プロローグ~ピエロ~
現代学生を現役中学生なりに文の中に描写してみました。
時事、いじめ問題など多々あるなか今の子供は何を思って生きているのか。
おそらく年代によってこの語彙力に欠けた文が伝えられる内容は違ってくると思いますし、伝えられることも微少だと思いますが楽しんでいただけたら恐縮です。
大人が思っているほど今のガキはガキじゃないんですよ。
学校生活・・・。
はたして今の世の中何割の学生がこの生活に意味を見出しているのだろうか?
大人たちの作ったの作った長い長い一本道をひたすら歩かされているような錯覚。
この道の先には本当に輝かしい未来が待っているのか。
一本道に見えるだけでどこかに抜け道があるのかも・・・・。
大人たちは口を揃えて「いい学校に入れば・・・いい大学に入れば・・」という。
本当にそうなのか。
学校だけで全てが決まる?
それが結局は世の中の理だと?
なめるな凡愚共
俺たちはもう大人たちに言い包められるようなガキではない。
現実ぐらい知っている
現実とは残酷で冷徹で辛いものだ。
だがきっと・・貴様らが言うほど悪いものじゃない
暗い暗い闇の中
見えない紐に縛られながら
俺は光を求めてもがき、そして足掻く・・・・・・・・。
「まただ・・・。」
俺は自分に呆れ一つため息をついた。
時間の流れを止められる超能力者が空から降ってこないだろうか。
手厚いおもてなしをするのだが。
今度流れ星を見つけたら頼んでみるとしよう。
・・・それにはまず流れ星が落ちてくるよう祈らねばならないのだが。
現在8時20分
授業開始のチャイムが遠くでかすかに鳴り響く中、俺はベッドの上で軽く伸びをした。
時は遡り30分前
「いつまで寝てんだよ~…兄貴起きろ朝だよボケ‼」
一日で最も嫌いな時間、朝。夜の夜更かしはそのときの気分でいつまでだって出来るが、朝の早起きはどうも気分だけで攻略できないらしい…ということに気づいたのはもう何年前のことだったか?
ちょっと…いやだいぶ太めの体型である、どう見ても中学生にしか見えない小6愚弟「神谷潤」のこのデカすぎる美声(勿論皮肉だが)で毎日の俺の爽やかな朝は台無しにされる。
ーーー爽やかな朝など今までの人生で体験したことないがーーー
「わーってるうっせーな消えろデブ‼」
只今上品すぎる言葉で弟を罵った俺「神谷大輔」は一応もう15歳の中3男子。長々と自己紹介できるようなアピールポイントはないから短く…。長所は短所があまりないこと、短所は長所があまりないこと。あーなんてわかりやすい
「デブデブ言うなこの木偶の坊‼ガリ‼‼もう目覚まし鳴ってから30分たってんだぞ?。また遅刻するんじゃねーのかよ全く…」
ガリだと!?スリムと言えスリムと‼
にしてもだ…ふむ、30分もたってるというのは…結構ショッキング・・・効いたぞ。愚弟の貴様ごときに対し咄嗟に言い返す言葉がなかったじゃないか全く・・・
「んじゃもう俺行くからはよ起きてガッコ行けチャラ男‼」
ちなみにチャラ男というのは半自覚済みだ。中3になって周りからよく言われるようになったからな、うん。どこがと言われるとわかんないけど。髪染めてるわけでもないし変にチャラくしてるわけでもないのに…しょぼーん(棒
ま、奴の言い方は癪だが学校に遅刻しそうなのは事実。素直に行く準備をすることにする。
えと…今日は月曜日。曜日の中で勤勉な日本人に一番嫌われる曜日だな・・。
時間割をチラリ・・・一時間目は~英語。
正直最悪、うんざりだ。
英語とか暗号でしかない。宿題も結局寝落ちしてできなかったしな。
俺は誇り高き日本人だぞ!?なぜ英語などという異国語解読をわざわざ学校まで行ってやらなければならんのだ?
そもそもiPhoneやらAndroidなんかで自動翻訳やらなんやらのソフトができている中この義務教育は将来いったいどれほど役にたつのだろうか。
もし近い未来必須教科から英語が外されるようなことがあったら教育委員会絞め殺してや...
ーーカァ!!ーーカァ!!ーー
「・・・・・。」
窓の外では元気良く鳴くカラス・・ですか。
若干殺気・・・。
全く迷惑極まりない。
常識をわきまえろカラス野郎!!
そーいやカラスとは全く夜の間何をしているんだろうか?
真昼間お気楽にカァカァ喚いてて・・・
毎日毎日夜になれば・・・・・ぐっすり?
う、うーーん・・・・。
不覚にも一瞬いいな~何も考えずに毎日毎日・・・と羨ましく思う気持ちが頭を過ぎったが・・・・登校路でゴミを必死に突っ突く無様な姿を思い出し即考えを打ち消す。
たぁっぷり睡眠をとったカラスは毎朝お肌すべすべのさぞ清清しい朝を迎えるのであろうな・・ざまぁ。
清清しい朝と言えば・・だが、文学小説内で主人公がよく感じ取る「清清しい朝」たるものはいったいどういうものなのか。
奴らの感慨が奥ゆかしいのか・・・はたまた狂っているのか・・・。
朝とは睡魔という強敵とファイティングする修羅場たるものなはず。
特にさきほどまでのようにどーでもいい思想をくりひろげた朝というものは大いに秘めたる睡魔をひきたたせ、睡魔は踊りたつ。
実際今現在俺は眠すぎて倒れそうだ。
あぁ・・「眠すぎて倒れそう」・・・・。
なんという甘美なる響きであろうか。
まるでテスト前で勉強をしすぎて徹夜した学生のようではないか。
ただ単にネトゲーに勤しんでいて寝不足なだけなのにな。
・・・・・う~む・・・。
眠い。
眠すぎる。
このまま学校に行ってもどうせ寝るだけだ。
ならばあと少し…5.6分横になって睡魔を押し殺してから登校するのが理に適う行為というものだ。
実に都合のよい身勝手な解釈と共に俺はネバーランドへ旅立つことにする。
・・・・・・。
遡ること・・・・終了。
そして現在。今。NOW。なう。
自業自得という四字熟語が真価を発揮している。
完全に二度寝をかましてしまったわけだな。
潤に嫌事言われてから時計の長針が180度も進んでいる。完全に遅刻死亡フラグ乙だ。
遠くの方でうちの中学のチャイムが聞こえる。
こういう場面の場合本や漫画では・・・・・。
「ダーーー、消し飛べ学校ゥ!!!!」
とかいうんだっけ?
うむ実に似合うセリフ。
ただそんな大声を3次元の世界で出すとそれは人間内の区別下において「変態」もしくは「馬鹿」というカテゴリに分類される。
俺は馬鹿だが変態の称号は遠慮しときたいのでここはひとまず舌打ちひとつで済ませておく。
「チッ・・。」
んまぁ・・・仕方ないので・・
一応慌てて着替える・・・えっちらおっちら。
・・・・・・。
・・・・・う~む。
どうして制服はこんなに着にくく作られているんだ!?
この造形美だけを追求した制服どうにかならんもんかね・・。
やっと着替え終わった俺は、リビングにいるであろう母にいつものセリフをぶつける。
「母さんベントー!!!」
するといつもの無表情とともに
「はいはい。はぁ、全く毎朝毎朝同じ。どーしてあんたは二度寝したら遅刻しそうになるってことを学ばないんだろうね。人間なら前の出来・・」
と感情のこもっていないお説教を食らうわけだ。
いつものやりとり今日も平和哉
グダグダ五月蝿い母親の手からひったくるようにして弁当をとると、鞄を肩に担ぐ。
つーか二度寝してるの見てたんだったら起こせよな・・・と内心つっこみながら靴を履く。
「いってきまっダァンッ!!」
「す」を言う前に騒音とともに玄関のドアを開け放つ。
機械的単純作業。手順はいつも同じ。
・・・・飽きないわけがない。
何が好きでこんなくだらないことを・・・・。
学校までの長い長い道・・・当然とっくに一時間目が始まったこの時間生徒はだれもいな・・・一人「母ちゃんの馬鹿ヤロー!!」とか叫びながら必死で走ってる馬鹿以外誰もいない。
通学路というものは、遅刻することが目に見えているのに、というかもう遅刻なのになんていうか・・体裁的に(?)一応走らなければならないのだから全くめんどくさい。
憂鬱な俺の気持ちと対照的に神々しく輝く太陽の下で迎える、いつも通りのこのくだらない朝。俺の残り少ない中学生ライフは確実に消費されていくようだ。
通学路の木がほのかに紅葉している様子を横目にもう秋かと俺はため息をついた。
結局どーせ遅刻だし?と若干自暴自棄…いや違うな…英語の授業を受けたくないだけか。ま、そんなわけで歩きながら登校している。
周りから凍てつくような冷たい目線を感じないでもないが…他人にどう思われようが気にしない。
おそらく、エリート校であるうちの制服を着た本来真面目であるはずの人間がこんな遅めの時間に優雅に木なんぞを見ながら歩いていることのせいだろう、どーせ。
うちの某私立中学は中高一貫…だけでなく大学までついている…他評エスカレーター式の甘ちゃん学校だ。
まぁだからか中学に入るのはかなり難しかったりするのだが、その高い壁さえ越えればあとはゆったりした楽園が待っている。
勿論楽園内でも適度な努力は求められる。が、高校入試‼大学入試‼…と同年代が喚いてるとき少々のゆとりがある。
では何故こんなやる気なしの俺がこの学校を選び高い壁を越え入学できたのか。
うむそこにはかなり込み合った事情がありだな…
真面目に語ると長いのだが通学路も長い。
少々語ったところで罰は当たらんだろきっと。
三年前…一応真面目な少年だった俺はここの制服を着た兄貴に憧れた。ってことが事の一貫の理由だな。
俺と兄貴は4歳違い。彼は長身に細身で顔もそこそこ…いやイケメン、真面目で頭もよかった(今もだが)。当然当時、単純回路脳しか持たぬ俺にとって兄貴は敬意の的であり、わけのわからない問題を解く兄貴の横顔は大いに俺を魅了させた。
尊敬する主に滑稽にも追いつこうと奮起するということは、人間・世の中の定理たるものだと俺は思う。
無様にも翼も持たぬ俺は優雅に飛ぶ白鳥のように空を舞いたいと願った。
当然の理として飛ぶためには努力せねばならなかった。死に物狂いで発狂したくなるような勉強スケジュールを送った。
そして…。
努力は報われるということだろうか。見事合格。大空を舞うことを赦された。
素直に嬉しかった。大きすぎるあの存在…あの横顔に大きく近づいた気がしたからだ。
が、
空を舞ってるうちに凡小な俺は気づいた。
自分は何をしているのか。
兄貴のあとを追い続け追い越そうとした。いや追い越せなくても追いつきは出来ると思っていた。
だが結局大空に羽ばたいて気づいたことはなんだ。
大きすぎる存在故に追いつけない劣等感。
自分は兄貴の歩いた道をただひたすら歩き直しているだけ…自兄貴の仮面をかぶろうと躍起になるピエロ。
同じ空を飛んでいるために常に比べられどいつもこいつも二言目には君のお兄さんは…だ。
いつしか俺は飛ぶことを自分からやめていた。
羽ばたきたくなくなった。
カラスは白鳥に追いつけない。
俺というピエロは腐敗した。
いつしか躍起になりながらかぶろうとしていた仮面を作り笑いに変えた
それが中2の夏。
それからは…まぁ、現在の通りだな。
常に上位をとっていた成績は落ちぶれ、教師・親にもほとんど見捨てられた同然である。
クラブも剣道をしていたが…やめたし、授業も寝ることが多い。今回のように遅刻することも多々。
それに心の底から笑うことができなくなった。これは大きいことであると自分でも自覚している。
壊れずに残っているものといえばもともと広かった人脈、友人関係の厚さ。兄貴がやっていないピアノの腕…ぐらい。
ちなみにこの頃はドラムも始めた。
ドラムを叩いているときは無心になれるということに気がついたからなのだが。
優秀な兄貴と弟。
兄弟の汚点である俺。
・・・くだらない。
全てどうでもよくなった。
いっそ遺書でも残し死んで家族を苦しめてやろうか…とも思った。
が、なんたってうちはおめでたい華族だ。
逆に汚点が消えて兄弟喜ぶかもしれない。
バカらしいのでやめた。
世の中結局は光か影である。
輝く星があれば必ず陰はできる。
俺の家ではその陰の役割を俺が果たしているだけに過ぎない。
そう思うと吹っ切れるではないか。
なんとも重要な役目のような・・・・。
くだらないことを語っているうちにいつしか俺は校門をくぐっていた。
一時間目がおそらく体育なのであろう・・グランドから一年の奴らからのゴミを見るような目線をひしひしと感じる。
勿論スルー。
校舎にトボトボ歩いて向かう。
人間とは不思議なもので、慣れてないことをするときは挙動不審じみてしまうのだが慣れると堂々とことを運べたりする。
実際俺は今堂々と校舎に足を踏み入れるわけだな、うん。
・・・・・・・・・・・。
校舎内は相変わらずの静かさ。
気持ち悪いぐらい。まぁ進学校ならば当然か。
いや学校ならば当然なのか?今は授業中だっけか?
静寂の中俺の足跡は妙に響く。
コツコツ、ギシギシと不気味な音をたてながら3年の教室が並ぶ三階へ階段を上る。
いつからか・・・ここまで学校の空気を重く感じるようになったのは。
一段上るたびに息苦しい一日がまた始まると思うと自然とおしどりは重く・・・遅く・・。
それでもやはり上っているかぎり・・・進んでいるかぎり目的地へはついてしまう。
教室のドア越しにクソ真面目に授業を受けるクラスメートが見え思わず口元に笑みがこぼれる。
・・・・お前ら何が楽しくてそんなに真剣に生きてるんだ?
あの真面目を気取ったペテン師共に言ってやりたい。
が、そんなことを言ったところで返ってくるのは冷徹な目線か哀れんだ視線・・・。
とりあえず笑みを消すため・・・覚悟を決めるため俺は深呼吸を一つ。
今日も最悪、小冬日和ですね・・・と。
ピエロはいつもの仮面を被った。
そしてドアノブに手をかけ、一気に開くと同時に
授業終了のチャイムが空しく校舎に鳴り響いた。