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130.キラくんの行動を観察する その23

姉回です

 

 

 

 キラくんの腕を取り逃げる様にルウージ村を出て、街道を西に進んで行くと、キラくんが5兄弟についていつもあんななのか聞いて来た。

 あたし自身はログとスタッフからの話だけで、実際に行ったのはカアントの街の方でルウージ村には来てないのでよくは分かってない。

 

 ()の5人兄弟でナンパをしてくるという事だけだ。

 あんなに激しいアプローチとは思いもよらなかったけど。

 そしてあのゴスロリ姿の子。

 見た目女の子にしか見えなかったけど、5兄弟の末っ子で名前も同じシンディ。いわゆるショタ枠で上目遣いで女性PCに言い寄るNPCだった筈なのに、なんでかあの格好でキラくんに興味を持っていた?

 

 あたしとララちゃんがやらかしたプログラム(ヤツ)はプロロアの街限定でやったものだから、ここに影響は出ない筈だし、或いはこの前のアプデの時にスタッフの誰か(タジマかキタシオバラくん?)が何かやったのか、しか思い浮かばない。

 ただあの子は超危険だと、あたしの何かが言っている事だけは分かる。女の勘みたいなの?

 まぁ、そのせいで村で登録をせずに通り過ぎてしまった事は申し訳ないと思う。

 HPポーションとかララちゃん達が楽しみにしていた果物とか。

 

 キラくんの問いにラミィはちょろと目を泳がせつつ、5兄弟のことを普通に仕事してたというけど、そんな筈はないのだ。

 そもそもサービス開始からVR版はやってないのだし、その後ゲームを始めた時は多分素通りしたんじゃないかと思う。

 

 これはアンリに聞けば分かるんじゃないかな。

 というわけであたしとララちゃんもちょっとそっぽを向く。

 キラくんは勝手に何かを理解した様に肩を竦め溜め息を吐く。

 あたしがやらかしたみたいに見ないで欲しい。やってないよ?多分。

 

 街道を歩きながらこれから向かう街とかについてララちゃんが説明してると、キラくんがラミィに種族クエストについて尋ねる。

 このまま西にまっすぐ行ってカアンセの街、そこから北がドワーフの街、南が魔人の街になる。

 もちろん手前に直接ドワーフや魔人の街へ向かうルートもある。

 でも大概のPCはカアンセに立ち寄ってから向かう感じだ。

 

 ラミィはカアンセによらずに行ったクチの様で、生産スキルがなくて行き詰まったみたいだ。(もちろんそれ以外の種族クエストもある。でないと困っちゃうし)

 ラミィの説明に何でドワーフ選んだの?と聞かれると言い難そうにあたしとアンリを見て溜め息を漏らす。

 キラくんがそれを見て何かを察し、ラミィを労うと照れながらあたし達のフォローを始める。何?この、かわいー生き物は?

 

 ニシシと笑いながらアンリに話し掛けると、どーでもよさ気に言葉を返してきてエレレちゃんがラミィの肩でふわわ〜と突っ込みを入れる。

 その視線と言葉に恥ずかしそうに手で顔を隠して、先頭へと駆けて行った。からかうのはここまでにしとこう。

 

 ラギくんがログアウト時間を気にしてカアンセ迄どくらいかかるのか聞いて来たので、街道の途中途中にセーフティースポットの説明を胸を張って答える。えっへん。 

 そこへララちゃんがモンスターの接近を知らせて来た。

 前後左右を見回すけど、何も見当たらない。

 と上空からピヒョロロ〜と気の抜ける様な鳴き声が聞こえて来た。

 

 あいつはかっぱらトンビ!

 

 ステップピヒョローって名前があるけど、あたしは憎しみを込めてかっぱらトンビと言っている。

 奴等は平原のあちこちに出没し、空からPCを襲ってくる。

 攻撃のチャンスが急降下してすれ違う瞬間の上、攻撃に失敗ファンブルするとアイテムを盗られてしまうという、殺意しかわかないモンスターだ。

 

 そして他にPCがいるにも関わらず、何故だかあたしに集中してくる小憎らしいヤツだ。

 こいつのせいでどれだけアイテム盗られたか分からない。

 3匹のトンビはくるくる旋回してから、こっちに向かって急降下してくる。

 キラくんが弓で攻撃すると、ひょいと躱して突っ込んでくるところをララちゃん達が魔法で迎え撃つも威力が低かったせいか、さしたるダメージも与えられず奴等は空へと舞い戻る。

 

 空に上がったトンビ共に文句を言ってみるも、奴等はどこ吹く風だ。うがっ!

 3匹が今度は個別に襲い掛かって来たので、皆で背中合わせの形で対応する。

 タイミングを合わせて剣を振りぬく。

 けどいまだ馴染んでない剣はヤツの身体をスカッと外しまた空へと逃がしてしまう。

 

 ピロコリン!

[アイテム が かすめとられ ました]

 

 小さくホロウィンドウが現れそんな事を知らせてきた。

 うきゃ〜〜〜〜〜っ!また盗られたぁ――――ーっっ!!

 動揺を誘う表示とは言え、制作に携わった人間だからこそ余計に腹が立つ。

 こいつ等単体の時はまだいいが、混合で来た時はこれが油断に繋がるのでちょっと侮れないのだ。

 空に飛び上がる奴に叫ぶが、バカにした様な鳴き声を上げている。こんにゃろー―っっ!

 

 カーっと怒りが込み上げ血が上る。本来こんなに沸点低くないんだけど、剣を握る手に力が籠もる。

 1匹を倒し終わったキラくんが助太刀しようと近付くけど、それを止めてあたし1人で対峙する。

 再度急降下してきたトンビに少し剣を握る力を緩め、その時を待つ。

 あたしに狙いを定めたトンビが、突っ込んでくるタイミングでニヤリと笑いレリーに指示する。

 予想外のところからナイフでダメージを受けたトンビは、そのまま地面に落下する。

 

 あたしはその瞬間を逃さずに、【十字斬】【3連突】【両断斬】を連続して憎っくきトンビへぶち当てる。過剰攻撃オーバーキル?それ美味しいの? 

 よっしゃあ―――っ!ざまぁみろっ!あっはっは―――ーっっ!!

 

 あたしは少しだけ馴染みつつある剣を振り振りキラくんへと声を上げる。

 そして3人のあたしを見る姿を見て我に返り、恥ずかしさのあまり転がってしまう。うきゃあ〜〜〜っっ!は〜〜ず〜〜か〜〜〜しぃ〜〜〜い〜〜〜〜っっ!!


 しばらくしてなんとか回復したあたしは、キラくん達と街道を西に進み第1サークルエリアの終盤ポイントへ到着する。

 つってもただのでっかい河なんだけど、これは東にも同じものがあるのであたしは経験済みだ。

 初見ではビビること間違いなしだけどね。実際キラくんも目を丸くしてる。

 

 軽く屈伸をして(気持ち的に)キラくんの疑問をそのままにして、あたし達は一斉に駆け出し橋へと突入する。

 そして河から飛び出し、あたし達に向かってくるリヴァトット

 キラくんが何か叫んでるが、それに構わず走る走る。

 たまに高LvPCが、ソロで歩いて進んで自滅なんてのもお約束の場所だ。

 なんとか通り抜けて呆然としているキラくんに声を掛け、そのままセーフティースポットへと向かう。

 

 登録を終えて、ラミィ達とこれからどうするか話し合いを始める。

 このままカアンセの街に向かうか、ここでログアウトするかの2択だ。

 追い付いてきたキラくんに、これから起こるであろう強制イベントの説明と時間がかかるおそれがあるという事で、ここでログアウトするか聞いてみる。

 キラくんがララちゃんに尋ねると、まだ一緒にいたいとの答え。愛いヤツめ。

 

 アテンダントスピリットの皆もそれに倣う様に声を上げる。おやおや。

 ラミィが感激してエレレちゃんをすりすりしたり、コンドォ―さんの仕種にアンリが見を丸くしてるのを見て、あたしは思わずほくそ笑む。

 こうしてこのまま進む事を決めたあたし達だったが、そこから滅茶苦茶大変な事になる。

 

 少し進む毎に(10m位)次から次へとモンスターが襲ってくるのだ。

 いきなりのエンカウント率の高さにあたしは首を傾げるが、こんなイベント無かったっけ?

 ラミィはなんじゃこりゃとか叫んでいるが、確かになんじゃこりゃではある。

 まぁそこそこEXPも上がるし悪くはないんだけど、HPポーションが全くないのが心許無い。

 あのトンビ、手持ちのポーション全部盗っていったのだ。おにょれっ!

 

 なんとか次のセーフティースポット手前まで来て、モンスターが現れなくなったのを見たキラくんが何故か卓袱台を出して食べ物を置き始める。卓袱台って………。

 皆でガッツク様にバゲットサンドを食べ満腹度を上げてまったりしてると(うまかたー)、キラくんが何かを見つけてララちゃんに聞いてるのが目に入る。

 

 すぐにララちゃんが慌ててあたし達に、街道にモンスター寄せのアイテムがばら撒かれていると知らせてくる。

 なーる、それであのモンスターの湧きかと納得に至る。

 と言う事は人為的に起こされているイベントの可能性があるという訳だ。

 ラミィ達と襲撃イベントの可能性を話し合ってると、何かを見つけらしいキラ君が声を掛けてきた。

 

「ねぇ、サキちゃん。NPCってフィールドにいたりするの?」

 

 今回のアプデでヤマトの隠れミノ的な要因で、NPCも冒険者として活動できる様にはなってるけど、それ程人数はいないと思うんだけど、これはどちらかと言えば強制イベント絡みの可能性の方が高い。

 NPCのいる方向をキラくんに確認するとララちゃんが声を上げる。やっぱり!

 その声にあたし、ラミィ、アンリは南に向けて一斉に走り出す。

 キラくんに声を掛けてさらに駆け走る。やっぱテンション上がるぅ~。

 

 キラくんが何事かと追い付いて聞いてきたので、襲撃イベントだよと笑いながら答える。

 5つある強制イベントで1番美味しいものなので(経験値とか)、これを逃す手はない。(やられたら終わりだけど〜)

 キラくんが立ち止まり弓を番えるのを横目に、あたし達はNPCの元へとひた走る。

 そこへキラくんの放った矢があたし達を飛び越して、モンスターへと襲い掛かる。

 

 モンスターがそれをひょいと躱すと、ホロウィンドウが現れて強制イベントの始まりを告げてくる。

 “お嬢様を守れ”ときましたか。

 こんなんあったかなーと考えつつ、全身鎧のNPCの前に陣取りモンスター3体と対峙する。

 

 猫の様なスタイルとぴんと尖った耳。細長い尻尾の先には営利で細長い針のようなやいば

 サーベルサーバルという名のモンスターだ。牙じゃなく尻尾なのはご愛嬌ってことで。

 こいつは第2サークルエリアの終盤、つまり第3サークルエリアの手前にいるモンスターなので、Lvも高くかなり手強い。

 なんだけど、第2サークリエリアの序盤のこんなとこにいるのは正直あり得ない。

 

 ウリスちゃんが3体を翻弄しつつ、ララちゃんが土魔法で穴を開けバランスを崩そうとすると、耳をピクリと後ろへ傾けたと思うと、穴を避けて回避した。

 なる。何か―――いや誰かからの指示を受けての行動。

 そしてその答えをラミィが声を上げて注意を促す。

 

 あたしは頷きを返し、サーベルサーバルと相対する。

 頼みの綱はアンリの魔法だけというのがちょい厳しいが、あたし達は牽制という名の嫌がらせで攻撃ちょっかいをする

 

 ウリスちゃんがちょこまかと周囲を駆けまわり、うぐぐと歯軋りしてるララちゃんが引き付けるように魔法を放つ。

 そこへ後ろにいた全身鎧のNPCが、回復から戻って来て戦闘に加わってくる。

 どうやら件のお嬢様は気を失ってるらしく、もう1人のNPCが介抱してるみたいだ。

 

 しばらくちまちまダメージを稼ぎながら、HPMPの回復の為全身鎧の人に任せて集まると、キラくんがサモンモンスターについて聞いて来た。ありゃ知らんかったか。

 昔からネット小説じゃメジャーどころなんだけどな。

 ラミィが簡単に説明をして、キラくんがほーと感心している。そんな姿もまた格別だ。ふふー。

 

 あたしはポーション類を皆に貰いつつ申し訳無さ気に肩を落としてから、これからどうするか皆に尋ねる。

 キラくんが何気にフォローしてくれ(この男前めっ!)、1体に攻撃を集中して倒そうと提案してきたので、あたし達は頷きそれに応じる。

 

 方針が決まれば後は行動に移すだけ。キラくんと全身鎧のNPCが1体づつを相手取ってる間に、あたし達が1体を集中して倒して行く。(キラくんの尻尾掴みとウリスちゃんの昇◯拳は見物だった)

 何とか1体サーベルサーバルを倒す終えると、フィールドの向こう側に魔法陣が現れ新たなサモンモンスターが出現し、こっちに向かって突進してきた。

 

 どうやら1度に3体しか同時に召喚できない様だ。

 どれだけMPとサモンモンスターがいるか分からないが、ちょっとばかりジリ貧気味な状況に出もしない冷や汗を感じる。

 

 そして眼前にやって来るでっかいピンクのカバ。思わず叫んじゃったよ。

 その巨体と速度に逃げるべきかと考えてると、ララちゃんがそれを遮る様に声を上げる。

 

 そうララちゃんの魔法が、カバの足元に穴を開け転倒させてしまう。ゴロゴロゴロ〜〜〜ッッ!と転がり出す。え、拙くね?

 その音に驚いたサーベルサーバル達の足元に(というかその周囲に)ララちゃんがさらに土魔法で大きな穴を開けていく。

 

 すっぽり落ちた穴から飛び出ようとした2体のサーベルサーバルの上に、転がってきたカバが落ちて穴にズボリと嵌まる。サーベルサーバルはその衝撃で光の粒子となり消え、穴に嵌まって動けなくなったカバにあたし達は袋叩きの様に攻撃を与えこれを撃退する。

 

 ララちゃんの勝鬨が微笑ま可愛い〜。

 

 強制イベントが終わり、リザルト画面が表示されGINとかEXPそしてスキルスルットが1つ手に入る。序盤にしたらかなり美味しいものだろう。ちょいバランスが崩れてる気がしないでもないけど………。

 

 2人のNPC―――プロメテーラさんとヴァーティさんと挨拶を交わした後キラくんが話を聞くと、何やら込み入った事情が垣間見えてきた。

 ってか、ここまでNPCに突っ込んだ話《ストーリ―》は盛り込んでいない筈なので、あたしは思わず首を傾げる。

 

 そして意識が戻ったお嬢様―――ナチュアさんからの護衛依頼とイベントの起ち上がりにあたしは驚きを表す。

 何でしょうね、これ?

 誰の仕業か分かっているけど、大切なことなのでもう1度。

 

 何でしょうね!これっ!!

 

 

 


(ー「ー)ゝ お読みいただき嬉しゅうございます

 

お気に登録ありがとうございます (タT△T)タ (ハハ―)

ブクマありがとうございます がんがります (T△T)ゞ (オオゥッ!)

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