、尻尾と耳をピピンと立てくるる〜〜〜っっと僕達を威嚇してくる。

 だけど僕の顔を見つめるとくはっと目を見開き、すぐに態度を変えて僕の胸に抱きついて来た。

 

「ニーチャ」

 

 え?どゆこと!?

 

 ピロコリン!

 [従魔スキル が 発動しました]

 [ミスティニーテイルフォクス〈幼体〉を 従魔 に しますか?]

        《Yes》  《N o》

 

 ホロウィンドウが現れて、いきなり従魔テイムのメッセージが表示される。

 

 ………とりあえず保留でいいですか?

 

 


(ー「ー) お読みいただき嬉しゅうございます

 

ブクマありがとうございます!感謝です! (T△T)ゞ

 

スキル関係で不具合があるところは現在見直し中です

しばらくご猶予を m(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ