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夢の中の私

作者: 藤花 寿

私は、ある日から変わった夢を見ている。


その夢の中では色んな人間になっているものだから、その夢経験のせいか未だ十代なのに周囲から老けて見られる。

あれか…、精神的なものが顔に出てるのか…!


祖母に聞くと、予知能力だなんだと喜ばれるが、これは予知ではないだろう…!

まず夢の中の私は現実の私とは別人だ。

現実の私は黒髪の黒眼のその辺りにいそうな、頭のネジが少々とんでるかもしれない学生だ。

だが何よりも違うのは世界観、文化、歴史、常識が覆される日々に私の頭はキャパオーバーで故障中だ。

ポンコツの頭では理解できないらしい。…私自身の頭の事だが。


「ギヒノム」


呼ばれた。これは“夢の中の私”の名前だ。

純日本人であり平凡な学生の私が、こんなファンタジーの名前であるわけがない。


呼んだ人物のもとへ静かに、だが足早に向かう。

部下とは言え、一歩間違えれば私が殺されかねないからだ。


「はい」


「…あそこにいる人間たちがいるだろう?あれ全部燃やしてこい。邪魔だ」


「承知しました」


そう、“夢の中の私”は人ではない。だから人を殺すことに躊躇っていては、生きづらい世界であった。

人間以外に魔人、魔物がいる弱肉強食の世界だった。


そして私は人間でありながら、夢の中での私は魔人という種族の為、人間を殺さないといけない。魔人の中でも一番の力を持つものが魔王であり、私に人間を処理させようとしてる人物こそ魔王ご本人。


いやー力って怖いわねー、サカラエナイワー。


えぇ、私は長いものに巻かれる性質ですけども何か。


…魔王様ってば、普通に手の力で頭とか潰しちゃうんだよ…!?

怖くない…!?私は怖い!


魔王様の命令で失敗した魔人の末路は、魔王様から直接罰をもらいます。

魔王様自らの手で頭を握りつぶされます!


なんだろう、目から水が。


泣いてないからね、涙じゃないよ?…泣いてなんてないからね…!?


無事に仕事を終えた私が魔王様へ報告しに行く途中、上半身を晒してる筋肉バカがいた。

コイツの所為で私は現実に戻って、男子の裸を見ても叫びもしない女子になるだろう。嫌な耐性がついてしまった。


筋肉バカの横を空気のように気配を消して通り過ぎようとした瞬間、私の顔面スレスレに拳が入ってきた。


ぎゃああああ、何すんのよこの筋肉だるまがあああああ!!!


ドキドキが止まらない。もちろん恐怖のドキドキだ、筋肉バカは力だけある。

よって、顔面殴打されて死ぬ危険性が大いにあるということだ。魔人だって死ぬのです。


「…なんですか?ドラーゴ」


心の恐怖が顔に出ないように努めて話す。

顔の表情筋がちょっとやそっとじゃ動かない自分に感謝だ。


「おめぇ、王のもとに行く気か?」


「はい、報告しに行くつもりですが。…えっ、まさかヤバイ感じなんですか」


「……今、王はお楽しみ中だ」


「やはり報告は明日に致します。情報、ありがとうございます」


「そうしとけ。…じゃないと、おめぇ、王が満足するまで抱き潰されんぞ」



ひぃぃぃぃぃぃ怖すぎるっ……!


本当に心の悲鳴が声にならなくて良かった。

すぐに方向転換し、力を使って自室に戻る。ファンタジーって凄い。


まぁ力が使いこなせないと意味ないんだけどね。


以前知らずに魔王様のもとへ行って、その現場を見てしまったことがある。

何人もの抱き潰された魔人の女性たちの先に、今にもぶっ倒れそうな一人の魔人女性と魔王様の行為を見て、全力で逃げ帰った事は今となっては事態を回避するうえでは良い経験だったと言えよう…。


それが例えトラウマと言われる出来事だとしても…!!


お仕事も終わったことだし、魔王様には明日報告しに行けばいいし…よし寝よう、そうしよう。

そう思った瞬間、家の周辺と自室に張ってある結界が強い力によって一気に破壊された。

この“夢の中の私”以外にこの結界を破れる人は一人しかいない…!



恐怖でガクガク震え出そうとする体を抑えつけ、その人物へと頭を垂れた。


「……何か御用でしたでしょうか、魔王様」


「ギヒノム。賢いお前は…わかってるだろう?」


優しく私の頬を撫でていき、そのまま魔王様の手は下へと滑っていく。

手で撫でられている感覚が、だんだん厭らしくなっていくのに対し、私の意識は遠くなっていった。







どこからか、私を呼ぶ声が聞こえる。


みず、き…?みずきって…そうだ、私の名前だ。


目を開けると、そこには現実の私の平凡な部屋の天井が見えた。


「はぁ…恐ろしかった…。ナイスだ私。いいところで目が覚めた」


寝汗ひどいけどあのまま夢の中とか、私には刺激が強すぎる。そしてあの“夢の中の私”の物語は終わった

と思いたい。というか怖すぎて見たくない。




さぁ、平和な私の日常を楽しもうか。


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