恋愛占い師ルミナスの館ー変態相談者達の恋愛模様に脳が拒否反応を示している件ー
『恋愛占い師ルミナスの館〜地雷男達から逃げたら義妹に愛され監禁されるのは想定外です〜』
ここはルミナスの館。愛を占う恋人達のパワースポット。
今日ここに訪れたのはーーーとある、魔性の魅力を持った公爵令嬢。
彼女は赤紫の瞳を歪ませこう言った。
「プロポーズしてくる男達から逃げたいんです……!」
「はぁ……」
なんで恋を成就させる占いの館に来たんだこの人。それは縁切り神社とかの管轄であって、私の仕事ではない。
「男達、と言うことは複数いらっしゃる?」
「……3人ほど」
なるほど、大変モテるらしい。
私は令嬢を上から下まで舐めるように見た。
気が強そうだが整った顔、豊満だがだらしなさを感じさせないプロポーション、そしてバランスの取れた頭身。……まあ、納得である。
「3人もいるのならば、1人ぐらい良い方がいるのでは?」
彼女は苦虫を噛み潰したように美しい顔を一層歪ませてこう告げた。
「僕が君の玉座になりたいと言ってくる婚約者のドM王子、私が他の男と懇意にしていると喜ぶNTR趣味の辺境伯、私の部屋に盗聴器を仕掛ける血の繋がらない兄。……ルミナス様なら、どなたを選びます?」
「前言撤回します。すみませんでした」
選べるかそんな地雷原! えっ、なんでこんなに美人なのにそんなヤバいやつしか選択肢ないの? それともこの子もやばい人なの??
「でも、どう足掻いても逃げられる気がしないんです。全員無駄に有能だから他の男は近寄らせない、外堀も埋められてる、このままじゃ私一生独身です……!」
あ、この子はまともだ。すごい可哀想。
「つまり……3人以外の人と結ばれたいと?」
確かにそれは難易度が高い。相談に来たのも納得だ。
「いえ、その3人に新しい婚約者を見つけてそっちに惚れさせます。その方が確率高いので」
彼女は能面のような顔でさらっととんでもないことを言い放った。
悪魔か??
いやこいつが1番やばいじゃん! やばい男他の女に擦り付ける気満々じゃんいくら何でもそうはならんでしょ!?
「3人同時はきついけど1人だったらまだ何とかなる! きっと受け入れてくれる人がいるはずです!」
いや1人だってきついわそんな対戦車地雷……!
心の中で悪態をつきまくるが、これも仕事だ。やるしかない。
「わ、わかりました。占ってみましょう」
水晶に魔力を込め、占星魔術を発動させる。
「……見えました。第一王女を頼れ、地下室に注意、プレゼントのベルを持ち歩け」
「第一王女……? 確かに彼女は聡明ですし、私のことを慕ってくれていますが……」
令嬢はきょとんとしている。
なるほど、読めたぞ。有能な第一王女が縁談をまとめてくれる、ベルに関連して彼女に新しい運命の人が現れると言ったところだろう。地下室に関してはわからないが、語感からして怪しい。
彼女は占いの結果を繰り返し呟いてから、覚悟を決めたように一度大きく頷く。
「わかりました、頑張ります」
そう言うと彼女は緋色の髪を揺らして席を立たった。
私は天才占い師ルミナス。なのにどうしてこんなに胃がキリキリするんだろう
ーー1ヶ月後ーー
心なしかやつれた公爵令嬢。彼女の顔は憂いを帯び、目元にはうっすらとクマができていた。
彼女は掠れた声でぼそりとつぶやく。
「結局あの後、第一王女に監禁されました」
待って、助け求めた相手がラスボスだったの??
「それで、例の3人がベルの音に気がついて地下室まで助けに来てくれたからことなきを得たんですが……その時の3人の剣幕とやり方が、言葉にするのも憚られるようなものでして」
彼女は多くを語らなかった。しかしその態度からとても恐ろしいことが起こったことだけは痛いほど伝わってくる。
き、気になるけど聞きたくねぇ〜〜……!!
無駄に有能な上に権力も持ってるわけでしょ。
そりゃ詰むよスペックとのバランスとるために理性捨て去ったんかって感じだもん……!
「だから、私思ったんです。……あの3人から逃げるのは無理なんだって」
諦めを滲ませそう呟いた彼女はーーーなぜか、僅かに頬を緩ませていた。
……え?
「あの3人は他の人間の手には負えません。私が責任持って全員飼育します。……まあ、番犬だと考えれば悪くありませんから」
その頬は、わずかに上気していて。
「ルミナス様のおかげでスッキリしました。ありがとうございます」
彼女はそう言い残すと、スタスタと足早に去っていった。
私は天才占い師ルミナス。
恋が成就しなくても、救われることもあるらしい。
……これを救いと言っていいのかは、わからないが。
お読みいただきありがとうございます。
ルミナスシリーズ2作目です!
いつか長編で作品置き場になります。リアクション&ブクマいただけると励みになります。