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臆病な魔法使いは、失敗しないように生きている 〜小学部編〜  作者: 南山


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第48話 北の山



木枯らし吹く寒い風。

遠くに見える北の山。


何かが見える。

ひょっとしたら……?


レオは昔、冒険者の話を聞いたことがあるという。

この世界には、本当にいるのだろうか。


オリバーの心は少しだけおどる。

でもそれは、恐竜を見るときの気持ちと同じだった。


それよりも驚いたのは――

父の衝撃の過去だった。


凍える冬ですが、家族の愛にほっこりできる回です。

もしよろしければ、お付き合いください。


次回は、今年の冬の大イベントが始まります。

お楽しみに。


――冬の夕方――


木枯らしが吹き始めた。

夕暮れの空気が、切るように冷たい。


朝は霜が降り、草の緑は白がかっている。

水たまりも凍る。


子どもたちは、氷を割りながら登校する。


今年のオリバーは暖かい。

母さんが手袋も靴も、冬服まで買ってくれていた。

春に買ってくれたものだ。


去年は手をポケットに入れて歩いた。

今年は入れていなくてもいい。


足先まで暖かい。


母さんの気持ちが嬉しくて、

気持ちまで暖かくなる。


――なにか飛んでるのか――


「さむー。この寒さ、山はもうだいぶ降ったな。

今年の雪はどうかなあ」


レオが体を小さくして話しかけてくる。


「ん~。どうだろう」


「今年の雪は多いかなあ。

また雪合戦の作戦考えような」


「そうだね」


「おい。オリバー。聞いてるのか?」


レオが顔を覗き込む。


「レオ。あれ」


オリバーは北の山脈を指差した。


西日を浴びて赤く染まる雪肌。

その上の空に、ひとつ。

少し離れて、もうふたつ。


何かが動いているように見える。


「なんだろ。動いてる?」


「なんだ?あれ……

うひょー! ひょっとして竜じゃね?」


「よく見えないけど……そうなのか?」


レオは手を眉の上に置いて、じっと見つめた。


「俺もよくは見えない。

でも、北の山にいるって聞くぜ。


本当かは知らないけどさ。

そうだったら、すげえなって話」


手に息を吹きかけてこする。


「うちの隣のじいさんが、昔話してくれたんだ。

竜と勇者の物語。

かっこよかったぜ」


……そういう物語。


――なんだったんだろう――


レオと別れてからも、風に吹かれながら歩いた。


ここには竜がいるのか?


この世界が、自分のいた世界と違うことは分かっている。

魔法だって、現に授業で習っている。


けれども、動物も植物も、

今のところは普通だった。


……もちろん、全部を知っているわけじゃないけど。


レオの言う通り、本当にいるのか。


よく考えろ。


中世ヨーロッパだってドラゴンが信じられていた。

日本にも龍の伝承がある。


妖怪やUMAと同じようなものかもしれない。


まあ、自分と関係がなければ、

いてもいなくても同じだ。


そういう結論になった。


ワクワクしないわけじゃない。


でもそれは、

図鑑の恐竜やUMA、UFOを見るときの

そんな程度のワクワクだった。


父の言葉を聞くまでは。


――父の話――


夕食のとき、父さんに聞いてみた。

今日見たかもしれないものについて。

レオの反応について。


父さんは息を吐いてから言った。


「北の山か」


「見たのか?」


「はっきりは見えなかったけど」


父さんは頷いた。


「なら、竜かもしれないな」


「竜なんて、いるの?」


「冒険者が見たって記録がある。

昔、そういう本を読んだことがあるんだ」


「本当に?」


「ああ。

冬前は、空を飛ぶのが見られるらしい。

毎年見られるものじゃない。珍しいんだ」


「そんなこと、なんで知ってるの?」


「父さんが知ってたっていいだろ?」


なぜか拗ねたような、恥ずかしそうな顔をした。


「昔、冒険者になりたかったのよ。父さんは」


母さんがお茶を入れながら言った。


「ええ? 父さんが?」


ジャックが大きな声をあげた。

……聞いていたのか。


ジャックは食べ終わると、床で積み木をしていた。

急に関心を持って寄ってくる。


父さんはジャックを抱き上げ、膝に乗せた。


「昔さ。今はもうそんなこと思わないさ。

だって、こんなに可愛い息子達がいるんだものな」


「ほーら。ひげだぞおお」


「やめてよお。父さん。痛いよお」


母さんが笑った。


父さんが。

冒険者になりたかった。


衝撃だった。


そんな職業に憧れていたなんて、

想像もつかない。


昔、父さんに何があったのか。

少し気になった。



風は北の山から吹いてくる。


冷たい風。

竜がいる山から。


この風の音は、

竜の声かもしれない。


そう思うと、


なんだか、

落ち着かなくなった。


北の山を、もう一度見たくなった。



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