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無色と十二の旅(アルとジュウニのシルシ)  作者: Matyu
第二章:紅色の誓い(アルのトリガー)
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第2章・第4話 共鳴

東側の外れ。


風が強い。


砂が流れ、視界が揺れる。


その中に——四つの影。


アルとフレアは同時に足を止めた。


「……四体か」


フレアが低く言う。


視線の先。


ウィンド・ワイバーンが二体。


その奥に——一回り大きい個体。


冒険者の一人が息を呑む。


「ハイがいるぞ……!」


フレアが一瞥する。


「……中級か」


短く言い切る。


さらに——もう一体。


同じ“ハイ”のはずの個体。


だが——


色が違う。


薄い。


抜け落ちている。


空気が歪んでいる。


アルの視線が止まる。


(……汚染体コラプト


フレアの目が細くなる。


「……同じ中級でも、別物だな」


一歩、前に出る。


腰の両脇で、金属が擦れる音がした。


フレアが両手に嵌めた籠手——炎の籠手ガントレットを打ち鳴らす。


赤い光が、わずかに走る。


「先に減らす」


次の瞬間——踏み込んだ。


速い。


籠手に炎が収束する。


最初のウィンド・ワイバーンが急降下する。


フレアは動かない。


直前で拳を叩き込む。


炎が爆ぜる。


一撃。


吹き飛び、地面に叩きつけられる。


動かない。


「一体」


間髪入れず、二体目。


風を裂いて突っ込んでくる。


フレアは踏み込む。


正面から迎え撃つ。


燃え上がる籠手が唸る。


殴り抜く。


ワイバーンの体が焼き切られ、落ちる。


「二体」


一瞬で片付いた。


アルは目を細める。


(……速い)


だが——


残り二体が動く。


ハイウィンド・ワイバーンが吠える。


突進。


重い。


フレアが受ける。


籠手と爪がぶつかり、火花が散る。


押し返す。


「遅ぇ」


そのまま、炎を纏った拳を叩き込む。


体勢が崩れる。


アルが横から入る。


斬る。


連携。


ハイウィンド・ワイバーンが地面に叩きつけられる。


動きが止まる。


フレアが息を吐く。


「……こんなもんか」


視線を上げる。


——残り一体。


同じ“ハイ”のはずの個体。


だが——


空気が違う。


重い。


歪んでいる。


コラプト・ハイウィンド・ワイバーン。


フレアの目が鋭くなる。


「……来るぞ」


次の瞬間——消えた。


「……は?」


反応が遅れる。


さっきのハイとは違う。


速さじゃない。


位置がズレる。


視線と合わない。


背後から衝撃。


フレアの体が弾かれる。


足が滑る。


地面を削る。


「ちっ……!」


踏み止まる。


だが——押される。


アルは動きを見る。


(……違う)


さっきの中級とは別物。


(読めない……!)


コラプトが再び動く。


今度はアルへ。


突っ込む。


アルは踏み込む。


斬る。


——外れる。


だが、その瞬間。


わずかに軌道が揺れる。


フレアの目が変わる。


「……そこか」


踏み込む。


炎の籠手が赤く閃く。


一直線に叩き込む。


逃げ場を潰す。


コラプトが回避する。


だが——完全じゃない。


アルがいる。


振り抜く。


剣が通る。


今度は深い。


確かな手応え。


コラプトが叫ぶ。


動きが乱れる。


フレアが一気に距離を詰める。


「逃がすかよ」


拳を叩き込む。


炎が炸裂する。


コラプトの体が大きく揺れる。


アルが続く。


踏み込む。


振り下ろす。


斬撃が通る。


コラプトが崩れる。


地面に叩きつけられる。


動きが止まる。


——静寂。


風だけが残る。


フレアが息を吐く。


「……はぁ」


短く。


アルも剣を下ろす。


しばらく沈黙。


やがて——


フレアが口を開く。


「おい」


アルを見る。


「今の」


短く区切る。


「何だ」


アルは首を傾げる。


「……分かりません」


本気の顔。


フレアが一瞬、黙る。


そして——笑った。


「はは」


楽しそうに。


「やっぱ面白ぇな、お前」


視線をコラプトへ向ける。


「確定だな」


低く呟く。


汚染体コラプト


アルも見る。


色が抜けている。


歪んでいる。


(……これが)


現実。


フレアが背を向ける。


「戻るぞ」


短く言う。


「報告だ」


歩き出す。


アルも頷く。


その背中を追う。


風はまだ吹いていた。


だが——


さっきの重さは消えていた。

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