第27話 雪降る校庭で
登校にはカンジキが必要になった。
雪はかいてもかいても降り積もる。踏み固めた方が早いのだ。
校庭は子供たちでいっぱいだ。
昼休み、ノア先生に「カマクラをいくつも作っておくように」と言われ、1年生はみんなスコップを手にしていた。
「なんでカマクラ?」
「魔法の実習で使うんじゃないかな?」
不思議がりつつも、みんな楽しく作業に没頭する。
「おい、もっと雪を積み上げようぜ!」ガイルが張り切る。
「もっと大きくする気なのか?」レオはあきれ顔。
「…座って二人くらい入れるよ」ガリバーが言う。
「まだ時間はある!やれるだけ大きくしよう!」
どんどん積み上げ、校庭でいちばん大きなカマクラができあがる。
汗だくで、マフラーも手袋も脱ぐ子がほとんどだ。はあはあと息をつきながらも、雪の冷たさすら気持ちいい。
そこへノア先生と校長先生がやってきた。
校長先生は寒そうで、まるで雪だるまのように着こんでいる。
「今日は火の魔法の復習と、土魔法の練習です。みなさんもご存じの通り、全校雪合戦大会があります。
火の魔法でカマクラの雪を軽く溶かせば、翌日には硬い雪洞のようになり、雪合戦での陣地になります。
土魔法で雪壁を作れば、簡単な雪よけになります。」
ノア先生は続ける。
「まずは火魔法です。風のある外でも炎をつくれるか、練習しましょう。各自、カマクラの中で順番に火を出してください」
校長先生はふとノア先生の顔を見つめ、何か気づいた様子。
「先生、これはひょっとして、あの件に…?」
「校長先生、本当に…ご内密に…」慌てて頭を下げるノア先生。
すぐに生徒に向かって声を張る。「さあ、始めますよ!」
校長先生はニコニコとうなずくだけだった。
⸻
炎を出すのは簡単ではないが、雪のカマクラの中に灯る火は安心感がある。
オリバーも静かに炎を作ることができた。同じ炎のはずなのに、まるで別物のように感じる。ここでは怖くない――不思議だ。
「さて、この炎を移動させてカマクラの上に持ってきてください」
「え、どうやって移動するの?」ざわめきが起こる。
「移動先を明確に意識するのです。その繰り返しです」
そろそろと炎をカマクラの外に出す。
途端に風に当たって消えそうになる。
「移動だけでなく炎も意識しないと、消えてしまいますよ」
難易度は高い。集中力が続かない。
途中で消えてしまった子は、他の子の炎を応援している。
レオもオリバーと同じ箇所で炎を消してしまった。
「これは…」
「レオ、『練習のしがいがある』ね」
「そうだな」
ガイルも苦戦しながら、「俺も混ぜろよ」と声をかける。
全員の炎が消えたところで、次は土魔法だ。
「やっとだ!」レオの目が輝く。
ノア先生が詠唱する。
「我が親愛なる聖霊よ、集え、雪の大地よ、応えよ。凍てつく雪を束ね、立ち上がれ。我が盾となれ」
地面から風が立ち、
雪がざわつく。
周囲の雪を巻き込み、
直立に上がる上昇気流が発生した。
分厚い雪の城壁ができる。
高さは2メートル、幅は5メートルほど。
校長先生は再びノア先生の顔を見るが、ノア先生は視線をそらす。
⸻
「よし、俺は真面目だ、やるぞ」レオの目が真剣だ。
「立ち上がれ。我が盾となれ」
レオの雪壁は高さ1メートル、幅2メートルほど。
「あれ?意外と固くない…」
本当だ、ノア先生の壁の表面は氷のように固い。
レオはしょげずに口を引き締め、「早く、たくさん練習しようぜ」と言った。
オリバーはその姿に憧れを抱く。
オリバーの番だ。
「立ち上がれ。我が盾となれ」
風が集まり、地面を巻き込む。雪の壁が立ち上がった。
息を吐く。
できた。
しかし壁の粗さが目立つ。
何度か叩くと穴が開き、通路ができた。
レオも自分の壁の強度を確認する。互角だが、ややレオの方が固い。
ガイルは壁を作ったものの、「俺は雪合戦なら攻める方だな」とあまり興味なさそう。
レオは自分の壁を見て、「これじゃ大会では持たないな」とつぶやく。
「で、やっぱり俺も混ぜろよ」
三人は放課後の練習予約を取り付けるため、ノア先生を追いかけた。




