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この子は私の彼氏なの

作者: 秋暁秋季

注意事項1

起承転結はありません。

短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。


注意事項2

恋愛ではありません。

比喩表現です。


「ねぇ〜。みーの彼氏何処〜?」

軽はずみな声が弓道場に響く。女のハイトーン。人に媚びを売るような甘さを含んで居て、見知らぬ誰かが居たらその場で振り返って居そうな声色だった。それに臆する事無く先輩は彼女がお求めの『彼氏』なるものを差し出した。

「ほい」

「さんきゅ〜」

渡されたのは薄い桃色の握り革の着いた弓。まだ弓張をされておらず、だらりとした弦が床下を滑空する。それを上機嫌で受け取ると、颯爽と弦を張って的前へ。

何時もの光景だった。甘えるような声音も、自分の弓を彼氏扱いするのも、それに動じない部員も。何時もの、光景だった。入る前はもっと崇高な部活だと思ったんだがなぁ。


とある日に一足早く弓道場に着くと、先輩が一人で的前を眺めていた。立膝を着いて、真顔で正面を見るすがたは、何処と無く武士を連想させる。本当は……こっちが本心なのかも知れない。そして今なら、回答を返してくれそうな気がした。

「先輩、なんで弓のこと、彼氏扱いするんですか?」

「え、同じだからだけど」

突然話し掛けた俺に臆する事無く、先輩は隣に座れと床を叩く。同じように的前を眺めると、きちんと四つほど安土に的が張り付いている。

「最初はさー、見向きもされないの。全然引けなくて、誰がお前なんかの為に引かせるか。って態度なの。でも順当に自分を磨いて、一生懸命言いよると、少しづつこっち側にも興味持ってくれるの。そこんとこ恋愛と変わんないの。見てくれる様になるまで、自分を磨いて、一生懸命愛を売って、相手に振り向いて貰うしかないの」

それから大層楽しそうな表情で、此方を向いた。自分が順当な人間になった事を誇るような快活な笑顔だった。

「今はちょっとだけ、見てくれる様になったかな。興味持ってくれる感じ。まだまだ手繋ぎデートするには時間掛かるけどね〜」

学校の部活だし、ぶっちゃけで言えば趣味の範囲でしかない。でも物を扱う趣味は、それを使い熟さなくてはならない。長い時間をかけて自分の腕を磨き、その道具に見合うだけの価値のある人間にならなくてはならないのだ。

「良いですね。凄く」

「そだろ。愛を捧げた分だけ、興味を持ってくれるんだ。物を扱う趣味は。だから私の相棒であり、彼氏なの」

過去の思い出話に酔ってるだけの作者。


サックス、やってました。弓、引いてました。

何方も大変でした。でも楽しかった。

何時も道具に名前付けて、恋人扱いしてました。


最初は見向きもされないんですよ。

高嶺の花みたいな態度で、楽器も良い音も出ないし、的前にも立てません。(あ、弓を持たせて貰えないって事です。ちょっと違いますけど)

でも少しづつ積み重ねて行くと、良い音出ますし、引けるようになります。それこそ少年漫画の如く。

『出来るじゃねぇか……』みたいな反応を、『物の方から』されます。


だから振り向いて貰えるまで、一生懸命磨くしかないんですよ。

毎朝好きな人に声をかけるように、好みリサーチしたり、髪型変えたりするように。

(干物が言ってます。説得力の無さですよ)

そうすると必ず応えてくれます。

『今のお前なら、話してやっても良い』

程度の反応はされます。

ちなみに、最後の日にクラリネット触ったら全力拒否されました。

「嫌!! 触らないで!! 気持ち悪い!!」

ばりに息が入っていきません。

ちょっと絶望しました。

でも楽器替えした子も同じ感じだったので、ちょっと胸を張りました。(うちの子はそんなに軽くない……!!)


だから興味を持ったら根気強く、年単位で見越すといいですよ!! 直ぐに応えてくれないので。地道に。

そうすると見える世界が必ずあります。

きっとそれは楽しい。

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