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12.キラくんの行動を観察する その2

終わらなかったのでまた区切ります。その3までで

ブクマありがとうございます

 

 

 小妖精ちゃんに見つからないように隠れながら行動観察を再開する。

 時計台広場に戻ったキラくんは、辺りを気にしながら冒険者ギルドへと入っていった。小妖精ちゃんは不可視モードにしているらしく周囲の人間プレイヤーには見ることが出来ないらしくて誰も気にした様子はない。追っかけていた連中は足止めしてるし、気取られることもないだろう。

 

 あたしも続いてギルドの中へ入る。(スィングドアを通りたかったがバレルので諦める。残念)

 キラくんはへーとかはーとか言って感心してる。日頃縦か横表示のゲームしかやってないからなのか、もっと色々やればいいのに頑なだ。爺様に似てるのかもしれない。

 

 小さい頃は、爺様と武道めいた事をしたり、爺様所蔵の本やマンガを静かに読んでるような大人しい子だった。

 あたしが近づくと、サキちゃんと言ってぎゅーっとして頭をぐりぐりしてきてニコリと笑う。そしてあたしを背もたれにして、また本を読み出すのだった。

 この時に、私の男に対する忌避感や嫌悪感は薄まっていったと今は思う。(もちろん爺様や義父の優しさもあったと思う)

 

 キラくんが中学に入った時、爺様が亡くなって形見分けでゲーム機とソフトを貰って、古臭いゲームを始めだしたキラくんがこんな事を言ってたのを覚えている。

 白い小さい四角とクレーの大きい長方形が合体ロボみたいにくっついたゲーム機を弄りながら――――


「こんな容量の少ないアルゴリズムの単純なゲームを操って遊んでるのに、僕は喜んだり悔しがったりする。僕等人間はゲームに操られて楽しんだり出来るんだね。面白いね」


 その頃、進路に悩んでいたあたしは、その言葉にある種の天啓を受けたような気がした。うん、あたしの進む道。もちろんあたしはお礼を言いながらキラくんの背中に抱き付ききぎゅーとしたことは言うまでもない。(言ったけど)

 

 キラくんは、ギルド受付でNPCと話をして登録を済ませる。あれ?ちょっと初級クエストは?なんで始めないの?

 ギルドから出ようとするキラくんに、小妖精ちゃん―――(面倒いのでステータスを盗み見る)ララちゃんがクエスト依頼の掲示板へキラくんを誘導する。はへーやっぱおかしいよね?あの子。キーアクティブタイプは入力に対しての出力として行動するのに、何のキーも入力されてないのに行動するってAIじゃない筈だ。んーこれは要調査ってとこかしらね。

 キラくんは依頼書を持って受付へ折り返す。

 

 冒険者ギルドを出て東門へと向かう。ララちゃんと仲良く何か話しているみたいだが離れ過ぎてる為、聞き取ることが出来ない。くっ。

 あたしだってキラくんとこんな風に歩きたい。なのに美味しそうなキラくんご飯を前にお預け食らってる様なこの状態。なんてっ不条理!悶々としてるうちに屋台を通りすぎて東門までやってくる。

 

 キラくんは立ち止まって奇声を上げてる。なんか感動してるみたいだ。確かに分厚くてどデカイ門だし、分からないでもないか……。


 ララちゃんの言葉が胸の奥にストンと落ちてくる。


 “もっともっとビックリするのです”


 これは、ゲーム、いやエンターテイメントを制作する全て人がが心に持ってる原則のひとつではないのか。もっとビックリさせてユーザーに楽しんで貰えるように作り生み出す。驚きと感動をいかに提供するか――――。ララちゃんいい事言うね。

 

 開発責任者しゃちょうもよく言ってたもんね。「もっとビックリさせるギミック無いかねー」「これはいいよねぇ感動するわー」とか、人嫌いなくせに、人の喜ぶ顔が好きとか変なんであるが、外様のあたしがとやかく言うことでもないし。

 おっと、キラくんが門を抜けて街の外へと行くようだ。追い掛けないと。

 あたしは慌ててメギエスに命じてキラくん達を追い掛けることにする。


『行くよ。メギエス』

『ガ―――――ゥ』


 キラくん達は、街を出て街道をしばらく東へ進んでから北へと向かう。

 マップをある程度埋めていくと、エリアボスが出現する。プレイヤー達はこのボスを倒すと次の街へと進める事になるのだが、ボスを倒して満足するのか全域を埋めるような事は皆してないみたいだ。ここからが面白いのにねぇ………。

 

 とか思いながら見てるとワイルドッグが1体やって来た。

 戦闘はVRと違ってプレイヤーキャラはトリッキーな動きをして結構見てて面白い。

 縦斬り、横斬り、右ダッシュして縦斬りとかワイルドッグを相手に傷つくことなく倒していく。まぁLvの低いモンスターであるし問題なく進めるだろう。次々と現れるワイルドッグを倒していく。

 でも、【斧】ってLv上がり難いんだよねぇ、大器晩成型っていうか………何でこれ選んだのか。

 ララちゃんに気付かれないように離れた場所で【千里眼】を使ってキラくんを見ている訳なのだが、無表情だったプレイヤーキャラの顔に笑みが浮かんでいる。ん?まさか?

 

 もう1度見直してみるが、その顔は無表情であった。私の勘違いだろうか。換装してから数時間で反応があるとは思えないけど。さすがキラくんってことで……これも要調査――かな?

 10匹近くのワイルドッグを倒した後、キラくん達が何やら揉めている様子。女の勘が私の事を言ってると何故か語る。離れすぎてて聞き取れない一体なんだ?すぐに収まったみたいで街へと戻る道へ進み出す。き、気になる。

 

 冒険者ギルドでクエスト達成報告と報酬を貰って、今度は屋台へと向かう。

 屋台で串焼肉を買って1本をララちゃんにあげている。串焼肉を器用に持ちながら、美味しそうに肉を頬張る。くっ、なんて羨ましい。つくづくあたしが何故あそこにいないのかとフツフツ悔しさがこみ上げてくる。こうなったらリアルでアチコチお出掛けに付き合って貰うしか無いと決めて、ウィンドウを開いて〈キラくん おでかけ 決定〉とメモしておく。

 

 串焼肉を堪能したキラくん達は、大通りを西へと向かう。

 ん、次は西の森へ向かうみたいだ。ビッグスパロー辺りは難易度高いと思うのだけど大丈夫かな。スズメの分際でピョンピョン飛び回るのでビギナーにはすごい厄介なのだ。

 西門を抜け、さらに街道を西へ。しばらくすると大きな森が街道を覆うように広がっている。街道を外れて森に沿うように北へと歩を進めるキラくん達。

 

 ん?だいぶ後ろに何か反応がある?プレイヤー?いやNPCが3人、何でこんなとこにいるんだろう。不思議に思っているとキラくん達が森の中へと入って行く。行けない、追い掛けねば。

木々が鬱蒼と繁っているが、木漏れ日を写してなかなかにいい雰囲気だ。葉ずれの音が耳に心地よい。

 こんなところでキ―――――――いかんいかん。自重自重。

 ある程度森の中を歩いたところで、キラくん達の姿が消えていく。ああ?何!!慌てて追い掛けるが何処にもいない。反応が全く無くなってしまった。えーと、取りあえず落ち着け落ち着け。

 

 ウィンドウをを開きデータを調べる。森の仕様?いや、きっとアテンダントスピリット関連か。データ検索………出た、ボーナスエリアね。

 アテンダントスピリットを手に入れたプレイヤーにのみ入ることの出来るエリアと。えらいチート臭い気がするが、しかもプレイヤーが聞かないと行けない場所なのに、キラくんがそんな事を知るよしもない……という事はララちゃんがすすんで案内したことになる。

 ………んっ!ララちゃんの事は取りあえず棚上げしとこう。よし!決定。

 

 中で何をやってるのか分からないしその間どうすればいいか考えてると、さっき反応を感じたNPCがこっちにやって来る。

 やたらと眩しく光る鎧と盾を持つ男と軽鎧と弓を持つ男、そして黒尽くめの男といった3人のNPC?がブツブツ言いながら歩いてきた。

 しばらく様子を見ていると、どうやらキラくん達を追って来たらしい奴等はウィンドウを見ながらアチコチ見回している。

どうみてもNPCでないプレイヤーがNPC表示になってる。

 

 あたしはすぐさまウィンドウを開き、奴等を調べ始める。ステータスはNPCのものHPも低く何の異常も見受けられない。今度はプログラムを展開して詳しく調べて見る。ん?マスクデータ?じゃないな、データにデータを被せているのか?

 被せられているデータ―――――ステータスを見てみる。あらら、こいつやっぱりプレイヤーだ。どうやらNPCに偽装できるファイルかアプリを使ってるみたいだ。

 名前はブルワード、Lvは121。ゲーム開始時からか、もしくはβテスターからのプレイヤーかな?あとの2人もそんな感じだ。

 

 さらにこいつの行動ログも調べる。全てのプレイヤーの行動ログが148時間メモリーに保存されている。現在から過去へとズララーとログを確認する。!これか?NPC【347】がNPC【4243】を攻撃、NPC【4243】を倒す。NPC【4243】のドロップアイテム〔HPポーション〕〔MPポーション〕〔エントルクの杖〕etc、etc………を入手。

 これはちぃ――――と不味くなかろうか。プレイヤー同士のキル自体が不可能なこのゲームで、NPC同士のキルとなればそのID―――つまりアカウントが消えてしまう事になる。

 

 1週間で1人ということは、こいつ等かなりの数のプレイヤーを殺っているんじゃなかろうか。いくらなんでもこれは悪質だ。

 開発責任者しゃちょうは知ってるんだろうか?これ。知ってても無視してそうだが、その確認の為にも外部とはいえ開発者の1人として問い質す必要があるだろう。

 

 奴等がキラくん達が消えた様に、その姿が森から消え去った。

 こんなところでボーっとしてても仕方がない。NPCプレイヤーの行動ログのバックアップを取り、メギエスに監視を任せてログアウトすることにした。


『メギエス、キラくんが戻ったら連絡と追跡をお願い』

『ガ―――――ゥ』


 あたしはメニューを開きログアウトをする。



 

(-「-)ゝお読みいただき嬉しゅうございます

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