10.とあるプレイヤー達の会話
ブクマありがとうございます
掲示板はまったく知らないのでこんな形にしました
とあるお嬢様学校高等部の教室の一室。授業が終わって、みな思い思いに寛いだり、次の授業への準備をしている。
「たりー、ガッコなんてVRでじゅーぶんじゃね?じっさい」
窓際の後ろ側 (ある意味理想)の席で机にうつ伏せになるなりポツリと少女が呟く。ものすごく眠たそうだ。
「ランちゃん、ランちゃん、きいたきいた――――?」
ちょっぴりポッチャリのおさげ少女がうつ伏せ少女のもとにやって来る。
「あんだよー、ミキ」
「アテンダントスピリットがでたんだって!」
「あて………?何だっけそれ?」
「ニューカマー専用イベントの獲得アイテム」
「え――――っ!?知らねぇっての!そんなんあったん?」
前の席のショートカットの少女がポソリとつぶやいた言葉にランと呼ばれた少女はガバリと起き上がる。
「スーちゃんも知ってたんだぁ」
「みとすで話題になっている」
スーちゃんと呼ばれた少女がスマホをかざして見せる。
「今どきスマホかよー。レトっ娘が」
「古典は大事」
画面を覗くと無料文字会話アプリ“meetose”の画面でコメントがづららら~と表示されている。いわゆるひと言掲示板と言ったものだ。その内容はといえば―――――――――
“アテスピはけ――――――ん!”“めちゃカワー”“新人さんいらしゃーい”“買い取りまつ―――――っ”“うりうりたのま―――――っ”“タダデ――――wwwww”
“逃走中!!””逃げーは追いまつる”“ホカク――――ゥホカク―――――ゥ”“今ドコ~ゥ”“プロロアなり~”――――――――
「な―――――っ、こいつら馬鹿じゃねぇの?ってかプロロアに何の用でいるんか?」
ランの疑問に脇に立っているミキが手を上げて答える。
「はーい。ポーションとか他の薬を買い溜めにプロロアに行くって知り合いのヨっちゃんさんがいってました」
「買い占めて、転売。ケチいけどよくある話」
「ま~ポーション持てる数限られたからな~ゲスイっちゃゲスイけど」
「しかも、新人さんがGetしたものを横取ろうとしてる。ゲス三昧、要垢BANなり」
ス-の言葉に同意しつつも、少しだけ嗜める。
「徒に野に乱を放つこともねぇよ。つーかさ、アテン……なんとかってなんなん?あーし全く知らねぇんだけど」
アトラティース・ワンダラーをやって2年近くになるのに、全然知らないアイテムに疑問を覚えて聞いてみる。
「ランちゃん。知らないんだ」
「無理もない」
なぜか哀れみの目を向けられるが知らんもんは知らん。
「さっきも言ったけど、ニューカマーが受けれるシークレットイベントでクリアすれば手に入るアイテム」
「そんなイベントあったっけ?みんなで1万人だっけ?時計台広場でギルド登録して初級クエストしたあと、狩りに行っただけじゃね?」
ワールド オブ 〇〇ズニーを越えた人数の多さに辟易したのを覚えている。
「あ~あれはスゴかったよね~。でも~アニソンカニバよりは多くなかったと思うけど」
「人ゴミ。ゴミ」
スーの剣呑な物言いに溜め息を吐いて先を促す。
「んで?」
「掲示板とある人から聞いた話によると、時計台広場に行く間にイベントがあったんだって」
「へ~」
「その人の話によると、家の間の脇道にチカチカ点滅してるのがあったんだって、見てみると子犬が苦しそうに倒れてて、見てるうちに光が飛び散って消えたって」
「私が知っているのは、魔族の子が街外れの林にいた時、点滅してるとこに行ったら小さいバ〇〇ンマン見たいのがいて“しらべる”で死に掛けのそれにポーション上げたらイベ始まった。時制限イベだったらしく間に合わず失敗」
どうやら新規加入者用のイベントだったみたいだ。
どのプレイヤーも気付かなかったり、見逃したりでイベントを進められたプレイヤーも少なかったみたいだ。
何その無理ゲー。
「あーし先行く事しか考えなかったから無理だわそれ」
「あたしもだよ~」
「以下同文」
「つーかクリアした奴いんの?それど-見ても無理ゲーっぽいんだけど」
「いる」
「いるよー。たとえば“覇者同盟”のオオキミさんとか小っちゃい姫騎士みたいなの側にいたの見たことあるでしょ?」
「あと、翼のある黒子猫を頭にのせた“マップペイント”の弓使い」
「あ―――――っあれか―――っ!あれ、か―――い―――よな――――っ。どこで手に入れたのかと思えばそーゆー事か!ちーっ、いーな―――っ!!」
「だよねぇ~」
「うんうん」
「ってか、課金アイテムとかであんじゃねーの?アイテム厨とかぜってー食いつきそーだし」
「運営に聞いたら特定のイベントに関してはお答えできません。また課金アイテムで出す事も予定しておりませんって回答があったってゆ~よ」
かーいかったよな、あの小っちゃいの。小さいのに偉そうにしてたのとか。はー2年も前の事でもガッカリする。
「イベクリアしても取得しないでGIN貰った人もいる」
「え―――っもったいね――――。あんなにか―――い―――のに―――」
「掲板に10万Gもらったって」
「でけーなーそれ。あーしでも悩むわー」
「その人は大っきなカエルだったらしい」
さもありなん。
アカは取り直すことは出来ない。|HMVRD《ヘッドマウントVRデバイス》一体型のこのゲームは、最初から始めるとすれば別に2台目を買ってアカを取らないと駄目だから。(大金持ちが恨めしい)
「プロロアかー、あそこ転移門あったけ?」
「ない。その先のマルオー村から歩かないとダメ」
「プロロア行くの~ランちゃん?」
「なんかアテスピ見てーじゃんか」
「今はダメ。ハミゾンの攻略がある。今度こそファイヤルリザドーを倒す」
「んまー、そうだけどなー。あと壁一枚あっと楽なんだけどなー」
「大Job。土とってガン上げしてる。Mポもガッチリある」
「あたしも火炎魔法まで上げたから今度はいけると思うよ〜」
攻略中のハーミィテイジゾーンのボス攻略の話をしてから、また話を戻す。
「で、アテンダントスピリットって何なん?」
「さぁ~?」
「ペット?」
そんな会話が授業開始まで続いていた。
(ー「ー)ゝ 読んでいただき嬉しゅうございます