第三話
前までの流れを忘れかけてた。
「……というわけです」
神夜は、美鈴に事情を聞いた。
「……つまり、美鈴は門番をサボっていて、気がついたら現代入りしていたと」
「そういうわけですね」
「うーん、現代入りした原因は予想つく?」
「いえ、まったく」
「……本来、こういうときは紫が出てくるべきだと思うんd「はぁーい」うわっ!?」
神夜が考え込んでいると、急に隣の空間が割れ、スキマが開かれた。
「あなたが狂咲神夜で良いのかしら?」
「あ、ああ」
いきなりの登場に驚きながらも、神夜はなんとか返事を返す。
「(いやさ、確かに、もしかしたら紫来たりしないかなー、とか思ったけど。まさか本当に来るなんて思わないだろ!いやでもどうするよ?幻想郷がマジであるんなら、ここで幻想入りできるんじゃね!?)」
狂咲神夜、ただの東方好きの厨二病である。
「ところであなた、少々面白い能力を持ってるみたいね」
紫は扇子で口元を隠しながら、何を考えているかわからない笑みを浮かべる。
「……能力までバレてたのかよ」
自分がひた隠しにしていた事実まで知られていたことに思わず下を向く神夜。
「………能力?」
その言葉に、美鈴は首を傾げる。
「ああ、「あらゆるものを欺く程度の能力」。それが俺の能力だ」
「それは……なかなか強力な能力ですね」
「使い勝手は悪いがな。詳しくは企業秘密だ」
「で、神夜?あなたにお願いがあるの」
「お願い?」
紫からの唐突な願いに、次は神夜が首を傾げる。
「先ずは、美鈴。あなたが現代入りした理由からよ」
「……あのとき、何があったんですか?」
「これは、ある妖怪が引き起こした異変よ」
「異変!?(それってヤバくねぇか!?)」
「その妖怪は特殊な能力を持っていて、手当たり次第にほかの妖怪を現代入りさせているの」
「それで美鈴がこっちにいたのか……」
「そういうこと。ついでにいうのなら、これから先、他にも妖怪がこちらに来るでしょうね」
「……そんな事態になっていて、幻想郷の管理人がそんな悠長にしていていいのか?そもそも、今回の異変、博麗達は既に動いているんだろうな」
「もちろん、私達もこのままただ手をこまねいて見ている気はさらさら無いわ。………そこで今回のお願い。あなたには、現代入りしてきた妖怪を倒して欲しいの」
「……言っとくが、俺に戦闘は無理だぞ?それに、妖怪達をどうやって探すんだよ。探す手段はないし、そもそも世界中を回るなんて無理だ」
「首謀者はどうやら日本出身のようでね。妖怪は全て日本に集中しているの。それと、探す手段と戦闘には、こちらから派遣する人に任せてくれればいいわ」
「………それなら、俺は必要ないよな?」
「あなたには、戦闘の際の証拠隠滅を頼みたいの。ついでに、この子たちの現代での面倒も見てちょうだい。それじゃあ、早速紹介するわ」
そう言って、紫はスキマを広げる。
すると、中から二人の少女が出てくる。
一人目は、おかっぱ頭の銀髪の少女。
背には二本の刀を背負っている。
「魂魄妖夢です。幽々子様の命を受け、本日よりこちらにお世話になります」
「狂咲神夜だ」
もう一人は、両手に長い棒を持つ、耳と尻尾がついた少女。
「ナズーリンという。よろしく頼む」
「よろしく(待て待て待て待てぇ!妖夢にナズーリンとか、俺の好みに合わせてんの!?なに、狙ってんの!?)」
神夜が一人内心テンパっていると、紫は美鈴の方を向く。
「それと……美鈴、あなたはどうするの?」
「私ですか?どうするのって、どういうことですか?」
美鈴が首を傾げると、紫は指を二本たてる。
「現在、あなたには二つの選択肢があるわ。一つ目は、今すぐ幻想郷に戻り、元の生活を送る。二つ目、異変解決までここに残り、その手伝いをする」
「うーん…」
提示された選択肢に、美鈴は腕を組み考え込む。
「戻った方が、いいんじゃないか?」
神夜がそういうと同時に、美鈴は考えを纏めたのか、腕組みを解く。
「私は、ここに残ります」
「はあ!?紅魔館はどうすんだよ」
「確かに、幻想郷に戻りたいという気持ちもありますけど、それ以上に、こうして助けてもらった恩を返したいんです」
「……わかった。異変解決まで、よろしく頼む」
「じゃあ、決定ね。……ところで神夜、他に必要な人員はいる?」
「必要な人員か……(アタッカーはいるし、探索役、壁役もいる。とすると……)…移動手段が欲しいな」
「移動手段ね……なら、これを渡すわ」
紫は新たにスキマを開くと、ボタンがいくつかついたスイッチを取り出す。
「これは、私のスキマを特別に使えるスイッチよ。使い方は、赤いボタンを押しながら行きたい場所をイメージして、そのままこの青いボタンを押す。そうすると、目的の場所にスキマが開くわ。そして、この黄色いボタンを押すと、私に連絡が入るの。これは特別な妖怪……幻想郷のパワーバランスに関わる妖怪が出てきたときに使ってちょうだい。連絡がきたら私がその位置にスキマを開いて、妖怪を回収するわ。パワーバランスに関わるかどうかは、この三人に判断を任せるわ」
「ああ、わかった」
「ちなみに、このスイッチの名前は……」
「?(いや、まさかな……)」
「スキマスイッt「言わせねえよ!?」……いいじゃない」
嫌な予感が的中したことに、思わず叫ぶ神夜。
「いや、色々とまずい。特に著作権的な意味で」
「そんなの私の能力でどうとでもできるわ。というわけで、スキマスイッチで決まりね」
「……もういいよ。…と、その前に」
神夜は妖夢とナズーリンの方をむく。
「?どうしたんですか?」
「その前に一つ質問。その半霊って触っても大丈夫か?」
「大丈夫ですけど……、どうしたんですか?」
「ちょっと触れるぞ」
そう言うと、神夜は妖夢の半霊を触って、一瞬霊力を消費する。
「ええと、今何を?」
一瞬しか感じられなかった霊力に、何をしたのか判断できなかった妖夢。
「すまないが、少し能力をかけさせてもらった」
「?」
「詳しくは後で話すが、外界には基本人間しかいないんだ。だから、半霊はかなり目立つ。というわけで、能力で常人には見えないようにした。ついでに刀にもかけといた。こっちの理由も後で話す」
「はあ……」
「それは私にもかけるのか?」
「……いや、すまないが、ナズーリンには明日かけるよ。だからそれまでは外には出ないようにしてくれ」
「わかった。……そういえば、部屋や荷物はどうすればいいんだ?」
「適当に空いている部屋を使ってくれ。荷物が置いてないところなら基本OKだ」
「ふむ、了解した」
それを聞くと、ナズーリンは早速荷物を置きに部屋を出る。
「あ、私も置いてきますね」
続いて妖夢もナズーリンの後を追うように部屋を出た。
「……それでは、私は一度紅魔館に戻って荷物を取ってきますね」
そして、美鈴も立ち上がる。
「それなら、これを潜ればすぐに着くわよ」
紫が扇子を振ると、美鈴の目の前にスキマが開かれる。
「それでは、また後で」
「ああ」
美鈴が去った後、部屋には紫と神夜だけが残った。
「……なあ、八雲」
「紫で良いわよ」
「じゃあ、紫。……何で俺を選んだ?」
「何の事かしら?」
「とぼける必要はねえよ。美鈴がこっちに来たのは紫の仕業だろ?」
神夜が紡ぐ言葉に、紫の動きが一瞬止まる。
「………どうしてそう思ったのかしら?」
何事もなかったかのように振る舞う紫だったが、人の心をも操る神夜には、内心焦っている様子がわかった。
「理由は二つ。一つは、美鈴が倒れていたのが俺の通学路だったという事。現代での異変解決にここまで都合がいい能力を持った俺の近くに偶然落ちてくるなんて有り得ない。……誰かが仕組まない限りはな」
「………………」
「もう一つは、お前が出てくるタイミング。いくらお前でも、こんなに早く美鈴の位置を探り当てるのは不可能だろう。幻想郷からここまではナズーリンの能力も届かないし、ここまで広くちゃ探すのも一苦労だ」
「もし、あなたの推測通りだとしたら?あなたはどうするというの?」
紫は内心の焦りを必死に押し隠す。
「別にどうもしないな。異変解決にも協力するさ。ただ、関係無い人物を巻き込んだのは感心しないがな」
「………ふう。なんだ、最初から素直に頼めばよかったのね」
「そういうことだ。じゃ、これからよろしく」
「こちらこそ、あの子達をよろしく頼むわ」
改めて互いの協力を決めた二人。
ガチャ
「ただいま戻りました」
その瞬間、家の扉が開かれた。
少し中途半端かもしれないが、ここで一話と区切らせてもらう。
次話でまたオリキャラを追加するぞ。