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146.湿原地帯を移動中

 

 

 

 そんなレイさんのスタンスというか考えっぽい事を聞いてると、ナチュアさん達が降りてきた。

 

「おはようございます。ラギさん、レイさん」

「おはようございます」

「おはようデス」

 

 ナチュアさん達が朝の挨拶をして来て、僕達の隣のテーブルに着く。

 

「おはようございます」

「おはようなのです」

「グッ」

「はよ〜」

「おはようございます。皆さん早いですね」

 

 僕、ララ、ウリスケ、アトリ、レイさんが挨拶を返す。

 そう今やっと朝が明けたばかりなのでまだ早い方なのだけど、すでに朝食を食べ終えてるレイさんが言うと、嫌味に聞こえてしまう。

 

「……お待たせして申し訳ありません」

 

 ナチュアさんの謝罪に、自分が何を言ったか気付いたレイさんがあわあわし出す。

 

「あ、いえっ!そんなつもりで言ったんじゃなくて、あの、えっと、すみません!言い方間違えました」

 

 そう言ってペコペコ頭を下げ出すレイさん。さっき僕と話をしてた時とは全く様代わりのその姿に、なんともなアンバランスを感じる。

 たぶん本当に第三者的な物言いをしたんだろうと、僕は予想する。そこに自分の存在が無いかの様な。

 

「いえ、お気になさらないで下さい。色々と支度に時間がかかったことも事実ですので」

 

 しゅ〜んと聞こえそうな程項垂れたレイさんを余所に、ヨチモちゃんがナチュアさん達へ朝食を持ってきた。

 その顔にはイタズラめいた笑みが浮かんでいる。さっそく取り入れたみたいだ。

 その朝食を前に、ナチュアさんが少しだけ眉を顰める。

 切り分けられた黒パンをじーっと見つめる。

 

 どうやらナチュアさんは黒パンが苦手の様だ。表情がちょっとだけゲンナリしている感じがする。

 僕は食べ終えたトレイをヨチモちゃんへ渡し、水を飲みながらその様子を見ている。

 

「そう言えばあれって何のお肉なの?旨かったけど」

 

 なんとか己を取り戻したレイさんが平らげたハンバーグステーキ擬きの載っていた皿をつつき聞いてくる。レイさんなら何でも知っていそうだと思ってたけど、そう言うスタンスなのかな。

 

「サバーナゼブリアン……です」

「えっ?あれっえ!?」

 

 僕がぼそっと呟く様に答えると、レイさんはぎょっと目を見開き小声で聞き返してくる。

 そう、あれです。

 僕は無言で頷いて肯定する。

 見た目はあんなんだったけど、ドロップしたお肉は結構レアっぽかったのだ。

 

素材アイテム:ゼブラミート Lv13

       絶妙にサシと赤身が混じり合った

       何とも良い様のない幸福をもたらす馬肉

       ただし調理によってその真価が問われる。

 

 要は調理次第で天と地ほども変化すると言ってる様なもんだった。

 微妙に怖いと思った事は内緒だ。

 まぁ、結局料理作っちゃった訳なんだけどね。

 

ゼブラミートのハンバーグステーキ:ゼブラミートを細かく刻み

                 摺り下ろしたジャガポとその他野菜、調味料

                 を混ぜ形成して焼き上げたもの Lv10

                 本来結ばれるはずのないものを

                 完全なハーモニーを持って繋ぎ合わせたひと品

                 思う存分味わうといいでしょう

                 (HP+100 満腹度 75%)

 

 こんなん出た時、なんと言っていいものか僕は言葉に詰まってしまった。

 いやまぁ、今迄で最高の評価ではあるけど、テキストに何とも言えない悪意みたいなものを感じてしまった。

 他意はないのだろうしレイさん辺りなら知ってるのかもしれないけど、料理こっちの事はあえて聞く事はしなかった。

 僕なんかはそれなりに失敗する事なくララ達に美味しく料理を食べて貰えれば充分なので、特に何かを気にするものでもないからだ。

 

 その間もナチュアさんはスープを飲んだり食べたりして、黒パンを視界に入れない様にしてたけど、さすがに残す事は出来ないと意を決して黒パンを手に取る。

 プロメテーラさんもヴァーティさんも特に何を言うでもなく食事を摂っている。ただ目は驚きで見開いている。ほんと焼いただけなんだよ?

 

 少しはフォローしても良かろうにとも思うが、それぞれ胸に秘めたものがあると考え僕はただそれを見守るだけである。

 手に取った黒パンに、ん?と違和感を持ちつつスープに浸ける事なくナチュアさんは齧る。

 カリリという小気味良い音をさせて齧り取ると、ナチュアさんはくはっと目を見開いて僕を見てきた。

 

 確かに僕がやらかした事だけど、確信気味にこっちを見ないで欲しいと思うのは我侭だろうか。

 僕が目をついと逸らすと、はぁと息を吐きラギさんですものねと呟き食事を摂り始めた。

 なんとなく貶められた気分で、ちょっとむぅって気持ちになる。

 だけどやらかしたことに対しては甘んじてその評価を受ける事にして、胸の内で収める事にする。

 

 この後は特に何かを言われる事もなく、出発後の事についてナチュアさん達と話し合う。

 と言っても警戒する相手と、その情報を共有する位ですぐに終わってしまい、あとは宿屋を出て出発するだけとなる。

 ナチュアさん達は一旦2階へ戻り、僕達は特に準備もなかったのでそのまま待ってると、用意を調えたナチュアさん達がやって来たので宿をを出る事にする。

 

 宿屋を出る前にヨチモちゃんと親父さんに別れの挨拶を交わし、僕は親父さんに腕をブンブン振り回され、ララ達はヨチモちゃんにハグをされている。落差が激しいと思うのは僕だけだろうか。

 まぁ、下手に僕がハグなんかしたらロリ扱いされそうなのでやらないけど。(その前に親父さんに止められるだろうし)

 

 お昼にと弁当を貰い(黒パントーストのサンドイッチらしい)通りを南へと歩いて行く。

 それほど広い村でもないので、すぐに村の端に辿りそのまま門を抜け街道へと入って行く。

 そこでナチュアさんは立ち止まり、ティエリアを召喚する。

 ちょっと気になったので、ティエリアに乗り込んだナチュアさんへ訊いてみる。

 

「ナチュアさん、召喚獣って呼び出す度になんかあるのかな?」

 

 ありゃ、何とも漠然とした質問になってしまった。

 ただ呼び出すという行為が、従魔使い(テイマー)と違う事について少しばかり気になってしまったからだ。

 

「はい、呼び出す度にMP(まりょく)を消費します。なので必要な時以外は往還してるのです」

「それは何の為?」

 

 所詮何も知らない素人の戯言、ある意味聞いてはいけない類の話かもしれなかったが、あえて聞いてみた。

 

「はい。召喚獣サモンモンスターは魔力を糧に召喚よびだします。もちろん本人にその適正がなければ適う事ではありません。人によっては大量に魔力を消費するので必要時以外は召喚しないのです」


 ん?スキルがあればいいって話じゃないんだろうか。

 

「スキルとは違うの?」

 

「そういう方もいはしますが、一族の血と本人の資質で生まれた時に持つ者が殆どです」

 

 この辺りはPCとNPC―――カムナとゼアズだっけ、で仕様が異なってるのかも知れないな。

 

「でも従魔使い(テイマー)って特に何も代償みたいなもの無いものなぁ………」

 

 僕が召喚士と従魔使いの違いに小さく呟くと、ナチュアさんがそれを否定してくる。

 

「いいえ、従魔使いは常に従魔が側にいる為、食事やお世話に手が掛かります。それにこれは聞いた話ですが、スキルを持っていても必ずしも従魔になるモンスターが現れるとは限らないのだそうで、ラギさんは稀有な方だと思いますよ」

 

 ましてやあの様な素晴らしい方をと、こそっとナチュアさんが呟く。

 ………そうだったなぁ。ララはともかく、ウリスケは本当にたまたま従魔になってくれたもんなぁ………。

 

「お嬢様、そろそろ……」

 

 プロメテーラさんが声を掛けて何かを渡し、ナチュアさんがそれを身につけ始める。

 

「ラギさんも雨具を着られた方がいいですよ。まもなく湿原地帯に入りますから」

「湿原地帯?」

 

 確かに今まで足の長い草々が疎らになって、向こうまでの景色が見える様なっていた。

 この先から石畳が終わり、土の地面となっている。

 その街道の左右には、足の短い水草のような植物が青々と繁り風に揺れている。

 

「道を外れると、ぬかるみますので気をつけて下さい」

 

 そうナチュアさんが注意をしてくる。へぇ〜、そんな地形特性があるんだ。

 気になったのでちょっとだけ道を外れ片足を入れてみる。

 

「おーっ」


 ズブブと少しだけ足が沈んでいく。少しばかり歩き難そうな感じがする。気をつけよう。

 目の前ではウリスケがなにか楽しそうにバシャバシャ走り回ってる。

 

「マスター、雨具をお願いなのです」

 

 ララが雨具を出してと、拳をフリフリ言って来た。いけね。 

 

 僕はメニューを出して、アイテム欄から自分の分とララとウリスケの分の雨具を取り出す。

 

「まぁ、古典的な装いですね」

 

 すでに雨具を身につけたナチュアさんが、僕の姿を見て言って来た。ちなみにナチュアさん達はポンチョタイプだ。

 三度笠に縦縞の道中合羽。これで見た目はいっぱしの渡世人だ。

 ララとウリスケも似た様な恰好へとなっていく。

 

「かっこいーのです!」

「グッ」

「お~」

 

 雨具を身に着けると、ララは嬉しそうにクルクル回り道中合羽をヒラヒラ踊らせる。

 ウリスケは4本足だと動き難いのか2本足で立って歩き始める。

 アトリは僕が笠をかぶったので、今は左肩へと移動している。

 

 そして雨具を身に付けた後移動を再開すると、お約束のモンスターがやってくる。

 左右前方から3体づつ。

 僕達はナチュアさんを中央に、プロメテーラさん達(レイさん含む)が右、僕達が左に展開して待ち構える。

 

「「「ゲッゲッゲ、グェ~ッゲルロ~~ォ」」」

 

 なんか路上で蹲って酔っ払いが発する声みたいなのが合唱で聞こえてきた。

 

「ゲロッフゲロルなのです。飛び出る舌に注意なのです!」

 

 やって来たのは、体長60cm程の大きさの黒みがかったガマガエルの様なモンスターだ。

 距離は10mもない。ゲロゲ~ロ鳴きながら1列に並んで向かって来る。

 

「グッ!グゥッ!?」

 

 ウリスケが先制しようと湿原に入ると、ズブリと足が沈み動きを抑えられてしまう。

 それに雨具が邪魔で攻撃も出来ないんじゃなかろうか。

 

「ウリスケ、雨具はずした方が………」

「グッ!グッグッグ」

 

 僕の方に戻ってきたウリスケにそう言ってみるも、ウリスケはピョンピョン跳ねて何かを訴え始めた。

 

「マスター、ブーメランを出して欲しいなのです」

 

 おお、あれなら遠距離攻撃も出来るか………、できるのか?

 まぁ本人が欲しいというのなら渡す事にしよう。

 僕はメニューを表示して、プーメランを取り出してウリスケへと渡す。

 

「グッ!」

 

 ブ-メランを口に咥え街道の端っこでゲロッフゲロルと対峙する。

 僕は合羽を後ろにはね上げて矢を番え弓を構える。

 いつの間にやら現れた〇(たぶん照準?)をゲロッフゲロルの1体に合わせて射る。

 

「グゲッ」

 

 矢の一撃を受けて1体がひっくり返る。ダメージはそれ程でもない。

 だからこっちは手数で勝負だ。

 関節部や目など、ダメージがよく通りそうな部位を狙って次々と矢を射っていく。

 

「グベッ!ゲグッ、グエォッ!」

 

 4射目でクリティカルダメージを与えたみたいで、仰向けのままゲロッフゲロルは光の粒子となって消えていった。

 同時に他のゲロッフゲロフにララ達が攻撃をしている。

 

「アトリさん、よろしくなのです」

「おけ」

 

 ララの声に僕の肩からか笠の上に飛び移ったアトリが応じる。

 ララは例のおもちゃを弓を手にゲロッフゲロルへ構え射る。

 つまようじは鋭さをもって飛び出すけど、あまり威力がある様には見えない。

 

「ウィンドカッタ」

 

 アトリが魔法を唱えると、つまようじを巻き込んで中央のゲロッフゲロルへと一直線に向かっていく。

 

「グヴァッ!」

 

 ダメージ受けたゲロッフゲロルがひっくり返る。………そういう仕様なのか。

 途中からララが近づき過ぎて舌で巻き取られたりしたものの、ウリスケがブ-メランで舌を切り落とし事無きを得た後は(切れるんだアレ)、魔法と弓で倒す事が出来た。

 プロメテーラさん達の方も、街道に侵入してきた3体をサクッとあっさり倒してしまう。差があるなぁ。

 

 その後もゲリアリゲーターというワニのモンスターやヌベッタノベッタというサンショウウオに似たモンスターを倒して進んでいく。

 湿原の中を1/3程進んでいくと、灰色の雲に空が覆われ始めボツボツと雨粒が落ちてくる。

 

「スコールがきます。少し急ぎましょう」 

 

 やがて本格的に雨が降り出してきたので、少しばかり急ぎ足で街道を進む。

 

「うわっ!」

 

 そして何の前振れもなくいきなりスコールが始まった。  

 目の前では全開シャワーの様な豪雨が激しく降り注いでいる。でも僕達のいる空間(といっても1cm幅)には全く雨が降る事もかかる事もなく動く事が出来ていた。

 

「不思議現象だねぇ………」

「マスター、気にしたらダメなのです」

 

 まぁゲームだしなぁ………と胸の内で独り言ちる。

 そんなスコールの中でもモンスターは襲ってくる。

 視界の不十分な中での戦闘はなかなか骨が折れるものだった。

 戦っている間にも次第に照準がぶれなくなっていき、思ったところに当たる様になった時、SEが鳴りホロウィンドウが現れる。

 

 スコールの影響下で警戒をしながら取りあずそれをそのままにして、街道を南へと進んでいく。

 

「あ、あそこです」

 

 けぶる雨の中を急ぎ足で進んでいると、ナチュアさんが先の方を指差して安堵の声を上げる。

 そこには大きな1枚岩を組み上げて作られて物が街道の傍に立っていた。

 一見すると、地方にあるバスの停留所っぽい(あるいは高速バスか)

 

「あそこが雨宿り場です。急ぎましょう」

 

 まんまだね。

 ほぼ駆け足になりながら僕達は、その雨宿り場へと避難する。

 そしてスコールが止むまでしばし休憩となる。

 

 ベンチらしき一枚岩に座ってさっき放置したものを確認をする。何だったのか。

 

「派生アーツ………を取得しました?」

 

 レベルアップのお知らせと、何やらアーツが手に入ったみたいだ。

 ところで派生アーツって、なんじゃらほい?

 

 


(-「-)ゝ お読みいただき嬉しゅうございます

 

今年の更新はこれまでと思います(多分)

1年間お読みいただきありがとうございました (T△T)ゞ

よい年末をお過ごしください <(_ _)>

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