第20話 ボート大会
湖のほとりは、まだ夏の名残で、日差しは強い。
小学部の全学年が集まり、今日はボート大会だ。三人一組でボートに乗り、漕ぐか魔法で進めてゴールにたどり着く。学年ごとの得点で競う。
オリバーはレオ、ガイルと組み、浅い水深の湖に足をつけながらボートを確認する。
練習では三人で漕いで進んだが、想定としては高学年が風魔法でボートを揺らしたり、水魔法で水をかけて妨害してくることもある。
「俺、また何か考えすぎてるかな……」
オリバーはつぶやく。二人は「まあ、なんとかなるでしょ」と楽観的だ。
それでも、準備の合間に、どう対策するか頭を巡らせる。
「いくぞ!」
合図と同時に、一斉にボートが漕ぎ出す。
最初は順調だった。水面は穏やかで、波もほとんどない。
だが、六年生のチームが追い上げてきた。
――風だ。
突如、強い風がオリバーたちのボートに吹きつける。
オリバーは咄嗟に手をかざし、風を受け流す。波を起こさず、ボートがひっくり返らないように制御する。
「わっ!」ガイルが声を上げ、バランスを崩す。
オリバーはすぐに手を差し伸べ、風の流れを調整する。
それでも、強すぎる風にあっという間にボートが転覆。
水に落ちる冷たさと、笑い声。周囲も一年生もびしょ濡れだ。
オリバーは慌てず、ボートを元に戻し、再び乗り込む。
ゴールに到着した時には、最下位だった。
びしょ濡れになった仲間たちは笑い合っていた。オリバーも笑顔を返す。でも、胸の奥には不完全燃焼感が残る。
口に出すべきか迷う。
自分の考えを言えば、仲間に行動を強いることになるかもしれない。そんな権限は自分にない。
結局、言葉は飲み込んだ。
レオが近づいてきて、軽く肩を叩く。
「楽しかったな。来年も楽しいといいな」
「来年は、、。転覆対策しておこう。」
「なるほど、その通りだな。ほんとだ」
感心したように頷く。
オリバーが気づいたことを口にしたことで、レオにも考えのヒントが渡った。
「来年までに、対策考えようぜ」
オリバーは少し笑みを返す。
勝敗よりも、仲間と考えれる。検討できる。
湖のほとりにはまだ太陽の光が反射している。
濡れた髪と服を気にせず、笑い合う三人。
オリバーは、少し心の中が軽くなったのを感じる。
失敗しても、仲間と一緒なら、考えを言葉にできるなら、それだけで充分だ。
「……よし、次も頑張ろう」
水面に映る青空を見上げ、そっと拳を握った。




