小学部入学の日
朝の光が眩しかった。夜勤明けなのである。
仕方なく車に乗り込み、サングラスをかける。少しでも光を減らせば、眠気に効果があるとどこかで読んだのだ。
道路は空いている。帰りにスーパーに寄ろうか、などと考えているうち、ふと対向車線にダンプが迫った。
避けられない。軽自動車から見たダンプは、まるで自分を潰すような存在だった。
「あ、やばい!」
次の瞬間、意識は途切れた。
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気がつくと、温かい光に包まれていた。
誰かの声。柔らかく、眠りに誘うような手の感触。
考えなくても、いい気がした。
「……あのう」
力無い声が口から漏れる。
「……あー」
舌の感覚も歯もおかしい。だが、安心感が勝った。
女性が抱き上げ、背中をさすってくれる。
ゆっくりした、知らないメロディ。意味は分からないが、心が落ち着く。
くちからゲップやあくびが止まらない。
笑う女性の顔を見て、私も嬉しくなり、再び意識を手放した。
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次に目覚めたのは、布団の上。手足はかろうじて動く程度だが、女性が世話をしてくれる。
母乳のようなものを口に含ませ、眠っては目覚める日々が続く。
少しずつ体の自由が戻り、名前を呼ばれると反応できることもわかった。
「オリバー?」
確かに、この名前は私のもののようだ。
⸻
年月は流れ、小学部入学の日。
弟のジャックと母さん、父さんに一緒に、学校へ向かう。
学校までは30分ほど歩く。初めての場所で緊張する。同じ道を歩く子どもたちも楽しそうで、笑顔が広がる。
学校に着くと、新入生たちが賑やかに集まっていた。
親たちは顔見知りらしく、挨拶の声が飛び交う。
オリバーはその光景に少し圧倒される。
——こんなに人がいる世界だったのか。
子どもたちは前に集められ、席につく。
隣に座ったのは、桑の実取りで会った男の子、レオだった。
「俺、レオ!よろしくな!」
「ああ、よろしく。オリバーです」
小さな交流でも、緊張は少し和らぐ。
式があっという間に終わると、子どもたちは親の元へ駆けていく。
オリバーもジャックと母に頬ずりする。
さあ、明日から私の学校生活が始まる。
できるなら、何事も起きませんように。




