【1分小説】心に宿る
1分間で読める小説をあげていきます
500文字前後の文です
11月21日の夜
一通り話を聞いてくれた譲は顔を上げ
「そっか。成功したんだね、手術」
声を弾ませて言った。トクン。
「うん、お陰様で」
噛み締めるように伝える。
「あはは、僕は何もしてないよ」
照れくさそうな声で言う。トクン。
譲は、私が生まれて今までずっと隣に住んでいる幼馴染。
小学校も中学校も、高校も。ずっと一緒。同性含めても1番仲のいい友達だ。
「それでも、譲のおかげだよ」
少し照れくさくて、顔を逸らしてしまう。
「希緒はこれからどうするの?」
「どうするって、何が?」
分かってるくせに、と言ってるような圧。ドクン。
「えっと、まさか生きれられるとは思ってなかったから、考えてなくて……」
私は昨日まで、重い心臓の病気を抱えて病院にいた。
そして十日前に移植手術は成功した。
「希緒は長生きしなきゃだね」
「……うん、そうだね」
ドクン
心臓が熱く響く。
この心臓は、譲から貰ったモノだ。
私が入院して心臓移植手術を必要としている時、譲は交通事故に遭い、不運にも命を落とした。そして私のドナーとして譲が選ばれたのだ。
そして、臓器移植は時々、ドナーの記憶が移ることがあるらしい。
「ねぇ、希緒」
トクン
「ずっと好きだったよ」
「うん、分かってる。ありがとね」
目を開ける。
胸の内から声が消える。
譲られた記憶も熱も、私は未来へ繋いでいく
546文字
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