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133.とあるプレイヤー達の浮空大陸ダンジョン探索

 

 

 浮空大陸の1面にあるネムウェーブの街からしばらく進んだ場所に、そのダンジョンはあった。

 


 あのアホウみたいなレイド戦から何とか門を越えた俺達は、すぐに冒険者ギルドへと向かった。

 もちろん麗しのキリーさんに会うためだ。

 “キリーさんファンクラブ”会長としては、今の最優先事項だからだ。

 もちろん他のメンバーも連れ立ってネムウェーブの街中を少し急ぎ足で進んで行く。

 

 この浮空大陸は立方体の形をしており、それぞれの面に人族、エルフ属、獣人属、魔族、ドワーフ族の街が作られている。最後の1面は空白ブランクで、俺はイベ用のなんかだと睨んでる。

 その面に点在しているタワー型ダンジョンを攻略するのが主な目的だ。

 今のところマップ埋めるばっかだけどな。


 そしてここは人族の街になる。 

 街中の印象としては空が広いなぁという感じを受ける。

 道々に植えられてる樹々はいわゆる南国特有の椰子の木の様なもので、どことなく中坊の時に体験学習旅行フィールドスタディプログラムで行った沖縄を思い出させる。

 

 戦争体験の学習という名目だったが、あれはどちらかと言うと道徳とかモラルの認識を改めて解らせていくという、常識を識る為のものではなかったかと今になって思う。

 なんせ史跡名跡を見学しながら、何者かによって壊された遺跡や壁に汚らしく書かれた落書きを見せてそれぞれがどう思い感じたかを、その場で文章に書かされ端末に送らされたのだ。

 

 ただこういうのはやっていけないと教え諭すのではなく、自分自身の中にある良識に訴える訳だ。

 逆にその答えから、後の指導対象とか要注意人物とかの特定をする為なんじゃないかと、勘ぐったりもしたもんだ。

 実際体学旅行が終わってからクラスの何人かが呼び出され、カンセラーから話(という名の指導)を受けたなんて事もあったりしたのだ。

 

 このネムウェーブの街はそれ程大きくはなく、道路は米の字に道が整備されていてその中央部―――時計台のある公園(ここら辺はカアントの街に似てるか?)の手前に冒険者ギルドの建物があった。

 大きさはプロロアの街のものよりも大きく、3倍、いや2倍強といったところか。

 2階建ての立派な石造りの建物だ。


 俺達は飛び込む様に中へと入り、受付へと視線を巡らす。

 いたっ!

 室内にはまだそれ程人はおらず、キリーさんは何やら書類の記入をしている様で、俯きながら下に視線を落としている。 

 ああ………、そんな姿も美しい。スクショが撮れないのが、口惜しく思う。

 

 これはファンクラブ内の協定で、キリーさんの許可無くスクショなどをする事を極力しないと決めた訳だ。

 くっ!誰だそんなもの決めたのはっ!って俺か、くっそ。

 俺が歯噛みしてると、多数の人の気配に気付いたキリーさんが俺《、》に向けて笑顔を見せてくれる。

 

「お久し振りです、皆さん(、、、)。ようこそ冒険者ギルドへ」

 

 久々のその笑顔に、枯渇気味だったキリーさん成分がまたたく間に充填されていく。

 

「君が急にいなくなってしまったので、あまりにも寂し過ぎて来てしまったよ、キリー嬢」

 

 すかさずキリーさんの手を握りしめてジーカが挨拶をする。

 くぅ、相変わらず抜け目ねぇなこの女は………。

 皆が口々に挨拶をする中(これぐらいは皆出来るようになった)へ俺もその輪の中に入ってキリーさんへと挨拶をする。

 

「キリーさん。元気そうで何よりです」

「はい。レギオルさんもお元気そうで安心しました」

 

 いえいえ!あなたがいなくなって、これでも相当へこんだんですよキリーさん。でもあなたを見ただけで一気に回復したんです。

 そんなアホな事はとても口にできず俺は照れ笑いを受かべ、ええまぁ、と言葉を返す。

 これが俺とキリーさんの久方振りの邂逅であった。

 

 ここ数日は冒険者ギルドに入り浸りキリーさんを眺めていたのだが、キリーさんがちらちらとこちらを気にし出したのでさすがにあれかと思い、クエストを請ける事にする。

 そしてキリーさんの行ってらっしゃませと、頑張って下さいねの愛の言葉をいただいて、俺はクエストへと向かう。

 

 浮空大陸のクエストは来る事ができるLvが50からなだけあって、FはなくDから上がほとんどである。

 俺はキリーさんとの会話を増やす目的でクエストをこなしていた為、現在ギルドランクはBでAランククエストも請けられるが専らCからBのクエストを請けて、キリーさんの笑顔と会話を楽しむ事にしている。

 大概が討伐依頼だが、ほかにもマップ作製やらドロップアイテムの納品とかがある。

 

 そして今多くの需要が求められてるのが、プレアデシアン・ティアズという状態異常の万能薬だ。

 これ1つでありとあらゆる状態異常を回復させられるというありがたアイテムだ。

 これは街の周囲にランダムで現れるグロウスダンジョンをクリアするとドロップするものだ。

 

 このダンジョン、地面に亀裂が入ったかと思うと、タケノコの様にニョキニョキと頭を出して10階層程の石造りの塔へとなって生えてくる。

 塔の形はまちまちで、ス◯イツリーっぽかったり、ラン◯マークタワーっぽかったりと見た限り同じ形ものは1つもないらしい。(掲示板情報)

 ネタが尽きたら色でも変えるのかね。

  

 俺()はそのグロウスダンジョンの入口前に立っている。

 見た目といえば、まんま◯サの斜塔だ。

 少しばかり右に傾いてるのを見てるだけで、平衡感覚がおかしくなりそうな錯覚を起こす。

 

「んじゃ、行こうぜコーチ!」

「コーチ!、さぁさ行きましょう」

「れっつごー、こーち」

「誰がコーチだ。誰が」

 

 後ろから声を掛けて来た3人のPCに言い返す。

 

 

 

 

 ことの始まりは、俺が冒険者ギルドでグロウスダンジョンの情報を見ていた時だ。

 グロウスダンジョンの出現情報は、冒険者ギルドで閲覧できる親切設計でダンジョンに入る為の条件なんかも表示されていた。

 

 そう、このグロウスダンジョンには入る為の条件があったのだ。

 条件あし付きと言われるこれは、イベントなんかのキーフラグだったりするがダンジョンに入るのにあるのは聞いた事がなかった。

 

「ここはLv100以下のPCがいないとダメか………う〜ん」

 

 ホロウィンドウをスクロールさせながら俺は眉を顰め唸る。

 幾つかダンジョンは生えてるが、近場にあるのがこの条件あし付きダンジョンだけなのだ。

 基本俺はソロでやってるが、まれにパーティーを組む事もある。

 そんなんでクラウンに入ってるのか?と聞かれる事もあるが、俺んとこのクラウンはボス攻略以外はほとんどフリーダムで好き勝手に色々やってる。

 

 生産系と戦闘系が色々助け合い協力しながらやってる感じだ。

 そういや最近クラウンホームに行ってねぇなぁと思いつつ、他に適当なもんがないかと見てるとキリーさんが俺に話し掛けて来た。

 

「あの………レギオルさん。ちょっといいですか?」

「はい。いくらでも、キリーさん」

 

 俺はすぐにキリーさんの方に身体を向けて笑顔で答える。

 もちろん否やなどキリーさんに対してある筈がない。

 

「ちょうどこちらの方達が浮空大陸ここに来られたのですが、ダンジョンに行ってみたいと仰るので、良かったらレギオルさんが一緒に行って貰えたらと思うんですけど」

 

 よく見るとキリーさんの後ろに3人のPCの姿が目に入ってきた。

 気付かんかった。

 

「こんちは!あーしはランナ。ランって呼んでくださーい」

「こんにちは〜。ミキーネです。魔法使いやってます。ミキって呼んで下されば」

「………スーノン…です。スーって呼んで」

 

 最初に挨拶してきたのが、緋色の金属鎧を身に纏った10代後半の少女。明るめの朱髪のポニーテールと勝ち気そうな朱色の瞳が印象的だ。前衛タイプだな。Lvは88と。

 次が黄色―――クリームイエローか。神官服ベルトのないトレンチコートっぽいヤツを装備して、杖というか棍の様な先端に宝石が付いた棒を手に持っている。

 背中辺りまで伸ばしたゆるフワウェーブの金髪碧眼の同年代のエルフ少女。少し垂れ目気味の顔はおっとりさんという感じだ。ヒーラーかな。Lvは89。

 最後は革の軽鎧にショートの蒼髪に猫耳が生えた青い瞳のやはり同年代の少女。獣人だな。

 身軽さを重視したネイビーブルーの装備で、口元はマフラーで隠されその先は膝下まで垂れている。忍者プレイか。

 半目で眠そうな顔は2人と比べると幼い感じがしないでもない。んでLvは87。

 

「「「3人合わせてキャンデーズ!」」」

 

 1人は元気よく、1人は恥ずかしそうに、1人は気怠そうにパーティー名を名乗る。ふむ、3人の固定パーティーか。

 

 このゲーム、他でもそうだがパーティーに名前をつけることが出来る。野良パーだとそんな事もないがメンバーが固定されると、自然とそんな感じになる。

 まぁ別に名乗らんでもいいんだが、パーティー名が………まぁいいか突っ込むのは。(ベタだし)

 

「俺はレギオルだ。よろしくな」

「うむ、よしなに頼む」

「しゃああ〜」

「…………おす」

 

 名乗られたら名乗るのが礼儀の俺は3人に挨拶するが、それに別の存在が返してきた。

 鎧姿の小さな翼人と、翼の付いた白蛇と主によく似た格好の小人が挨拶?をして来た。へぇ〜、アテスピ持ちか。

 そういや最近アテスピ連れてる奴たまに見かけるな。

 

「よく隠イベ見つけたな。大したもんだ」

 

 俺がそう褒めると、待ってましたとばかりにその時の事を3人が話し始める。

 

「そーなんすよ!ほんと偶然ってか奇跡だったっす」

「だよね~。あんなのふつ-気付かないよ~」

「うんえいめっ!でも許す」

 

 話を要約すると、今回の大型アプデの時にナビゲーとスピリットを付けますかと聞かれ、いまさら案内もなぁと3人は思いこれに関しては〈No〉を選びインしたそうだ。

 そしてたまたまというか、アプデ後の人混みを見学しようとプロロアの時計だ広場に降り立った時にそれが現れたのだとか。

 

 最初にスーノンがそれを発見し近づくと、アテスピが苦しそうにしてるのを見つけポーションを与えると、シクイベが始まったそうだ。

 手持ちの解毒薬であっさりと回復させてイベ終了。

 名前を付けてアテスピを手に入れたと。

 

 この手のイベは、方法さえ分かってしまえばどちらかと言えば簡単な部類ものになる。

 ただ初めてインしたPCにはすんげー過酷であると言わざるを得ない。

 だって誰が好きこのんで手持ちのポーションとGINを使わにゃならんかという、ある意味苦渋の選択を強いられるわけだ。

 方法それが分かれば後の2人も街中を巡って、それを見つけれてアテスピを助けるを繰り返したと言う。

 名前は翼人がウィンディータのソディナ、白蛇がケツァルコアトリのシロちゃん、小人がコロボックルのサッチンだとか。

 

 もちろんキリーさんの頼みを断る事などあり得ないので快諾する。

 こうして互いを紹介し合い、俺達は近場のグロウスダンジョンへと向かう。

 グロウスダンジョンへ行く道すがら、3人と話しながら足を進める。

 どうやらオープン開始からプレイしてるらしいが、現実リアルの都合(部活や習い事)で3人一緒でないとインしてなかったそうな。仲良しさんな事だ。

 どうりでLv100以下ってのはと不思議に思ったもんだ。

 

 それにハミゾ探しを重点的にしてたらしく、そのせいもあって第2サークルエリアを中心に活動していて、第3サークルエリアへはまだ進んでないとか話ししてくれた。

 今のところ20ヶ所のハミゾを見つけたと胸を張ってて自慢している。

 確かに3人パーティーでそれだけ見つけられれば結構凄い。やるな。

 

 3人からの情報を色々貰ったので、俺も第3サークルエリアの話や街の情報を話し聞かせてやると、3人共目をキラキラさせてなんでか俺をコーチと呼び出した。なんでだっ!?

 ようやくグロウスダンジョンに到着し、3人に促される様に中へと入る。もちろんパーティを4人で組でだ。

 

「うわぁあっ!」

「ひゃあ〜」

「おおぅ」


 3人が目を丸くして感嘆の声を上げる。もちろんそれは俺も同じだ。

 入口から入り石造りの通路を進むと、そこは見渡す限りの草原だった。

 こりゃあ、結構手古摺りそうだなと俺は心の中で独りごちる。

 

 いわゆる迷路型のダンジョンであれば通路を辿れば出口に行けるのだが、ここの様にある制限なしの様な場所は、逆に迷うおそれがある訳だ。

 ま、方法はあるけどな。

 

「コーチ!マップ埋めするんすか?するんすか!?」

 

 いや、大事なことなので2回言うはいいから。

 まぁ、たしかに最初はそれやるんだけどな。

 

「そだな、まずは10分真っすぐ進んで次に左右どちらかを10分て感じで進もうと思う。んでだな、Lv100以下の条件あし付きダンジョンだから、それほど強いモンスター(ヤツ)は出てこないと思うから俺はフォローに回るから」

「「「ええっ!?」」」

 

 3人が不満そうに声を上げるが、じゃないと俺と3人の経験値(EXP)のは入りが良くないのだ。

 経験値(EXP)はシステム的には倒したPCがより多く手にすることが出来る。

 Lvが同じであればその差は微々たるものだが、Lv差があるとその差が大きくなってくるのだ。

 なのに差が開けば開くほどEXPの量が少なくなるという矛盾が生じてくる。

 

 検証組の話では、新人ニュービーを使ってのパワーレベリング防止なんじゃないかと推測してるようだ。

 そんな訳でと説明をし、3人のフォーメーションで俺がフォローに回る体制を取る事にする。

 

「コーチやるすね」

「物知りですね〜、コーチっ!」

「コーチ、ぐっじょぶ」

 

 ………コーチやめて……。

 

 俺が肩を落としつつしばらく進んでいくと、モンスターがやって来た。

 目の前に3体のラバーラットが棒を手に襲い掛かってくる。

 俺はサブ武器の片手剣を抜き、3人がそれぞれラバーラットと対峙する。あれ?

 

 ランナはシールドバッシュの後縦斬りで1撃。ミキーネは棍をくるくる回しながらその勢いで脳天へ叩きつけこれも1撃。スーノンは短剣を逆手に持ちアーツ【一閃】を繰り出しこれも1撃。

 こいつ等全員前衛かよ。見誤ったわ。

 

 どうやらこの階層はラバーラットしか出てこず、特に何の苦もなく倒していく。俺出番ない。今のところ経験値ドロボーである。

 時間分け移動をしつつモンスターを倒し進んでいくと、程なく次の階層へ向かう為の東屋を見つける事が出来た。

 それ程探す事もなく発見できたのはラッキーだ。

 

「けっこう見ものなんだぜ、これ」

「「「?」」」

 

 その東屋は、円形の台座に4本の柱。その上にドーム状の屋根が載せられたモノだ。

 俺達が中に入ると、ホロウィンドウが現れ「移動しますか?」のメッセが表示される。

 すかさず〈Yes〉を選ぶと、ガコンという音と共に東屋が移動を始める。

 

「おおーっ!すっげーっ!!」

「はわわ〜、い〜景色ぃ」

「ぐっどびゅう、たかい」

 

 3人3様に周りの風景を見て驚きを表す。上昇する東屋から見下ろす景色はなかなかに素晴らしものだ。

 俺達は特に何の障害もなく2階層へと到着する。

 相変わらずの草原フィールドに全部こんなんじゃないといいがと考えてると、モンスターが現れる。

 ここのモンスターはミノタウロか。3人とアテスピであっさりと倒してしまう。攻撃回数は少ないもののアーツや魔法を放ち主を手助けしている。

 

「しばしお待ちを」


 時間分け探索で進んでいると、スーノンが声を掛け歩みを止める。

 彼女はしゃがみ込み、側に生えている草を嬉々として採取し始める。

 これは1階層の時からやっていて、草を採取すると道具を出してポーションや解毒薬何かをその場で作っていたのだ。

 

「じゃあ、あーしもちょっと作るわ」

 

 そう言って今度はランナが鍋を取り出し料理を作り始める。

 

「すいませ〜ん、コーチ。いっつもこんな感じなんです〜」

 

 ミキーネが周囲を警戒しながら俺に謝ってくる。

 

「いんや。いーよ面白ぇし」

 

 コーチ呼びは諦めた。それにダンジョン探索中に採取やら料理を始めるなんざ、生半な胆力じゃ出来ねぇもんだ。

 周囲を警戒しつつ出来上がったポーションとミノ肉のバゲットサンドを貰い探索を続ける。(美味かった)


 こうして俺達は次々と階層をクリアしていって、現在第11層の3/4を探索し終えたところだ。

 ラバーラットから始まって、ミノタウロ、ワイルタイガ、カンムリラビット、リザードマンズ、パライザスネク、ラッシュホース、クライドシーパー、トーテムモンキ、コボルタカスと来ている。

 

 まぁ、第2エリアサークル内によく出るLvもそれほど高くない(50〜70)奴等ばかりだ。

 つーかあいつ等強ぇーな、おい。数が少ない時は対マンで、多い時は範囲魔法やでパフ掛けて削ってからボコっていく。俺いらなくね?と何度思った事か。

 

 いや、ちゃんと俺も戦ってるよ?ランナとスーノンが採取や料理をしてる時、やって来た奴は俺とミキーネで倒してるんだから。

 とは言え全て同じ草原で、出てくるモンスターも1種類なので単調にはなってくる。

 ただこの草原の法則性を見つけ広さも大体把握できたので、道中スーノンが色々見つけ出しギミックを動かしてたりしていた。

 

「ハミゾ出て来ない………」

「まぁ、そういう事もあるさ」

 

 へんにより眉尻としっぽを下げ肩を落とすスーノンを慰め東屋から上の階層へと移動する。

 次の階層が最後になるだろう。

 だって出てくるモンスターを見れば一目瞭然だろうから。

 現れたモンスターのラインナップが変だと思ったんだ。

 第2サークルエリアの各街近辺で出現するモンスターがバラバラに現れるのだ。んで順番を見てみると法則性が見えてくる。 

 

「干支すね」

「十二支ですね〜」

「つぎいの

 

 まぁな〜、グロウスダンジョンはボスが出て来ない仕様になってるので、後は出口を探せばクリアになる。

 東屋が停止して、次の階層に到着する。どうせまた草原だろうと石造りの通路を進むと、さっきまでの階層と様相を変えていた。

 

「ドームか?」

 

 俺が訝しみながら周囲を見ると、直径300m程の円形の広場で天井はお椀を被せたようなドーム状になっている。

 天頂から明るい光が中全体を垂らしている。向こう側には出口らしき穴が見えている。

 

「やっちま………かも」

「あちゃ〜………、まぁしゃーねーな」

「すいませ〜んコーチ。フラグ立っちゃったかもです〜」

 

 スーノンがボソリと呟き、ランナが頭を掻きつつ肩を竦め、ミキーネが俺に謝ってくる。

 んんっ、何がどうしたっていうんだ?

 

『『『『『グッグッグッグ―――――――――ッッ!!』』』』』

 

 向こう側の出入口から数十体の赤と緑のスピアボーアが現れて、吠えながら目の前をグルグル回り始める。

 

「火と風のスピアボーア………」

 

 スーノンが識別したモンスターの名前を呟く。

 え?俺見た事ないんだけど………。

 次第に赤と緑が混じりあい、光輝いて風が吹き暴風が巻き起こる。

 俺達がその暴風を、顔を腕で庇い地面を踏ん張り堪えていると、やがて風がピタリと収まる。

 

『ボボッボッフオォォぉオオオ―――――――ンッッ!!』

 

 その咆哮に顔から腕を外し視線を向けると、そこには巨大な黄色に輝くスピアボーアの姿が泰然自若と存在していた。大型バス2台程の大きさはなかなかの迫力だ。


「でっかっ!!」 

「ふわぁあっっ!」

「テンペストボーアっ。Lv92!」 

 

 3人が声を上げ、スーノンが識別した結果を声を上げて言う。

 ギドラ(あいつ)程ではないにしろなかなかに手強そうなモンスターだ。

 でもボスは出なかった筈だったんだが………。

 あーなる程、それでやっちまったとかフラグ立ったって言ってた訳だ。

 そんじゃあ今まで楽してた分、ここで頑張らせて貰うとするか。

 

「キャンデーズ!まずは全員にバフ掛けて、俺が前衛で削っから皆は遊撃で攻撃な。回復はその都度しながらやってこう、行くぞっ!」

 

 俺が3人に声を張り指示すると。呆然としていた表情が引き締まり、目をキラキラさせてくる。

 

「「「はいっ!コーチっっ!!」」」

 

 ………いーけどさ、もう。

 

 俺がヘイトを稼げながら攻撃で削り、その間にちまちま3人とアテスピが攻撃して、なんとかテンペストボーアを倒す事が出来た。もちろんとどめは3人がやった。

 名前に違わぬまさしく暴風なモンスターだった。

 そのお陰か想定以上のドロップを手に入れることが出来たので、まぁ良しとしておく。

 

 

 

 その後、妙に懐かれた3人とパーティーをたまに組んだりするのだが、その時のジーカ達の視線が俺に突き刺さる。

 いや!だから俺キリーさん一筋だからっ!!

 お願いだからキリーさんも良かったですね的な笑顔を向けないでっっ! 

 

 

 

 



(ー「ー)ゝ お読みいただき嬉しゅうございます

 

ブクマありがとうございます 感謝です! (T△T)ゞ (ガンガリマス!)

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