170.めんどい道行き
僕達とアテスピ団の皆は、モンスタートレインを回避するため街道を西へと走り出す。けれどそうは問屋が卸さなかった。
トレインしていたPCが今度は僕達の方向へと進路を変えて来たのだ。
「どういう事?これ」
走りながら僕が呟くと、ララが横を飛びながら顔を顰めて言って来た。
「おそらくなのですが、死なばもろともな考え方の持ち主なのです。人間的には下種な部類の者なのです」
ふんすと鼻を鳴らし断言するララを見ながら、何ともなぁという思いを感じる。こういう状況なのだからと考えれば、そこまで酷い人間じゃない事を願いたいとも思うんだけど。
「どうしよっか、これ?」
西街道をひた走りながら、迫ってくるモンスター達の土煙を横目で見つつ呟く。(いや、どうしようもないが)
「ララがやってみるのです。皆さんは先に行ってなのです!」
そう言ってララが停止して、モンスタートレインの方へと身体を向ける。
さすがにララを置いてきぼりにする訳にはいかないので、僕も立ち止まる。同様にウリスケもだ。
「どうしましたラギさん?もしかして戦うんですか!?」
追いついて来たペイくんがなんでか嬉しそうに僕へと聞いて来る。いや、戦わんし………。
「いや、ララが何とかしてみるっていうから、みんなは先に行っててくれる?」
「ラギさん達をおいてなんて行けませんよ!
ラギさん達見捨ててなんて行けないもん!
ラギ達残してなんて行けねぇぜっ! 」
僕がそう指示するも、やって来た3人が声を揃えて否定してくる。
「こうなったら一連ちくしょうです!
こうなったら一連ちくしょうだよ!
こうなりゃあ一連ちくしょうだぜ!」
それって託生じゃなかろうか………。でも何故かこの場に合ってる文言のような気がしてしまった。誰に対してのちくしょうかは明白だしね。
僕等とモンスタートレインの距離は100mを切っている。
ララは目を閉じ右人差し指を左右に振ってリズムをとっている。まるでオーケストラの指揮者の様に。
ドドドという地響きと土煙が次第に大きさを増して迫ってくる。
それに従い前を走るPCの姿も何とか見る事が出来ていた。
「「「うわぁあ〜………」」」
アテスピ団の皆が残念なというか少し呆きれ気味な声を揃って漏らす。
うん、僕も同意見である。
プレイスタイルは個人個人好きずきであっていいと思うけど、さすがにあれはなぁ〜………。
どこの世紀末キャラって話だ。
黒に近い紺色の革製のベストに、トゲトゲ付きのショルダーガード。
そしてヘアースタイルはモヒカン、いやトロージャンってやつか。
トサカの様に金色の髪の毛が顔の2倍ほどの長さまで伸びている。
正直言ってVRでも現実でもお近づきになりたい御仁とは思えない。ってか絶対近づきたくない人種だ。
ヒャッハーとか言いそうだ。
「ひゃっはぁぁあ―――――っっ!!巻き込まれろやぁあああ〜〜〜〜っっ!!」
「……………」
言っちゃったよ。
50mを切り地響きは更に激しさを増し、土煙がもうもうと巻き上がって迫り来る。
その迫力にさすがに僕も及び腰になる。
「うわ〜………こっわっ!
むーこんちくそうめっ!
うおっ!まぢビビるっ!」
この状況でも変わらずのユニゾンスタイル。すごいわ君等。
そして30m近くまで迫り回避不可能と判断できる状況になり僕が身構えた時、ララが行動を開始した。
「はぁ――――っ!行くのですっ!!グランディグっっ!!」
「あぎゃっ………」
カエルが潰れるような声の後、一瞬の空白の間からズズズズンと大量の大きな何かが転倒する音が響き渡り地面が揺れる。
そう、おそらくララは20体ほどのモンスターの足元に穴を開けて転倒させたのだ。(と思う)
「今なのですっ!退却なのです!!」
「う、うん、分かったっ!みんな行くよっ!!」
「はい!逃げましょう!
了ー解っ!退却です!
おうっ!逃げるぜっ!」
この機を逃さず僕達は街道を西へ向かて走り出す。ゴト?知りません。
5分ほど走って索敵範囲内にモンスターの姿がない事を確認して、ようやく僕は立ち止まる。
ゲーム故かとくに息切れをするなんて事はないんだけど、僕は感覚的に深呼吸を繰り返す。
アテスピ団の皆も同じ様にはぁはぁ言っていたりする。
「はぁ〜助かったよ、ララ。MPは大丈夫?」
僕がひと息ついた後、疲れた様なララに声を掛ける。
「………すっかすっかなのです。さすがにあの数でタイミングを取るのは難しかったのです」
ぐてーと肩を落としながらララが僕の方に腹這いに乗っかかる。
僕はメニューを開いてMPポーションを使ってララのMPを回復させて行く。
数本を使ってようやく1/3程か、相変わらずララのMP量は半端ないな。
「「「ララさん、マジかっけーっ!!」」」
何が起きたか分からずとも、それをララが成したと理解したアテスピ団の皆がララを賞賛する。
「ふ、ふふ〜ん。任せてなのです」
「「「おおっ!!」」」
僕の肩で照れながらポーズをびしっと取るララにさらに声が上がる。みんなノリいーよね。
まぁこれで落ち着いた感じでカアンセに向かえるかなぁと思っていたんだけど、アトリの声でそれは無理だと悟ってしまう。
「きた」
何が、とは問わずに僕は東の方を見る。
そこには手を振りながらやって来る2人のPCの姿があった。
1人はもちろんゴトで、もう1人はモンスターをトレインしていたPCだ。
「………生きてたのです」
「グゥ………」
「ちぃ」
いかんなぁ………僕の影響のせいでララ達が酷い事になってしまってる。とは言ってもこればっかりはなぁ………。はぁ。
それよりもまためんどい事が降りかかってきそうなので、皆と口裏を合わせておく事にする。
「えー1人はともかくもう1人は途轍もなく嫌な感じがするので、僕達は基本受け答えは簡潔にします。そんでララとアトリは喋らないようにして」
「分かったのです」
「おけ」
「グッ」
ララがビシッと敬礼をし、ウリスケが立ち上がって胸?ドンと叩く。アトリは見えないので返事があったからよしとしよう。
「僕達はどうしましょう、ラギさん?」
ペイくんがやって来る2人を見ながら聞いてくる。
「うーん……、皆の判断に任せるかな?僕にそんな資格もないしね」
義務と言っちゃうと言葉悪いしなぁ………。僕の言葉にアスカちゃんがしーちゃんと向き合って互いに頷きを交わす。
「あたしとしーちゃんはだんまり決めだよ」
「ですっ!」
「ワンダーも頼むね」
「おっけっス」
「ガ?」
「いや、おめーは大丈夫だから」
アスカちゃんとペイくんがだんまりを決めて、それにしーちゃんとワンダー頷きを返す。
アスラーダの問い掛けにハヤトくんは問題ないと宥める。
さて、方針めいたものが決まったとこで、僕達が歩き出そうとしたところにゴト達がやって来る。
「ひでーなぁ。俺だけ突っ込ませんなよなぁ」
いや、人の意見聞かずに一人で行ったでしょ?あなた。
「おーっす!大変だったな、お互いよっ!」
「………………」
あー………こいつ本当にダメなヤツだ。自分のやった事を省みもせず、相手に対して悪びれもしないってのはどうしようもない。
なので僕は無言でそのPCを睨み付ける。モヒカンだって怖くないぞっ!
「なんだぁ?その顔は。俺が何やったつうんだよっ!ああっ!!………いでっ!ンだよーゴォト」
モヒカン男が歪めた顔を怒りに染めながら僕を睨み付けてくるが、そこにゴトがチョップを放って突っ込みを入れる。
「てめぇがモンスター引き連れて来たからだろうがよ。ふつー謝るのが筋だろうが」
まるで常識人の様な事を言ってるゴトに、僕は一瞬目を瞠る。
「つってもよー、結局何もなかったんだからいいだろうがよーゴォト」
はぁあ?何も起きなかったから責任を感じないと言うのはお門違いもいいとこだと僕は思うんだけど、とアテスピ団の3人をちらと見ると、少しばかり苦々しく顔を顰めていた。
実際こんなのの相手をしている時間がもったいないので、ここはさっさと移動するに限る。
という訳で僕はくるりと振り返り街道を歩き始め、アテスピ団が後に続こうとするとモヒカンが声を掛けてきた。
「待てよ。俺はゴーナルて言うんだ。フレ録しようぜ。ほら、あんた達もよ」
ゴトに引き続き空気“見ない”人間が来たようだ。
どういう思考をすればモンスタートレインに巻き込もうとした相手に、そんな事が言えるのか。それとも僕がおかしいのか?
僕がおかしいと言うのなら、それでもいい。僕は足を止めて振り返りモヒカンに言葉を返す。
「そちらの考え方は知らないが(知りたくもない)、モンスタートレインにこっちを巻き込もうとする人間なんかに、名を名乗るのもフレンド登録するのも拒否するよ。あとついて来ないで貰えるか?正直不愉快なんで」
普段の僕らしくない強い口調でモヒカンへと言い放つ。
それを見たアテスピ団の皆がおおっという顔をする。
「ンだっとぉっ!?てんめぇー、人が下手に出てりゃつけ上がりやがってよぅ!やるか?おらっ!!」
僕の物言いに触発されたモヒカンは、メニューを出して操作を始めるも、ゴトのひと言で途端にやめてしまう。
「お、そいつ俺より強ぇーぞ。PvP負けっぱだから」
「ちっ!」
「大体よー、なんであんな事になったのよ、おめー」
「ああ、そりゃ俺らのパーティーでモンス狩っててよ~」
途端に2人で話し始めたので、僕達は視線を交し合い移動を始める。正直付き合ってられない。
僕達とアテスピ団の3人は、西へと街道を歩き進んで行く。
ゴトとモヒカンの2人も後についてきてるみたいだ。
そこにペイくんが僕の横に来て、小声で話をしてくる。
「相当酷い人みたいですね。僕、ああいう人初めて見ました」
うん、さすがにあそこまで酷い人間ってのは現実でも見かけな………くもない?いや、いるなー。
でもふつーは見かけないよね。きっと。
だから逆にこういうゲームの中だからこそ、あんな悪ぶったプレイが出来るのかも知れない。(金ピカ鎧もそうだし………)
聞くこともなしに耳に入ってきたその話は、6人でパーティーを組んでてモンスターをモヒカンが誘き出して倒して行く中で、モンスターを誘き出しすぎてあんな状態になり、パーティーのPCは死に戻りしたと笑いながら話していた。
「……………」
むぐぐ………パーティーがやられたってのに、そんな話を笑いながらするってのはアリなのか?
みんなはどうなのかと見てみると、眉間に皺を寄せて口をへの字にしている。ああ………良くはないけど良かった。
「なぁなぁ、あんた従魔使いなんだろ?だったら俺のと交換しねぇ?絶対損はねぇぜ」
いきなりモヒカンが僕の隣にやってきて、そんな事を言い出した。
そしてモヒカンは懐から小さなハムスターのようなモンスターを出してきたのだ。
何気に可愛いとは思うが、だから何?という話だ。
「俺が見つけたハミゾでよ。テイムし放題な訳よ。交換したならいくらでもやるぜ?」
だれかっ!誰か助けて下さいっ!ここに空気を全く見ない人がいます!!
が、誰も助けに来ないのは分かりきっている。うん………。
「俺さー、テイムモンスコレクしてんのよ。アンタのって珍しそうじゃんか。せっかくだからその2体共交換しよーぜ」
モヒカンは更に僕の神経を逆撫でする事をのたまって来た。
そもそも従魔は飾りでも集めたりするものではないと僕は思っている。
なので僕は決然とモヒカンへと言い放つ。
「僕は僕の従魔達に愛着も執着もある。君如きなんかにうちの子を譲る気はさらさら無いよ。もう僕等の後について来ないで貰えるかな。じゃないなら先に行ってくれ」
僕がモヒカンを睨みつけて拳をギュギュッと握り締めると、苦々しい顔をしてこちらを睨みつけてくる。
「ンだっとぉっ!!オラァあっっ!!」
もう一触即発という雰囲気の中、またまたゴトが首を突っ込んできた。
「ラギさんよー、そんなにカリカリすんなよ―。ゴーナルもちったぁ空気読めや」
アンタが言うなって話である。
「でもよ―。人が親切に言ってんのによ―」
自分本位の押し付けを親切と言うとは、ほとほと呆れる。
しかもララ達の事を完全に物扱いしてるのにムカっ腹が立って来た。むぐぐぅ。
「おめーが逆にモンスターに集られてんの押し付けられたら頭来んじゃね?」
「………ちっ!わーったよ!アンタの顔に免じて許してやるよ」
誰も許しなんて欲しくないよ―。やっちゃっていいんだよ―?うう、僕もちょっとやばいかも………。
モヒカンは苦虫を噛んだ様な顔をしながら歩き出す。
そしてすれ違いざまに小さく僕に囁く。
「てめぇラギ。覚えてろよ。色々思い晒してやるよ。クソがっ!」
そう小声で吐き捨てるように言って去って行った。はぁ。
「ふふ〜んなのです。あんなのがやれるのは情報操作と煽りなのです」
モヒカンが去るとララは馬鹿にした様な視線をモヒカンに向けて言い捨てる。はて?ララが何を言ってるのか分かりません。
僕が首を傾げると、ララは分かってますとばかりに説明を始めてくれる。
「あの手の輩が行う報復めいた行動は、ネットを使って嘘の情報を流して大勢人間の意識を一定の方向に向ける事なのです」
「ああ、炎上とかステルスマーケットみたいなのかな?」
「大体あってるのです。そういうのを個人で行って特定の人間を貶めようとするのです」
何とも迂遠な事をやるものだ。
まぁそう言うのが真綿で首を絞める様にじわじわ効いてくるのかも知れない。
「ん?それって僕に影響あるんだろうか………」
僕ってあんまりそういう情報って気にする性質じゃない。
ほとんどの情報というのはテレビから得ていたるするのだ。
直接僕にかかわら無いものに関しては、特に僕自身の心に対して影響を及ぼす事がない。
もし及ぼす事があったとしても現在の法律では、すぐに捕まる事になっている。
まぁ厄介である事には違いないけど。
そういやガッコーに入りたての頃あったっけ。やって来たのは撃退したけど。
「ですがこのゲーム内でそんな話が出て来ると、マスターが楽しめない事になってしまうのです。ララにはそんな事は許容出来ないのです!」
ララがめっちゃ力説してる。
その姿を見てると、本当にありがたいなぁと思ってしまった。
僕は現実でもそれ程人お付き合いがある方じゃない。
幼少期の経験がそれに影響を与えてると思うけど、一部分排他的になってるのだろう。
だけど姉に頼まれて始めたこのゲームではいろんな人との交流を成すことが出来ている。
その筆頭はもちろんララとウリスケだ。
2人がいたからこそ、僕はこの世界を楽しむ事ができていると言ってもいい。
たとえそれが決められて行動の末の結果なのだとしても、確かにそれは僕の目の前に“ある”ものなのだから。
「ありがとなララ、ウリスケ。……あー、アトリも」
「はいなのです」
「グッグッグッ!」
「おけ!」
皆もいるし、現実には姉や父さんや母さんだっているのだ。それにアパートの住人も。
嘘や噂に惑わさられる事もないだろう。きっと。
僕が微かに笑みを浮かべ息をほぅと漏らすと、ララが安心させる様に言葉を掛けてくる。
「マスター、大丈夫なのです。あのモヒカン野郎は何も出来ないのです!」
ニタリと黒い笑顔を見せて、ララがそんな事を言ってくる。
「うん、………お手柔らかにね」
なんとなくララのやろうとしてる事が予想出来てので、僕はほどほどにとお願いしておく。
この間アテスピ団の皆は僕達のやり取りを興味深く見ていたようだ。恥ず………。
とりあえず一難は去ったので、僕達はモヒカンの後を追うように西へと歩き始める。いやまぁ、去ったと思った一難は去ってなかったんだけど。
しばらく西街道を進み、ようやく僕達は大橋の前まで辿り着く事が出来た。(疲れた)
2度めの大橋。アテスピ団の皆は初めての大橋に感嘆の声を上げている。
だけどそれを目の当たりにして、僕はどうすればいいか少しだけ思い悩む。
何が起こるのか分かってしまえば、ここの攻略は容易だ。けど、それはゲームを楽しむ上では弊害になりかねないことも分かってる。
だからこそ姉達は必要最低限のことしか言わずにいたのだろうと思う。(ただ単に面白そうだという事もあるけど)
多分下手に黙っているもの僕としては気が引けるので、皆に聞いてみる事にする。
「皆は攻略法って知ってる方がいいってタイプ?」
「僕はどっちでも
あたしは調べるのが
俺は知らん方が 」
彼等はもしかして三つ子かなんかなんだろうか?あまりにも合い過ぎるんだけど………。
「「「いい!!」」」
しかも三者三様。どうしましょ。僕がちょっとだけ考え呻いていると、ペイくんが気遣わしげに声を掛けてくる。
「ラギさん。僕達はどれでも構わないので、ラギさんがやりやすい方にして下さい」
「………そっか、分かった。ありがとペイくん」
ペイ区の後押しもあったので、僕はここの攻略法を説明する。
「えーとこの大橋を全力疾走で駆け抜けます。何故かというと橋の中に一歩踏み込むと、川の中から魚のモンスターが飛び出してきて襲ってくるからです」
僕の説明に半信半疑ながらも頷く3人。まぁ百聞は一見に如かずというし、見てみればわかる事だ。
「それじゃ、行くよ。よーい、ドン!」
僕が思いっ切り走りだすと、アテスピ団の3人も慌てて後に続く。
それと同時に川の中からドバンドバンと飛び出てくるでっかい金魚。
「うっわっ!でかっ!?
うっわっ!こっわっ!
うっわっ!やっべっ!」
3人が声を上げるのを聞きながら僕は先頭を走る。「あ、待てよっ」って声が聞こえたけど、知ったこっちゃない。
「マスター!気を付けてなのです。前方に爆弾が置いてあるのです!」
橋を半分ほど進んだところでララが警告を発してくる。
前の方には黒くて丸いソフトボールほどの物体が点々と置かれていた。
どう考えてもあのモヒカンの置土産としか思えない。ちくそう、やってくれる。
本当に性質悪いな!あのモヒカン!!
「ウリスケ!」
「グッ!!」
僕がウリスケに声を掛けると、任されたとばかりに声を上げ先行していきソフトタッチで右に左にと欄干の外へと爆弾を放り出していった。
そして爆弾は川の中に入るやいなや、激しい音と共に水柱を上げていく。何っ!?あの威力っ!!
「ったく、あんなのがあるんだったらモンスタートレインした時使えばいいものをっ!」
「まったくなのです」
こうして爆弾と金魚の襲撃を何とか躱して大橋を通り抜ける。
そういやウリスケ爆弾の最後の1個は横じゃなくて前の方に放っていたけど、何だったんだろうか。
こうして僕とアテスピ団の3人がひと息ついて大橋を見ると、一部に金魚の山がこんもりと出来ている所があった。
「アレが走り抜けが出来なかったものの末路なのです」
ララが腰に手を当て、ニタリと黒い笑みを浮かべて言ってくる。
あー………金魚に押し潰されるのは、けっこー嫌かも。
「ウリスケ、頼める?」
生きてるか分からないけど、義を見てせざるはだ。
「グッ!」
ウリスケは承知とばかりに声を上げストトトと風の様に走り金魚の山に体当たりをしてその山を吹き飛ばしてしまう。すごっ!
「ウリスケさんすごいっ!
ウリスケさんかっきー!
ウリスケマジやっべっ!」
アテスピ団の3人がウリスケの姿に感嘆の声を上げる。
「いでっ!あだっ、ちょ、まっ、」
そして埋もれていたゴトをハードタッチで蹴り転がしながら戻って来た。ご苦労様。
やれやれ、とんだ道行きである。
(ー「ー)ゝ お読みいただき嬉しゅうございます




