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臆病な魔法使いは、失敗しないように生きている 〜小学部編〜  作者: 南山


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第44話  作戦会議


今年も、全学年参加のボート大会が近づいてきた。


レオは今年こそ作戦を立てようと提案する。


けれど、クラスの中にはまだ授業の課題が終わっていない子もいる。


少しだけ生まれる温度差。


そんな時、オリバーは。


レオは。


ガイルは。




三人それぞれの反応がありながらも、


気持ちは少しずつまとまっていく。


よろしければお付き合いください。


――レオがボートを気にする――


まだまだ太陽は高い。

雲もない。

立木の影は、根本付近に落ちるだけだ。

校庭からの風もほとんど来ない。来ても涼しくはない。

それでも最近、空の青さが少し深くなった気がする。



休み時間。


校庭の端で、高学年が何かを運んでいた。

「いち、に、いち、に、……」

細長い木の船。

去年も見た光景だ。


レオがそれを見ながら言った。

「なあ。今年もやるんだよな。ボート。」


ガイルが身を乗り出す。

「お。もうそんな時期か。」


去年は、何も考えていなかった。

ただ流れに乗って、必死に漕いでいた気がする。


レオが少しだけ真面目な顔になる。

「今年はさ。」

少し声を落とす。

「作戦、立てないか?」




――作戦を立てる――



三人は机を寄せた。

「去年さ。高学年、風で押してきただろ。」

レオが手で空気を押す仕草をする。


「あれ、結構きつかった。」

ガイルがうなずく。


「何回も来たんだよ。

あれでひっくり返っちゃったんだ」

ぽつりとオリバーが言う。


レオが笑う。

「そうそう。それ。びしょぬれになったよな。」


でもすぐに真面目な顔に戻る。

「だから今年はさ。やり返す。」


「風で?」

ガイルが聞く。


「いや、逆に利用するとか?」

「先にカバーするとか?」


いろんな案が出る。


去年より、できることは増えている。


風魔法。


水球。


考えることも、増えていた。

どうしたら勝てる?



――クラスメイトも気づく――



「お前ら、もう考えてるの?」

後ろの席の男子が言った。


ボート大会は小学部全学年参加だ。

三人一組で船に乗る。

漕ぐか、魔法で進めてゴールを目指す。

学年ごとに得点がつく。


そして一年生は一クラスしかない。


つまり――


誰が失敗しても、全部自分たちの点になる。




「まだ早くない?」

「だって課題終わってないやつもいるだろ。」

他の子も言い出した。


確かにそうだった。

水球と風魔法のテスト。

まだ終わっていない子もいる。


教室が一瞬静かになる。


誰かがぼそっと言った。


「先に合格したからってさ。」

「気が早いんだよ。」


胸が、きゅっとなる。




――息が詰まる――



……この感覚。


息が、詰まる。


そんなつもりじゃない。


視界が少し暗くなる。


言葉が、出ない。



――レオが言う――


「別に押し付けてないだろ。」

レオが、少し口をとがらせる。


「考えてるだけだって。」

ガイルも笑う。

「終わったら一緒にやろうぜ。」

軽くウインクする。

「作戦いっぱい用意しとくからさ。」


教室の空気が、少しだけ緩む。


元通りの音が始まった。



――戻ってくる感覚――



まだ心臓は速い。


唾を飲む。


息を吸う。


ゆっくり吐く。


少しずつ、戻ってくる。


周囲が見える。


ここは教室だ。


今は。


ここ。


レオやガイルみたいに、

うまく言えたらいいのに。


苦笑しながら、つぶやく。


「……キャラクターデザイン、変えたいよ。」

つぶやいてから、気づく。


……あ。


つぶやく余裕、あるんだ。


ちょっとそんな自分に気が付いた。


よかった。


「なあ。オリバー。この作戦どう思う?」レオと目が合う。


意識がこっちに来た。


「え。っと。 ごめん。も一度言って?」


急にふられてビックリして 返す。


「しょうがねえなあ。だから、……」


レオが机を指で叩く。

顔を寄せる。


「最初から全力で漕ぐんじゃなくて――

途中で風を使う。」


「え?」


「高学年が仕掛けてくる前に、先に抜けるんだよ。」


「つまり、こういうことか?」ガイルも聞いていた。


息を整えながら レオの話を聞く。



今年のレオはやる気だ。ガイルも真剣だ。

去年よりも 良い成績が残せそうだ。

……去年は、最下位だったからね。



湖の水の冷たさと、水面に映る青空を思い出した。

あの場所で、また走るんだ。



暑い夏が、もう少しで終わる気がした。


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