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134.出発前のやる事いろいろ

 

 

 

 朝起きていつもの日課をこなしてから、朝ゴハン(玄米入りご飯、ベーコンエッグとワカメの味噌汁、お新香)を頂いてからHMVRDを被りライドシフトしてログイン。

 中央公園の南東部に出現しララ達と合流してから、一路冒険者ギルドへと向かう。

 でもなんか気になるんだよなぁ、あの鳥のオブジェ。

 

「マスター、もう来てるのです」

「グッ」

「はや」

 

 道路を渡り冒険者ギルド前を見ると、もうヴァーティさんが入り口前で立っていた。

 

「どうもです、ヴァーティさん。お待たせしました」

「どうもデス、ラギさん。自分も今来たとこデ~ス」

 

 互いにペコペコ頭を下げて挨拶しあいながらこの場所では何なので、とりあえず冒険者ギルドの中へ入り喫茶スペースへと向かう事にする。

 席に着くと、開口一番ヴァーティさんが確認の為口を開く。

 

「了承の連絡をうけたのデスが、よろしいんでしょうか?」

「ええ、ですけど前にも言った様に、僕達だけでになります。ホントにそれでいいんでしょうか?」

 

 逆に僕もヴァーティさんに聞き返す。

 もし本当に命を狙われてるのなら、もっと護衛が必要になると思うのだ。

 

「それは問題ないデス。逆に人が多いと動き難くなるのデス。少数精鋭なのデ~ス」

 

 何をもって精鋭なのかは分からないけど、その方が安全だと考えてるんだろう。

 事が決まったのなら、あとは出発日時の確認と何が必要か聞いとかないとな。

 

「お待ちどうさまっ!ほかほかジャガポのバァタのせとチィズ小丸玉と香茶かおりちゃです!」

 

 ミニスカメイドのNPCが、いつの間にか頼んだ料理運んで来た。

 人数分(僕、ララ、ウリスケ、アトリ、ヴァーティさん)が載せられたテーブルは料理に占拠される。

 

「待ってたのです!」

「グッグッグ!」

「まち」

 

 いつの間にやらテーブルの上に陣取ったララ達が、フォークを手に料理に取り掛かる。

 

「あ、こちらのお代は私が払うデス。必要経費デ〜ス」

 

 ヴァーティさんがそんな事を言って来たので、お言葉に甘える事にする。

 改めて目の前に料理を見据える。

 

「どう見てもじゃがバタだよなぁ………」

 

 僕の手の平よりも大きなじゃがいもの様なものが、皮ごとふかされ米の字に切り込みが入れられてその間にバターがトロリとのせられている。

 バターの香りが何とも食欲をそそってくる。ごきゅ。

 喉を鳴らしつつフォークを手に取りジャガポへフォークを入れると、さほど抵抗もなくするりと下まで届いてしまう。おおっ。

 

 少しばかり小さく切り分けて、1つをフォークで刺してひと口で食べる。

 ホクホクと熱を持つ実にバターの塩っ気が混ざり合いなんとも小気味よく美味い。

 あっという間に食べ終えて、今度が皆が取り掛かっている中央の皿に視線を向ける。

 

 あっこれ、ウリスケにあいつ等が投げつけてたモノじゃなかろうか。

 ウリスケも器用なもので、上手い事足で弾いて威力を殺して食べてたもんな。

 僕の予想では多分あいつ等がナチュアさん達を狙ってるんじゃないかと思ってるが、疑わしきはなんとやらだ。その時に考えればいいや。

 

 山ほど大皿に積まれたそれを1つフォークで刺して食べてみる。

 大きさは3、4cm程でまんまるな形をしていて、竜田揚げのような粉をまぶして揚げたものの様だ。

 ひと口で口に入れ噛んでいくと、表面のカリッとした食感の後中のモチモチとそこから飛び出すチーズが口いっぱいに広がってくる。

 ぬふーッ。これ好きだ。

 

 潰したジャガイモと片栗粉を混ぜて焼く、イモモチに食感が似ている。

 これ現実リアルでも作れそうだな。今度作ってみよう。

 僕が3つ程口にすると、あっという間に皆で食べてしまった。

 うんうん、ウリスケが意地汚くなったのも頷けるって話だ。

 それに引き換え、こんな美味いもんを粗末に扱うあの………男達は失礼極まりない。名前忘れた。

 

「はいっ!お替りです!」

「………ララ」

「これでお終いなのです。あぐあぐ」

 

 丁度いいタイミングでお替りがやって来た。ごちそうになってる立場で、図々しくなるのはあまりよろしくないのでララに注意をしようと思ったけど、本人も理解してるようでサムズアップして答えてくる。やれやれ。

 僕も2つ3つとチィズ小丸玉(覚えた)をいただき香茶を飲みながらヴァーティさんに向き直り本題に入る。

 

「それで出発はいつになるんでしょうか?あと何か必要なものはありますか?」

「そうデスねぇ………。出発の予定は明日か明後日だと思うデス。必要なものデスが、……雨具は用意して欲しいデス、食料やポーションなどはこちらで用意するデス」

 

 ゲーム内の明日だと12時間後以降か、取り敢えず予定は組んでおこう。食料とポーションは用意してくれるみたいだけど、こっちでもある程度はストックを作った方が良さ気かな。

 

「雨具………ですか?」

 

 んー?今まで天気は全然変わった事なかったけど、雨が降るのかな?

 

「デ〜ス。ここからデヴィテスまでの街道では、時折スコゥルがあるのデス。雨に濡れるとビシャビシャになるデ〜ス」

 

 どうやら雨具がなしに雨に打たれるとビシャビシャになるらしい?が何か問題があるのだろうか。

 僕が首を傾げていると、お約束のララが説明をしてくれる。

 

「あぐあぐ、マスター。ここではPCやNPCが雨に直接当たると、軽い状態異常になるのです。主に軽い行動阻害とたまに微熱になるのです」

 

 え?なにそれ。酸性雨でも降るんだろうか。いや状態異常雨か?

 

「でも雨具さえ装備してれば、濡れることも状態異常になる事もないのです」

「れいんこー」

 

 なるほど、要は雨が降った時は、雨具――レインコートみたいなのを装備すればいいってことか。

 

「うん、ありがとララ。アトリも」

「あぐあぐ。はいなのです」

「はぐはぐ。おけ」

 

 食べながら喋るのは行儀悪いんだけどなぁ。まぁ僕が話を振ったんだからしょーがないか。

 香茶を飲みながら、ある程度話を詰めて後は出発の日が決まったら連絡をくれるという事になり、今日はこれでヴァーティさんと別れる事になる。

 

 ヴァーティさんが去った後、ストック用にチィズ小丸玉を3セット注文して今日の予定を皆に話す。

 

「今日は作業場で、ポーション作りと料理のストック作り、あと雨具を買いに行こうかと思う」

「分かったのです。ララもお手伝いするのです」

「グッグッグ―――ーッ」


 料理を受け取りまずは作業場を使う許可をと思い、受付へ向かおうとすると案内の職員さんに声を掛けられる。

 

「お呼びおすかぁ〜?」

 

 いや、呼んでないし。そういやこの人がヴァーティさんにスキルショップに行った事を漏らしたんだったっけ。

 僕がジト目で彼女を見ると、その視線をそよ風が吹き抜けた様に受け流し、しれっとのたまう。

 

「うちは聞かれた事に答えただけでおすぅ。それにあなたさんには誰にも話さんといてとは言われへんでしたえ?」

 

 あー………。この人は“こういう人”なのだろう。強かで狡猾(は言いすぎか)、人を自分の掌で踊らせる事に何の痛痒も感じないタイプと見た。

 まぁ、僕の人物鑑定眼なんてほとんど外れるけど、あまりお近付きになりたいとは思わない。そして」気持ち半歩下がる。

 

「それでぇ、ご要望の作業場なんでおすけどぉ、街の規模が大きゅうなっておますので、こちらにはないんでおますのん」

 

 ありゃ~、そうあのか。じゃあどこか人気ひとけのないとこでやった方がいいのかな?

 あの公園と良さ気だったし………ってか聞いてたんかいっ!

 

「話は最後まで聞いてくれでおます。こちらとこちらのお店で調薬のお手伝いを募集しておますので、行って見るんもええおすと思いますぅ。手伝いの合間に作業場ぁを貸してくれますやろ思いますぅ」

 

 いつから持っていたのか、クエストの依頼書を2つ僕に見せてきた。

 ある意味有能なだけに利用しあい合うのは構わないけど、なし崩しってのはちょっと避けたいんだけどなぁ。

 

「マスタ。ここ」

 

 僕が案内の職員さんの押し気味の依頼に少しばかり躊躇してると、アトリが頭から飛び降りて僕の腕にとまり杖で片方の依頼書を指し示す。

 

「ん?」

 

 僕が覗き込むと目の前にホロウィンドウが現れ内容が表示される。

 

 調薬作成の補助:Lank E 要【調薬】スキル

         フェルフェア薬店での調薬補助

         現物持ち込みでプラス有り

         1時間 260GIN+出来高払い おやつ付き

 

 言いたい事はいろいろあるけど、アトリが言うんだったらやってみてもいいのかも知れないと思い、その1つを選んで請ける事にする。

 

「それじゃ、この依頼を請けます。手続きお願いします」

 

 僕が依頼書を指差して職員さんに告げるとニコリと笑いお辞儀をしてくる。

 

「おおきにぃ。ほな手続きいたしますよって、ちょいお待ちやすぅ」

 

 そう言って職員さんは受付へ行き手続きを済ますと、こちらに戻って来て表面に何やら書かれている木札とメモを渡してきた。

 

【ほなこれを持って依頼の場所に行って下さいな。あとこちらは雨具を扱ってるお店ですぅ。ビルビアからと云うてくれたら勉強してくれる思いますぅ」

「あ、………ありがとうございます。それじゃ、失礼します」

「なのです」

「グッグ」

「ばい」

 

 木札と共にメモを受け取り、お礼と挨拶をして冒険者ギルドを後にする。

 ああ言う強かな人に親切とか優しそうな態度を取られれと不気味さを感じてしまう。

 ああ言う人にもビビらないコミュ力を身につけたいなぁとしみじみ思ってしまう。

 

「マスターこっちなのです」

「グゥ――――ッ!」

「ご〜」

 

 ララとウリスケが先頭に立って道案内の為飛んで行く。

 僕も後を追う様に歩を進める。

 

 

 

   *

 

 

面白おもろい人達やなぁ。くくっ」

「もー嘘言っちゃ駄目じゃないですかぁ〜」 

 

 従魔連れの冒険者を見送っていると、受付にいたフィーレが私に苦言を呈してくる。

 

「嘘なんか言うてへんわぁ。冒険者ギルド(ここ)の2階には無い言うただけやわぁ」

「だったら何で他所の場所に作業場があるって言わなかったんですか〜?」

 

 おもろいから。

 

 フィーレの問いには答えずに別の話題へと切り替える。

 

「ええやないのぉ。依頼請けれて作業も出来るんえ?一石二鳥やないのぉ」

 

 選ばれなかった依頼書をピラピラさせてフィーレへ渡す。

 

「可哀相に塩漬け依頼請けさせられて騙されるなんて………」

「人聞きの悪いこと言わんといてぇな。こういうのを適材適所言うんおすえ?」

「だったら案内所になんていないで、しっかり仕事をして下さい!ギルド支配人マスター

 

 フィーレの言葉を聞かないフリをして私はまた案内所の席に着く。

 いいやん。ここにいるとあんな珍しい人間に会えるのだから、それこそ適材適所というものだ。

 よもや本当に会えるとは思えないじゃないか。


 あの『福音もたらせし妖精もの』に。

 

 キリーから受け取った手紙プログラムを思い出し、私は思わずほくそ笑む。

 

 

 

 


(ー「ー)ゝ お読みいただき嬉しゅうございます

 

ブクマありがとうございます がんがります (T△T)ゞ

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