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140/244

140.そのお約束はご勘弁

 

 

 適当に決めたルールで負け抜け戦にする事にして始める事にする。

 

 第1戦目。

 ガルディオールさんが手甲を着けたままで木片を抜こうとして周りの木片を巻き込んで崩してしまう。

 ちょっと考えてみれば分かりそうなものなのだけど、知らないってのは無謀なんだなぁと思ったりもした。


 そして第2戦目。

 この時点である程度やり方を理解したのか、次々と木片を抜き載せてを繰り返していると、とんでもないことに僕は気付いてしまった。

 

 4という数はと言うか偶数ってのは割り切れる数ということもあり、バランスを取るという意味では安定しているものだ。

 なので崩れそうなタワーを、いかにも倒さない様に木片を抜いていくのがこのゲームの醍醐味なんだけど、このタワーはそれを失していた。

 

「キャンプファイヤーなのです………」

 

 ララの言葉通りに目の前には井の字型に積まれた木片があった。抜群の安定感だ。

 

「なぁ、ラギ坊。これって面白ぇのか?………」

 

 僕は眉間に指を当て、しばし考察をした後結論を出す。

 

「すみません。ちょっとばかり間違ったかも知れません」

 

 うろ覚えでやって見たはいーけど、あまりいー結果はもたらさなかった事に僕は頭を下げて謝罪する。

 4つ合わせて四角になったので、てっきりそれで遊べると持ってしまったのが僕の誤りだったのだ。

 僕は木片を手に取り3つを合わせる。

 

「多分、これ3つで組んで積み上げて遊ぶんだと思うんです。4つで四角になったもんで勘違いしちゃったみたいです。すみません」

「いや、……俺がよく思い出しもしないで作ったせいだ。あんたが悪いわけじゃない。これを3つで四角にすればいいのか?」

 

 僕が謝ってると、アーハンさんが庇うように声をかけて来て木片を手に取り聞いてくる。

 

「はい。小さくなっちゃいますけど、そうですね」

 

 縦か横の辺をのどちらかを短くすると、さらにドキドキすると思うけど、今はいーだろう。

 

「ちょっと待っててくれ。すぐに手を入れて戻ってくる」

 

 アーハンさんは木片をまとめて手に抱えて奥へと消えて行ってしまった。まだやる気らしい。

 

「お茶入れ直しますね」

 

 そして今度はアーレさんが奥へと行ってしまう。正直手持ち無沙汰になってしまう。

 

「そういや〜ドアイーク紹介の商会長が怒りながら工房通り(ここ)から出て来たの見たんですけど、何かあったんですか〜?」

 

 おやまぁ、どうやらガルディオールさんはドウィック老人達が立ち去るところを見ていたみたいだ。

 

「あたしも聞き齧っただけだけどな」 


 当事者がいないので(僕は論外)ショビッツさんがカクカクシカジカと簡潔に説明をする。

 いや………、まるで見ていたかのように臨場感たっぷりに話をしている。もしかして見てたんだろうか、いやまさかぁ………。

 

「ふんふん賭けでね〜……、その従魔モンスターはどうしたんですか?ある意味証拠物件になりますが〜」

 

 話を聞き終えたガルディオールさんが気になったらしい従魔について尋ねてきたので、僕は手に載せていた未だ寝こけているトカゲをガルディオールさんへと差し出す。

 

「この子ですね。どうしましょ?」

「なら、自分が預かっておきましょ~」

「お願いします」

 

 ガルディオールさんがトカゲを受け取り、小さな皮袋を出してそこへと放り入れてキュキュット口を紐で固く締める。

 大丈夫なんだろうか………あの扱い。

 

「で、ですね〜」

「またせたな」

「お待たせしました。お茶です」

 

 ガルディオールさんが何か言いかけた時、アーハンさんとアーレさんが戻って来た。はやっ、てか早すぎでしょ。木工職人すご………。

 すでに積み上げた状態のタワーはさっきより少しばかり小振りになっていた。

 

「うしっ!順番はさっきと同じでな。ガルディオは手甲それ外せよ」

「了〜解です」

 

 こうして始まったゲームは、白熱したものになっていた。

 木片が短くなった分難易度が増した為か、皆慎重に木片を抜いていく姿があった。

 結局最終的に勝利したのはショビッツさんだった。

 胸を反らし鼻を膨らませて豪快に笑っている。

 

「ふははははっ!残念だったなガルディオ。あたしの勝ちだ!」

「う〜ん………。も〜ちょっとだったんですけどね〜」 

 

 なんと最後まで勝ち残ったのはガルディオールさんだった。

 大変失礼な事を思ってすみませんでした!スペック高いよなぁ、この人。

 

 ようやく御役御免とばかりに僕は立ち上がりお暇を告げる。

 

「それじゃ、僕らはこれで失礼します。アーハンさん、あとこれ頂きます。それでちょっと相談なんですけど………」

 

 ショビッツさんがジェ◯ガを注文してるところに声をかけ、帰る事を告げると共にアメリ◯ンクラッカーを手に取り、ちょっとした相談を持ちかける。

 

「それくらいならすぐ出来る。ちょっと待っててくれ」

 

 アーハンさんはアメリ◯ンクラッカーを受け取り奥へと引っ込むと、すぐに戻って来た。

 

「これでいいのか?」

「はい!ありがとうございます」 

 

 受け取ったものは、紐を長めの鎖状にしてもらい片方の錘を少し重くして貰ったものだ。使えるかどうかは試してみないと分からないけどね。

 

「じゃ失礼します。ララ、ウリスケ行くよ」

「はいなのです。失礼しますなのです」

「グッグ!」

「あでゅー」

 

 土間の隅っこで何やらやってたララと、ウリスケを呼んで僕達を店を後にする。

 

「またなー」

「本当にありがとうございました」

「………ありがとう」

 

 ショビッツさんが手を振り、アーハンさんとアーレさんが深く頭を下げて僕達を見送ってくれた。

 こうして僕達は何事イベントも起こすことなく店を出れたのだけど。

 店を出て通りを戻ろうとすると、追いかけてきたらしいガルディオールさんが声を掛けてきた。

 

「ラギさ〜ん。ちょっといいですか〜?」

「はい?どうかしましたか?」

 

 やって来たガルディオールさんへと振り向いて僕は尋ねる。

 ニコニコと笑っているその表情に、何故かい〜やな予感しかしないんだけど……。

 

「折り入って頼みたい事があるんですが〜……どうでしょうか〜?」

「え〜………」

 

 どうでしょうかと言われても、なんと答えればいいのやら。

 

「マスター。禍根を断つためにも、ここは協力した方がいいなのです」

 

 ララが僕の肩に乗って囁くのを聞いて、分かりたくないけど分かっちゃった。

 僕は溜め息をこっそり吐いて、ガルディオールさんへと答える。

 

「取り敢えずどんな頼み事ですか?それを聞いてからって事で」

「で、すよね〜。じゃあ歩きながら説明しますので、行きましょう」

 

 そう言ってガルディオールさんが先を進み、僕達が来たところとは別の路地へと入っていく。

 

「グッグッグ!」

 

 僕も後を追いかける様に歩いて行くと、ウリスケがプーメランを咥えて声を掛けてくる。

 投げて遊ぶものと言ったけど、どうやっていいか分からなかったみたいでやり方を聞いているみたいだ。歩きながらブーメラン振ってるし。

 

「後でやってみせるから、待っててな」

「グッ!」

 

 それを聞いて納得したのか、ウリスケはスキップしながら喜びを表す。

 そして歩きながらガルディオールさんが話を始める。

 

「実は今回の件と似た様な事が幾つも起きてるんです〜。今まであった店の主人が変わっていたり、評判になっていた看板娘さんが別のところで働く様になったりと、おかしな事が起きてるんです〜。皆に話を聞こうにも誰もが口を噤んだっきりで対処しようがないんですね〜。そこに見え隠れしてるのがドアイーク商会なんですよ〜」

 

 え〜……てあんなテキトーな証文でそんな効力を持つもんかなぁと思いはする、不条理ではあるけどもそう言う設定はなしなのだとしたら呑み込むしかないのだ。

 

「で、僕に何をやらせようってことなんです?」

「あの激昂ぶりなら〜あの商会長は〜ラギさんに意趣返しをすると思うですよ〜。なので〜こちらが指定した場所に行って貰えればと〜………」

 

 要は囮って事だね。たしかに僕の事憎々しげに睨みつけてたから、やりそうではあるしなぁ………。

 ってかこれゲームだよね………。NPCが生き生きし過ぎな気がするんだけど、現在いまのヤツって皆こんなんなんだろうか?

 まぁ、ララが言った通り禍根を断つ上でも協力した方が良さそうだ。

 

「分かりました。どこに行けばいいですか?」

 

ピロコリン!

 [NPCイベント:“街衛警団からの依頼”を請けました

         NPCガルディオールからの指示に従い

         行動して下さい            ]

 

「………………」


 相変わらずイベントの発生フラグが分からない………。

 しかも問答無用と来てるし。

 どうにもGM(レイさん)に振り回されてる感が否めなくもないけど、乗り掛かった船と思えばしょーが無いかな。

 

 現実リアルでは無くなったんだけど、巻き込まれ体質は健在みたいだ。はぁ………。

 いやゲームなんだから自分から行くか、巻き込まれないとやっぱイベントは起きないもんな。

 僕がそんな事を考え懊悩してる間に、ガルディオールさんが何かを書き付けたメモを渡して去って行ってしまう。

 

「じゃあ、ここで待ってて下さ~い。よ~ろ~しく~」

 

 ガルディオールさんを見送り、改めてメモを見てみる。

 どうやら地図の様で、四角と線で描かれているけど、ちょっと分かり難い。

 

「分かったのですマスター!レッツラゴーなのです」

「グー」

「ご~」

「…………」

 

 すごいなララ、あれで分かるんだ。

 ララの案内で路地を出て、通りを進み目的の場所へと到着する。

 

「ふぇ~………。こんなとこもあるんだ」

 

 場所としては中央公園の北西部の西のちょっと先ぐらいで、奥に進んで行くと建物が減りぞ雑木林に囲まれた広場の様なところだった。広さとしては陸上トラック400mくらいかな。

 踏みしめられた地面は堅く雑草も生えていない。

 あ、この広さなら遊べるな。

 すぐに何かが始まる訳じゃなさそうなので、ウリスケに話し掛ける。

 

「ウリスケ〜。ちょっとそれ貸して。やり方見せるから」

「グゥ?」

 

 ウリスケはちょっと首を傾げてから、ブーメランを渡してくれる。

 右手で出っ張りの方を前にブーメランの端を持って斜め前方に向けてスナップを効かせてブンと空中へと投げる。

 

「グッ!」

 

 クルクル回転しながら飛んでいくブーメランを、フリスビー犬よろしくウリスケが追い掛けて行く。

 

「グゥッ!?」

 

 だけどブーメランは真っ直ぐには飛ばずに弧を描いて僕の下へと戻って来る。

 なんとか戻ってきたブーメランをキャッチする。けっこー衝撃がある。

 昔遊んだのはペラペラのプラスチックだったけど、感覚は同じみたいだ。

 

「グッグッグ――――ゥッ!!」

 

 ウリスケがストトと戻って来て興奮した様子で、ピョンピョン跳ねておねだりをしてくる。ふふー、しゃーないなー。

 今度は力いっぱい放り投げると、大きな弧を描いてクルクル回転して戻ってくる。

 

「グッ!」

 

 僕が戻って来たそれをキャッチしようとすると、うりすけがひと鳴きしてジャンプ、僕より先に口でキャッチしてしまう。

 そして勢いに逆らわず、そのまま身体を回転させて勢いを殺して着地。

 

「グッグッグ――ーッ!」

「ウリスケさんスゴイのです!」

「ぐれいと」

 

 ウリスケのアクションに僕は口をあんぐり開けて呆け、ララとアトリは賛辞を送る。

 そしてウリスケは立ち上がり、口に咥えたブーメランを身体を捻りながら自分で放り投げる。

 

「グッ!」

 

 ブーメランは勢い良く回転しながら飛んで行き、弧を描きながら戻ってくる。

 そしてそれをウリスケは難なく再びチャッチしてピョンピョン跳ねて喜んでいる。

 あー、こりゃハマったなウリスケ。

 多分分かってないと思うけど、ブーメランも僕が作って貰ったアメリ◯ンクラッカーも狩猟の道具になるんだよね。うん。

 でもウリスケはどこに向かってるんだろうな………ほんと。

 

 何度かウリスケがブーメランのスロー&キャッチををしてると、索敵に反応が現れてきた。

 前後左右から黄色のマーカーが幾つも。

 

「マスター!」

「うん、まさか本当に来るとは………」

「グッ!?」

「くそく〜」

 

 僕達は広場の中央に陣取っているので、木々の合間からNPC(ひとびと)がやってくるのを見る事が出来た。

 やって来たNPCは手に手に得物をを持ってこちらに向かって来る。

 そのどれもこれもが、いかにもな風体をしている人達だった。

 お約束にも程がある。

 その数20。

 

 その顔はどれもが下卑た笑いを見せながら僕達を見ている。

 ジリジリと近付いて来るNPC(その人)達を見て、ちょっとだけ悩んでしまう。 

 

「やってやるのです!」

「グゥ〜〜グッグッ!!」

「やんよ〜」

 

 下手に攻撃をして倒してしまったら、捕まっちゃうのかなとか。

 この人数を相手に果たして大丈夫だろうかとか。

 ってか、ララとウリスケとアトリがやる気満々なんだけどっ!


 早く来て欲しいです。ガルディオールさん!

 

 僕は迫り来るNPCを前にそんな事を願ってしまう。

 

 

 

 


(ー「ー)ゝ お読みいただき嬉しゅうございます 

 

ジェ◯ガについてはこんな感じにしました

やった事ないのにかくなって話ですが

スコットラン◯ヤードならやった事あるんですけど

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