〜ある職場にて〜
『……線は現在も運行を見合わせているとのことです。続いてのニュースは、現在も原因が分かっていない謎の奇病に…』
「…っスか⁉︎社長!おーい!」
リモコンでテレビの電源を切ると、ショートカットの女性が割り箸で白髪混じりの男の頭を叩く。
「あ、昼飯?ごめんボーッとしてたわ」
「耳がお爺ちゃんっスか?まだ早いっスよ!」
「すまんすまん!」
「しょうがないっスね」
テレビを点けなおし、昼飯のカップラーメンを食べながらニュースを眺めてる。
「最近コレばっかっスね」
「仕方ねーよ、大した事件もない。あるのは芸能人の不倫ばっかで、そこに降って湧いてきた謎の病気とくりゃあ、マスコミもコレばっかになるわな」
「社長は受けないんっスか?この案件」
麺を啜り、跳ねた汁が口髭に付いたのかティッシュで拭きながら男は答える。
「ロートルには訳が分からんから若手に任せたよ。俺は普通の難事件で精一杯」
「難事件は普通じゃないっスよ」
女性は食べ終えたカップラーメンの容器を軽く水で濯いでゴミ箱に入れる。食後のデザートにキッチンに常備してある貰い物のクッキーを一枚齧りながら尋ねた。
「若手って前に来てた子っスか?」
「そうそう、事務所立ち上げるっつってよ」
「若いのに大したもんっスね」
「この業界じゃ普通だよ。若い方が体力あるからな」
「でもこの案件、体力より知力の方が重要なのでは?」
「どうしてもやりたいって言われてな。あんなに鬼気迫る顔で言われちゃあなぁ」
ソファーにゴロンと横たわり、社長は昼寝の体勢に入る。
「なんかあったんっスかね?被害者に身内でもいるのかな…あ!社長寝ちゃダメっス!2時から打ち合わせが…」
――――――閑話休題