表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
臆病な魔法使いは、失敗しないように生きている 〜小学部編〜  作者: 南山


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/47

第21話 ボートなんて、なんとかなる



ボートなんて、初めてだ。


でも湖は浅いし、足もつく。沈んだって歩けばいいだけだ。


毎年やってる行事なんだろ? だったら、なんとかなるに決まってる。


チームは、レオとオリバー。


レオは明るくて話せるやつだ。オリバーは……なんていうか、静かで、少し考え込んでいる。風魔法はやたら速く上手いのに、いつも曇った表情をしている。


なんでレオがあいつとよくいるのか、正直よく分からない。……ついでに言うと、なんで俺もこの三人にいるのかも、よく分からない。


でもまあ、いい。なんとかなる。


「いくぞ!」


合図と同時に、ボートが水を切る。


俺は真ん中に座り、思いきり漕ぐ。


ぐい、ぐい、ぐい。


速い。絶対速い。見てろよ、上級生!


――と思った瞬間。


横から風が叩きつけてきた。


「うわっ!」


船体がぐらりと揺れる。


なんだよそれ!正面から来いよ!


でも、次の瞬間、傾きが少し戻る。


オリバーだ。


手をかざして風を流す。顔は真面目すぎるくらい真面目だ。


「いいぞ!」


俺はまた漕ぐ。とにかく漕ぐ。


だが、二発目。


さっきより強い。船底が持ち上がり、水がばしゃっと入る。


「やば――」


言い終わる前に、視界がひっくり返った。


冷たい水。耳の中まで湖の音。


ぶはっと顔を出すと、レオとオリバーも浮かんでいる。


一瞬、目が合って――


三人とも、笑った。


「やられたな!」


いや、笑ってる場合じゃない。急げ急げ。


ボートをひっくり返して押し、よじ登る。水が重く、服も重い。それでもまた漕ぐ。


漕いで、漕いで――


ゴールに着いたときには、どう見ても最下位だった。


……まあ、仕方ない。


湖畔では、クラスのやつらが笑っている。


俺たちもびしょ濡れだ。雫がぽたぽた落ちる。でも天気はいいし、寒くもない。


「やっちまったなー」


俺が言うと、レオが笑う。


その横で、オリバーは少し静かだった。


怒ってるわけじゃない。でも、どこか引っかかっている顔。そして、小さな声で言った。


「来年は……転覆対策、考えよう」


来年? 今、もう終わりだろ? 俺は思う。レオは目を丸くして、


「なるほど。その通りだな」


と、うなずいた。


……え、俺だけ置いていかれてないか?


来年ってことは、またこの三人で出る前提? いや、別に嫌じゃないけど。


でも、あいつらは、もう先を見てる。


俺は今しか見てない。


濡れた服を絞りながら空を見上げる。


まあ、いいか。


来年、対策ってやつをやるなら、そのときは俺が一番速く漕いでやる。難しいことはよく分からないけど、なんとかなるだろ……たぶん。


「やらないといけないこと、増えちまった。くそう、柿も食いてえしな」


レオが呆れて言う。


「お前、ほんとそれ好きだな」


オリバーは苦笑いだ。


「……悔しかったんだろ」


「……まあな」


レオは小さく肩をポンと叩く。

レオもオリバーも笑う。


「俺たちも、まだうまくできないんだ。一緒にやろうぜ」


食べて遊んで、少しずつ強くなる。それで十分だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ