非モテ三気楼
『ブルーピリオド』
の実写映画観に行ったよ!
バチおもろかったよ!演出バカかっこよかったよ!
六限目の授業が終わり、帰りのSHRの先生からの有難いお言葉を聞き流した僕たち三人は、帰りの挨拶をした後、速攻で教室から出る。
“爆速”
階段を飛び降り、靴を叩きつけ足で位置を調整し履く。
“この間無言である”
脱いだスリッパを下駄箱に投げ突っ込み校舎から脱却する。
“自由である、いやまだだ。駅に到達するまでは・・・電車に乗り込むまでは、縄で縛られたままである”
「走れッ! 早く!」
まるでゾンビ映画の主人公かの様に呼び掛ける、彼はさながらヒーローである。
“だが、残念ながら我々は五十メートル走十七秒である。我々の速度は、端から見れば駆け足程度である”
ドダドダと音を立てながら走る姿は、獣のようだった。すまない。少し美化しすぎた。何てふざけている間に駅に到達する。
「ぬッ抜けない!」
一人が鞄から定期を出すのに、手こずる。貴様ァ! アレほど言っただろう!
「事前に出しとけェ!」
僕が高らかなる叫びをした直後、アナウンスが鳴る。電車が来た。
“以前定期は出ていない”
「でッ出る!」
よし。何とか改札口を揃って出ることに成功した。
「ナイスバッチタイミングだな。エアコンの聞いた電車に乗れるぞ」
「ああ、そうだな」
「 “青ッ春” だね」
我々の影が電車に書き消され、電車が発生させた風に髪が揺れる。これぞ “青春”
“良いのかそれで”
三人が一斉に電車に乗り込むことはできないので、一人づつ順に乗って行く。
“我々の青春は・・・僕の青春はそれで良いのか”
「良くないな」
「どうした? いきなり」
「どしたん、話聞こか?」
僕を真ん中にして、座る二人から囁かれる。
「いや、これが花の高校生活、青春で良いのかと思って」
二人に訳を話す。
「俺は良いと思ってるぜ」
「ワイも右に、性格には左に同じく」
「・・・いや! 駄目だろ! もっと青春ぽいことしようよ!」
“静寂”
「いや、それは~俺も、な」
「草」
片や目を反らし、片や現実逃避。これで良いのか?
「いや! ダメだZE」
静寂を切り裂き号車を繋ぐ扉を開け開く、その姿は!?
「色気明亜葛 性格悪女さん!?」
「え! 色気明亜葛 性格悪女さん!」
「本物?」
「本物だZE! そして君たちは全然ダメだZE!」
「それは、どうしてですか?」
「自分の道を否定することは、死んだも同じだZE。結局のところ、自分以上に信じれるものはいないZE。それに、自分の人生を愛せないヤツが “青春” は手に入れれないZE」
“誰かに刺さる言葉だけが 『名言』 ではない。
誰にも刺さらず空に浮き続ける言葉も、その人が生きた証になる。
名が残らなくても、その人が生きていた事実は変わらない。
生きとし生きる者が発した言葉はきっと 『名言』 である”
「 “青春” って何ですか?」
「ん~だな。私にとって、うん。分からないZE。振り替えれば全て “青春” に成るし、ここら先 “青春” が来ないわけでも無いZE」
「答えがないってことですか?」
「そうだZE。私は答えが分からない。でも、知ってはZE」
「教えて下さい」
「 “わからない程に “一瞬” を。 “刹那” を、私は生きているZE」
“ 『名言』 でも何でも無い只の言葉が、誰かの人生を変えるなら、それはきっと、かっこいいことではないだろうか”
「最後に良いですか? “青春” は待ってくれますか?」
「君たちにとっての “青春” がまだ先なら、きっと合わせて延びてくれるZE。ではな、少年たち」
僕たちでも “青春” はやって来る。生き続け、抗い続ける限り、いつか “青春” はやって来る。だって “青春” は伸び続けるから。
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非
モ
テ
三
気
楼
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