23話 四人の一歩
秋真っ盛り。
山は味覚がたくさんだ。
山葡萄にあけび、栗。きのこも顔を出している。
オリバー、ジャック、レオに、ガイルも参加で美味しいもの採取だ。
山葡萄も、あけびも、細いつたに出来ていて、肩車したり棒でつついたり。
「うわー!俺、こっちの山には来たことなかったけど、すげえなあ!」ガイルが喜ぶ。
背中のカゴに入れるより先に口に入れるので、なかなか溜まらない。
「だろ?ここは、僕たちの秘密の場所さ。いいだろう」
ジャックは鼻高々だ。
「へー。山には入るけど、ここは、初めてだな。」レオが感心して言う。
「偶然見つけたんだ」
「なんでオリバーが申し訳なさそうなの?」ガイルが聞く。「いや、、。みんなが褒め過ぎだから。つい。」
「たくさん取ろうぜ」
「競争だ」
レオが「お!こんなところにクリダケだ!これ、美味しいんだよな」といえば
「え!どれどれ?レオにいちゃん」と、ジャックは、すぐにそばに行く。
オリバーも、地面を見ながらも、枝先に何が実がないか探して歩いた。
すぐにみんなから離れてしまいそうになる。
山は視界がきかないので、はぐれやすい。
ガイルがいない!
「ガイル!どこだ!」
叫ぶと、少し離れた木の上から返事があった。
「ここだ!」
「もう少しで取れそう、、、。」
確かにあと、少しのところにあけびがいくつかなっていた。
レオが、「オリバー、どこだ!」叫び声。
「ここだ!ガイルもいる!」
「よかった。はぐれたかと思った」
オリバーとレオは、木の下で、ガイルを応援する。
「もう少しだよ!」
「落ちるなよ」
ガイルの手があけびをもぎ取った!それもふたつも。
「やった!でかした!」
ガイルは、実をレオに慎重にほおる。
大きなあけびは、皮がツヤツヤしていて、実は割れていて白くたくさんの種を含んでいた。つまりは美味しそうだ。
「すごいだろ。みんなで食べようぜ」
「おう!」
そこで、ジャックがいないことに気がつく。
「おーい!ジャック!どこだ!」
「俺が目を離したから、、、」レオの顔が青ざめる。
「探そう」オリバーは、あたりに目を配る。
三人で、お互いはぐれないように、探す。
やぶを何度もかき分けた。
「お兄ちゃん」
震えてる声が聞こえた。
「どこだ!」
窪地となったところに、ジャックは座り込んでいた。
そのすぐそばに、2メートルはありそうなアオダイショウ。
首をゆっくりともたげ、黒い目でジャックを見ている。
しゅ、と舌が空気を裂いた。
「お兄ちゃん。僕、、。」ジャックは動けないでいる。けれど大きな声も出せない。
目だけが蛇から離れない。
近づけば危ない。
それでも、放っておけない。
山が、急に静かになった。
風も止まっている。
オリバーの足が止まる。
近づけば刺激するかもしれない。
ぞくり、と背筋が冷える。
――違う。
ジャックのほうを見るな。
ジャックが、震えている。
早く、早く。
やめろ。
ジャックに、近づくな。
助ける。逃げるな。
その瞬間、足元から冷たい風が渦を巻いた。
落ち葉が浮き上がる。
風が落ち葉を運ぶ。
びし、びし、と蛇を打つ。
手が震える。
狙いが、定まらない。
尾が地面を強く打った。
蛇の頭が、ゆっくりとオリバーの方へ向く。
視線が、合った。
胸の奥がきつく締まる。
足が、動かない。
オリバーを手のひらで後ろで軽く押してレオが一歩前に出る。
隣で低く詠唱を始めた。
「……集え、」
渦が強くなる。
落ち葉が一点に集まり、蛇へと叩きつけられる。
ばし、ばし、と乾いた音。
蛇が身を引く。
さらにもう一撃。
「これでどうだ!」
と叫びながらガイルが石を投げた。
蛇の体、とぐろを巻いていたところにあたった。
蛇は尻尾を地面に叩きつけてから、体をくねらせ、藪の中へと消えた。
藪が揺れ、音が遠ざかる。
しばらく、誰も動けなかった。
「うえーん!お兄ちゃん!ありがとう。レオにいちゃんもありがとう!」
ジャックが泣きながら寄ってくる。
我慢していた涙が顔全体に流れる。
オリバーとレオは、しっかりと抱きしめた。
「レオ、ありがとう。助かった」
「そんなの、大したことじゃない。」
ガイルが「柿のときの練習が効いてたな。蛇にビシバシ当たってたぜ」褒める。
「でも、俺の攻撃が良かったな」
ジャックも元気になって来た。「すごい大きな蛇だったねー。僕、びっくりして、もう死んじゃうかと思ったよ。」
「ありゃ、アオダイショウだったな。毒はないぜ」
「でも、怖かったよ。」
「必死だったよ。
私は、、。暴走が精一杯だったよ。レオのおかげだよ。」
久しぶりの暴走だった。
「ってわけで、腹減ったから、俺の取ったあけび食べようぜ!」
四人の笑い声が、山に戻っていく。
力が抜ける。
さっきまで固まっていた胸が、ゆっくりほどけていく。
ジャックの温もりが、まだ腕に残っている。
怖かった。
足が、動かなかった。
でも。
四人なら、大丈夫だ。
それで、いい。
山の風が、今度はやわらかく吹き抜けた。




