第6話 ちょっとちがう
放課後は、最近いつも三人だ。
レオと、ジャックと、オリバー。
初夏の山の幸も一段落して、今はもっぱら木の棒を振り回してのチャンバラごっこが定番になっている。
勝っただの負けただの言いながら、草の上を走り回る。
オリバーは、途中で母さんに頼まれた仕事をこなしながら、時々混ざる。
水を汲んだり、道具を片づけたり。戻ると、また何事もなかったように輪に入った。
夕方になると、さすがに疲れて、三人とも木の棒を投げ捨てた。
草の上にごろりと寝転び、空を見上げる。
雲がゆっくり流れている。
「またな!」
レオはそう言って手を振り、家路についた。
その背中が見えなくなってから、ジャックがぽつりと言った。
「ねえ、お兄ちゃん」
「なに?」
「レオ兄ちゃんといる時、お兄ちゃん、ちょっとちがうね」
オリバーは思わず体を起こした。
「……ちがう?」
「うん。なんとなく」
理由を聞いても、ジャックは首をかしげるだけだった。
「わかんない。でも、ちょっと」
――ちがう?
そんなはずはない。
母さんや父さんの前では、ちゃんとした子どもをしている。
先生の前では、生徒として。
クラスの子たちとは、少し距離を取って。
じゃあ、レオとは?
レオは親友だ。
少なくとも、オリバーはそう思っている。
勝手に、そう思っているだけかもしれないけれど。
レオは、考えていることをそのまま口にする。
オリバーの話を、ちゃんと聞いてくれる。
でも、否定しない。
気づけば、それがとても居心地がよかった。
だから――
より、慎重になっていたのだ。
自分の言葉。
とっさに出る、何気ない一言。
こちらはそんなつもりじゃなくても、誤解を生むかもしれない言葉。
壊したくない。
壊れたくない。
嫌われたくない。
その先を、考えてしまう。
胸が早鐘を打つ。
視界が、少し暗くなる。
――いけない。
考えすぎだ。
思考の沼に、はまりかけている。
オリバーはゆっくり息を吸い、六つ数えて吐いた。
胸を軽く、トントンと叩く。
こうするのは、久しぶりだった。
自分を、今に戻す。
ここが現実かどうかは分からないけれど。
「お兄ちゃん、行くよ」
ジャックはもう玄関を開けていた。
「うん」
オリバーは立ち上がり、急いで後を追った。




