表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
臆病な魔法使いは、失敗しないように生きている 〜小学部編〜  作者: 南山


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/48

第25話 藁のぬくもり



雪が降ってきた。

初雪。道理で寒いわけだ。

両手に、ハーっと息を吹きかける。

暖炉の火は、まだ暖房用には十分には焚いてもらえない。

だから、家では母さんの炊事手伝いしながら火にあたるとこが増えた。ジャックが母さんのまわりでうろつく。

「何する?次は何?」

「あらあら。お手伝い?助かるわ。」

母さんは苦笑しながら、ジャックが出来そうな仕事を頼む。


「オリバーは、ごめんね。井戸から、水を汲んで来てくれる?」

母さんはショールを脱いで、オリバーにかけてくれた。暖かい。

「ごめんね。」また、言った。


「わかった」

この仕事は、寒くて重い。特にこの時期、好きではない仕事だ。

でも、いい。

体を動かしていると、あまり考えすぎずに済む。

ショールは、暖かい。


井戸は、共同だから広場まで歩く。

普段はおばさんたちが雀のように話し込んでいる広場に、今日は誰もいない。


のに。レオが姉さんと水汲みに来ていた。


「だからー!レオ。一緒に持ってあげるってば」

「いいよ。オリバーだって、一人で待つのに。俺の方がチカラあるし。」


「私の方が体は大きいのよ。じゃあ、順番で待ちましょ」


レオの姉さんは相変わらず面倒見がいい。


「先に俺んちだな。オリバー、ちょっと待ってて。俺、一緒に行くよ」

レオは家に着いたのに、

自宅に水桶を置いてくると、戻って来た。

「いいのに。」

「いや。いいんだ。俺が家にいたくないんだ」


二人でオリバーの家まで運ぶ。やっぱり二人だと楽だ。

「助かるよ」

「だから。俺が、来たかったのさ。」

玄関に水桶を一緒に置くと、ちょうど、牛がないた。

何となく牛小屋にレオといく。

そばにあった柄杓に乳を絞って飲む。

レオがしぼったら牛がイヤイヤをして体をよじった。

「俺、まだヘタ?ねえ。」

牛に話しかけると、牛はちょっとお乳を出してくれた。

「えー?どうかな。」オリバーも自分の分をしぼり飲む。

「やっぱ寒いな。ここ、はいっていい?」

レオが指したのは小屋のはじに積んだある藁山だ。

「そりゃ、別に怒られないけど、、。」

藁の中に入り込む。

「お。いいぞ。あったかい」

昔もぐって遊んだけど、最近はしてない。でも、いいかもしれない。


「どれどれ。」

ああ。ほんと。いいかも。

暖かい。

「牛小屋なのに隠れ家みたいだ。」

「なんか、くすぐったいな」

「へへへ。」


「最近どう?」レオが突然聞いてきた。

「毎日あってるだろ?」

「なんとなくさ。」


「……うまくいかないよ。

炎が、揺れるんだ。

あの時、ジャックを助けようとした。

でもーー。」


口を閉じるつもりだったのに、

言葉が続いた。


「思い出してしまうんだ。

いやだ。

こんなの。ひっく。ひっく。」


あの時の音が、まだ耳に残っている。

自分の鼓動の音ばかりが、大きかった。


思いがけず涙が止まらない。

言うつもりがなかったのに。


「俺も怖かった。必死だったさ。

たまたま、うまく出来ただけだ。」

藁にもぐったままでレオは、静かに言った。


「違うよ。」


「違うと思うなら、それでもいい。ただ、俺は違わないと思うだけだ。

俺は、土属性の可能性がたかいからな。頑固かもな。」


「あーあ。本当に、この藁、暖かいな。眠くなったよ。」


「もう少ししたら、姉ちゃんの機嫌もなおるだろ。起こしてくれ。」

と、言うと、本当に寝はじめてしまった。

すぐに規則的に寝息がする。


人に話させるだけ話させて、寝るのかと、多少呆れながら、ショールを、藁の上からかける。



変わらないのだろうか。

変わるのだろうか。

ジャックは、生きている。

蛇は、去った。


今は。

暖かい。


つられて眠くなった。

乳の匂いと牛の声が遠くなる。


母さんの驚いた声で起こされた時は、夕暮れ時だった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ