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15.初級クエストをやってみる

ブクマありがとうございます

増えたり減ったりで一喜一憂する近頃

 

 

 ウィンドウに“初級クエストをうけますか?”のメッセージの下に〈Yes〉〈N o〉とある。すぐに〈Yes〉を押さなきゃいけないんだけど、つい〈N o〉と押したくなるのは僕が天邪鬼なせいだろうか。

 そんなことを頭で思い浮かべながら〈Yes〉を選ぶ。すると周囲の風景が変わっていく。


【WELCOME! BEGINNER’S ROOM】


 気が付くとまるで違う場所に立っていた。広さは先程のギルド受付と同じくらい。グレーの壁と天井に覆われた無機質な部屋の中に、四角い板のような顔が浮かんでいる。

 

『ようこそ。ビギナーズルームへ。私がクエストトレーナーのガンマだ。ガンさんと呼んでくれ』


 なんか出来損ないの四角いロボットの顔みたいなのに、何気にフレンドリーなトレーナーさんだ。( ◯ ◯ に□が上下して喋ってる。GBのエッ◯スを思い出す。あっちはワイヤーフレームだったけど。)


『では、クエストメニューを選んでくれ!』


 ズララーーとメニューがウィンドウに表示される。


・武器の使い方

・魔法の使い方

・アイテムの使い方

・スキルとは

・ハーミィテイジゾーンとは

・………

・……


 なるほど、これらを選んで勉強をするって訳だ。

 さってとどれをやろうかなっと。


『マスター。魔法なのです。魔法を勉強するのです』


 お?ララは魔法推しですか。なら最初に魔法のクエストを始めようか。

 ・魔法の使い方を選び決定。するとガンさんは魔法についての知識をよどみなく説明し出す。


『魔法の行程は、呪文の選択、詠唱、発動となる。呪文のLvによって高くなればなるほど詠唱の時間も長くなる。そして詠唱中に他の行動をすると、呪文が失敗となり詠唱自体がキャンセルされてしまう。では、その事に注意してやってみなさい』


 いきなり実践ですか。5メートル位先に丸い的が現れる。

 ふむ、ではやってみるか。

 えーとAとDが斬るで、Cがジャンプだから、Bボタンが魔法だよな。


『マスター。的をロックオンして、Bボタンを押したままで魔法を選んでBボタンを離します』


 的をロックオンしてから、Bボタンを押したままにすると呪文名が表示される。といっても2つだけだが。


「えーと、アクアビットとアクアヒールね。攻撃呪文はアクアビットの方か」

『そうなのですマスター』


 アクアビットを選んでBボタンを離すと“ヤマト”の身体が水色の光に覆われ右脇に☆とその下になんかのゲージが出てくる。ゲージはすぐに満タンになり☆がピカピカ点滅する。


『今なのです。もう一度Bボタンを押してくださいなのです』


 すかさずBボタンを押すと、“ヤマト”が『アクアビット』と叫ぶと水色の小石みたいのが左手から飛び出して的にバーンと当たる。


「おおーっ」


 いやいや、凝っていますな。今時のゲームはみんなこんなんなのだろうか。スゴイですな。

 何回か魔法を撃ってみる。どうやらこの部屋では魔法をどれだけ撃ってもMPは減らないみたいだ。


『うむ。では呪文キャンセルをやってみよう。呪文詠唱中に別の行動をするだけでよい』


 ガンさんに言われたとおり、呪文を詠唱中に別の行動をしてみる。動いたり、ジャンプしたり防御をとってもキャンセルされたりしなかった。


『マスター。攻撃をするのです』


 だよねー。再び呪文を詠唱。Lvが低いのですぐにゲージが溜まってしまうのだ。その前に横斬りをやってみるとパリンとガラスが砕ける音とともにゲージと☆が砕け散ってしまう。

 ゲージがあったところに[Failed]の小さなメッセージ。


『うむ。これで魔法の初級クエストは終了だ。次は何を選ぶ?』


 その後は持っているスキルの実践やその詳細。魔法の属性や、武器の属性、各種アイコンの説明など。


「次にスキルスロットだが、これにはメインスキルとサブスキルの2つのスキルスロットがある。メインスキルは5つ、サブスキルは10のスロットがあり、そしてメインとサブで設定したスキルの経験値はサブはメインの1/5しか取得できない。生産と戦闘時にはスキルの入れ替えなどが必要となる。スキルにもLvがあるのでぜひ注意してほしい。 以上スキルスロットの初級クエストを終了する。次は何を選ぶ?』


 んーじゃ、次に属性についてを選ぼうかなっと。

 モンスターにもそれぞれ属性があって、弱点や効きにくいものがあるとか。


『水は火に弱く、火は風に弱く、風は土に弱い。そして土は水に弱い。この4竦みこそが属性のことわりである。魔法自体が全く効果が無い訳ではなく、ある程度のダメージは与えることができる。ただし同種の属性への魔法攻撃は逆に回復させる場合もあるので気を付けることだ。又、属性のないモノもある』


 聞いていると丸っきりチュートリアルですな。単調になりがちなこの手のシークエンスもガンさんの語りで楽しく覚えられる。

 とは言っても半分以上はララから聞いていた事ばかりだ。


「ということは、魔法は4つ揃えないといけないって事なのか?」

『いえ、マスター。全部あればいいですがスロット数の制限があるので2つあれば大丈夫なのです』

「ふ〜ん。お奨めってあるの?」

『マスターは水を持ってるので風か土がいいと思うのです』

『これこれ娘さん。私の仕事を取っちゃいかんよ』

『ふぁ、ごめんなさいです』


 ララがペコリと頭を下げる。いや、すいません。


『以上で、属性の初級クエストを終了する。次は何を選ぶ?』


 次は武器の使い方かな?でも実際に戦ってるけど、聞くだけ聞いてみるか。武器の使い方を選ぶ。これが最後みたいだし。

 武器を選ぶと目の前に木で出来たいわゆるデッサン人形みたいなものが地面から生える様に出てきた。あ~ビックリした。


『始めから選べる武器は【剣】【槍】【手甲】【斧】【弓】であるが、お前さん【斧】を選らんどるの。まあ、最初は大変だと思うが使い続けると化けることもあるので頑張ってみるのもいいだろう』


 【斧】大変なんだ。まぁ戦ってみて特に不都合もなかったからこれからも使って行っていいだろう。


『近接武器には最初から使える[イミットアーツ]がある。MPを使い衝撃波を放つ技だ。離れた所からでも攻撃が出来るのが特徴だ。だが、詠唱時間があるので連続で何度も使えるものでもないことを頭の隅にでも刻んで置くように』


 ………知らなかった。そんな技があったなんて。

 なるほど、やはりチュートリアルや取説は呼んでおくのがお得なようだな。今回はララに感謝だ。でもこれからも見ないと思うけど。


『アーツには他に[コンビネーションアーツ][ブラストアーツ]など色々あるので自分で探してみるのもいいだろう。では実践に入ろう。目の前にいる木人形を相手に戦ってみるといい。では開始』


 3メートル程先に対峙している木人形にロックオンして、接近して縦斬り横斬りと繰り出す。木人形の頭の斜め上にダメージが表示されてる。数値が違っているのは何で何でなんだろうか。


『いいだろう。次は[イミットアーツ]をやってみよう』


 [イミットアーツ]ね、必殺技みたいなもんか。で、どうやるんだろう。僕がコントローラーを見て首を捻っていると、ララが声を掛けてくれる。


『マスター。斬るボタンを押しっぱなしで、ゲージが溜まったらボタンを離すのです』


 おー、ガ◯ルさんやチュ◯リーさんの溜め攻撃ってやつか。あれもすごかったよなー。ちっちぇーカードにあれだけのゲームが入ってるなんて今じゃ当たり前のことであるけど、当時はかなりビックリしんたんじゃなかろうか。携帯型機のPCエン◯ンGTでも遜色なく動いてたって言うから驚きもんだ。

 さすがにじーちゃんも持ってなかったみたいだけど、今度キノシタさんに貸して貰おかな。

 

 そんな事を思い出しながら、Dボタンを押したままにすると“ヤマト”の脇に魔法を使った時と同じように☆とゲージが現れる。

 魔法の時とは違い、今度は☆3コだ。長めの時間溜め続けるみたいだ。☆3コがようやく点滅して僕はボタンを離す。


『スラッシュ』


 “ヤマト”の声とともに横薙ぎにされた斧から白い透き通った物体が木人形に向かって飛び出していった。


『うむ、よかろう。ではしばらく練習をしているといいだろう。終了したら私を呼ぶがいい』

「ありがとう、ガンさん」

『うむ、頑張れ』


 そう言ってガンさんが消えていった。練習しててもスキルのLvが上がるみたいだし、少しだけやってみようか―――――

 と思ったら、玄関の方からガチャン、ドタバタドタバタと音が聞こえる。


「キラく〜〜〜〜〜〜ん!ギョ〜〜〜〜ザぁ〜〜〜〜」


 ソファに背もたれがあるので、ダイブして横からぎゅ〜〜〜〜〜。

 くんかくんかしてる姉を腕に感じながら時計を見る。11時過ぎ、もうそんな時間か2時間近くはやってたことになるのか。初級クエストながっっ!!

 ゲームは一時中断して、ギョーザを焼くことにする。

 姉よ。離れて下さい。



   *



 咲緒が風の様に所長室から去って行った後。

 

 先輩から送られてきたファイルを見て最初は誰かの脳波のサンプリングデータかと思った。けれど詳しく見ているうちにこれがAIのKPTパターンだということに気がついた。キーアクティブタイプとは、要はデータ量でその能力の高さが決まってしまう。メモリーチップの容量が格段に増加している昨今、容量そのものや学習機能を搭載するなどして、データの収集記録自体は問題ない。問題なのは理解し、判断し、行動する。これに尽きる。

 

 与えられた解答の中から言葉を理解して判断する。それ以上でもそれ以下でもない。そこから先が見えない頭打ちの状態。これが完成形と言ってしまえば、それで済んでしまう話だが、研究所を任された身としては更なる成果を求められるのが世の常だ。

 先輩に泣きついて頼んだ成果が今ここにある。

 AIと言っても所詮プログラムの集合体に過ぎない。

 ヒューマンエラーや言語の矛盾、知らぬ間に積み重なるエラ-プログラム。それらを修正し、あるいは回避し、迂回して起動させ稼動させるのがシステムエンジニアの技術であり腕だ。

 

 しかし、彼女はそれを凌駕し遥か高みに突き進み駆け昇ってる。

 美しい言語の羅列。その全て。


「聴覚、視覚、それぞれ分割して思考、考察部分を統合して実行。脳の機能と同じ?いや、そんな事してなんの意味が?」


 しかし、マルチタスクで表示された画面では、ポリゴンで作られた人形がしゃがんで草をむしる様な仕草をしたり、何かをかき混ぜるような動きを見せる。これはゲームキャラに載せたであろうAIの行動、そこに何かが見出せるか。


「暇つぶしどころじゃないですよ!先輩。ウヒョヒョヒョ――――――――ヒョ」


 所長室の中から何度も謎の奇声が響き聞こえたとか――――――



(-「-)ゝ お読みいただき嬉しゅうございます

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