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5:ニャン様は

側妃懐妊・2にて、妃殿下は悪女では無い〜云々の部分を少しだけ変えました。

ニャン登場・2の最初の方(アズリー公国夫妻や宰相数名云々以降に)1文足しました。

同じくニャン登場・2にて終わりの方、国王陛下の独り言の部分で離宮への打診に関する発言を少し付け足しました。

側妃懐妊にて、誕生日プレゼントがどんなものか分からない云々部分にて少し書き足しました。

同じく側妃懐妊にて、大公の一人娘の大公女殿下云々部分を書き直しました。(一人娘の表現が一人っ子のように思えたので。実際には兄が3人居るのに)

側妃懐妊・2のセレスのセリフ部分で誕生日プレゼントの受け取りに行って下さい云々の後、1文足しました。


変更点は読まなくても問題無いです。

あとがきにちょっとしたお知らせ有ります。

『先ずは騒がせて済まぬ。ワタシは、そうだな。其方達の言う所の聖なる獣、だな』


 ニャン様の言葉に、わたくしは……いえ、皆が息を呑みます。神話上のお話だと思っていた存在が? いえ、びっくりにも程が有りますが。


 なんて言えば良いのか分からないわたくし達の前で擬音にすれば、パァッといった感じで光が一帯に溢れます。眩しくて目を閉じましたが、光が収まって目を開いても、何の変哲も有りません。


「えっ、猫⁉︎」


 そう言ったのは、ラッスルです。あら?


「み、見えますの⁉︎」


 するとケイが


「もしや、妃殿下がいつも見ていたニャンというのは」


「ええ、あのニャン様の事ですわ」


 わたくしの答えと同時に離宮の者達が一斉に「自分にも見える」 とか「えっ、どこから現れたの?」 とか、どうやら皆、ニャン様が見えているようです。


『少し黙っておれ、と申したに。まぁ良い。其方達にもワタシが見えるように力を使ったからな。驚くのも仕方ないだろう』


 さすがに今度は皆が黙りました。


『ワタシはこの国、いや、世界の始まりから在る。時に人を手助けして来たのだが。久しぶりにワタシを見る人間が生まれたのは、やれ、嬉し限りよ』


 それは、わたくし、のことでしょうか。


「わたくし、で、ございますか?」


『うむ。稀にワタシを見ることが出来る人間が生まれる。この国を建国した国王もまた、その1人であった。まぁそういう者は心が他の者と違う。其方も心が特別だな』


 あらま。わたくし、魂が異世界産ですが、心は普通だと思います。特別な心ってなんでしょう?


「あまりその自覚は有りませんが……」


『そういうものだ。ワタシを見る心を持つ者は、自分が特別だと勘違いするような愚か者ではなく、自分が普通で有る事をきちんと理解している者の方が多い。普通はな、例えば使用人で有っても、あの者より自分の方が仕事が出来る、とか。あの者よりも自分の方が褒められる、とか。そういった心根が有るものよ。それを否定するわけではない。だが、普通はそういった人が多い中で、本当に自分が普通だと思う者は少ないのだ。その少ない者しか、ワタシは見えぬ』


 つまり、己を特別視しない、ということ? うむ。それは意外と難しいことかもしれません。少しくらい、自分は出来る! とか思いますからね。わたくしは、そういう機会が無いだけなのではないでしょうか。わたくしは、そんなに出来た人では有りませんから。


「わたくしはそこまで出来た人間では有りませんが」


『ふむ。今は見えても、将来的に見えなくなるかもしれぬ、な。過去にもおった』


 成る程。では、今のところは、わたくしは己を特別視していない、と納得しましょう。


「それで、ええと聖なる獣であるニャン様は、わたくしを何故、こちらに?」


『おお! そうで有った。其方、悩んでおったであろう? 王太子に子が出来たから贈り物を、と』


「あ、はい」


『ワタシはこの国を見守っておる。まぁあまり手助けはせぬが、国に大きな危機が訪れる時は助けておるくらいだがな。とはいえ、現国王や現王太子の婚礼や戴冠式どころか代々の国王達の戴冠式や婚礼等は見守っておるからな。其方と王太子の婚礼も見たよ。その時に居た側妃に子が出来たので、贈り物であろう? 普段はこのような手助けはせぬが、其方はワタシを見ることが出来る身ゆえな、贈り物に心当たりのあるワタシが、其方にその贈り物はどうか、と勧めたいだけよ』


 なんと! ニャン様、わたくしのために一肌脱いで下さっていたようです!


「ニャン様ぁあああ! ありがとうございますわぁ!」


『うむうむ。其方の撫で方は気に入っておる。礼ならそれで良いぞ。さて、贈り物だが。折角、実体化したからな。どれ、此処にそれを持ってこよう』


 などと言うが早いか、ニャン様とわたくし達の間に、何かの布が現れました。えっ⁉︎ 布が現れた⁉︎ どういうことですか⁉︎


「ええと」


 混乱するわたくしの気持ちを代弁するかのようにジョナスが声を上げました。


「ええと、聖獣様。この布は確か」


『うむ。ここを通り過ぎた先にある宝物庫に有った膝掛けだな。今は亡き先代の王妃も使った由緒有る膝掛け。これからは少々寒くなる頃合い。おかしくないだろう。実体化しておるから、これくらいの力は大した事無い故、膝掛けだけを此処に寄越した』


 それってアレですか! 前世で言うところの物質移動ですか? サイコキネシスとか言うやつですか? 瞬間移動をテレポーテーションと読む超能力的な⁉︎


「ニャン様、あの、ありがとうございます」


 いけないいけない。お礼は述べませんと。


『うむ。これを側妃に懐妊祝いとして贈れ』


 そんなわけで。ジョナスを見れば、コクリと頷いてくれましたので、ケイに合図して膝掛けを贈り物にする事が決定しました。


『ああ、そうだ。ワタシが見える娘よ。ワタシの印を額に付けておく事にしよう。成長してワタシが見えなくなった時が来るとしたら消えるが、見える間は、その印が、ワタシが見える証となろうよ』


 そ、そそそそそそれはっ!

 アレじゃないですか⁉︎ 建国神話とか世界神話に出て来る聖なる獣の祝福とか何とか! つまり、わたくしがニャン様を見える事を世に知らしめるってヤツですか⁉︎

 元歴史好き女からすれば、滾るっ!

 ……って話ですが。

 いや、でもなぁ。目立ちたくないんだよなぁ。


「ニャン様には、折角のお申し出を頂きまして、身に余る光栄でございますが、わたくし、このレーゼル王国へ嫁いで来ましたのは、この王国の繁栄は願うものの、それ以上に、その……身の安全、という現状でございまして。わたくしにそのような証を付ける事は、レーゼル王国にとって、何らかの繁栄に繋がるのかもしれませんが、抑の話、わたくしは王太子殿下と婚約者であらせられた側妃との結婚に割り込んだような悪女でございますれば、その、証を付けるという栄誉はご辞退させて頂くのが筋か、と」


『ふむ? 其方がこの国に来た事情は知っておるよ。しかし、それは仕方なき事。現国王もその辺は理解しておる。というより、其方は引き換えのようなもの。そう萎縮することでも有るまいよ。それに13.14歳の其方が悪女ならば、世に悪女ばかりであろうな。王国の繁栄と言うが、証を付ける事によって、其方の祖国・アズリーもこの国・レーゼルも争いごとにはならなくなるが?』


 えっ。嘘⁉︎ そうなの⁉︎ アズリー公国は土地が小さい割に宝石の鉱山とか金の採掘とか資源が豊富でいつも周辺国から狙われていたのに。レーゼル王国が在るから侵攻されていないだけだよ? それが無くなる可能性が有るの?


「それは、何ゆえでしょうか」


『うむうむ。鵜呑みにしない事は良き事よ。額に付ける証は、我ら聖なる獣達の守護を得ているという事。守護といっても見守っているだけだがな。周辺国の中にはアズリーやレーゼルより古い国が有る。そういった国には、我らの証の模様の特徴も知られている。我らは其々に模様を付けるからな。何の模様か解れば聖なる獣の守護を得ている者、と判断する。古い国こそ聖なる獣の存在を特別視している。だから争いごとは避けられる』


 なんと⁉︎ それなら、この国に貢献出来ますね⁉︎


「畏まりました。どうぞ、ニャン様、証をお授けくださいませ」


『うむ』


 そんなわけで。

 ニャン様が光ったと思いましたら(この光が2度目なのでちょっと慣れた)大きくなりました。

 ……えっ⁉︎ 大きく⁉︎


「「「「「大きくなった⁉︎」」」」」


 おおぅ。そういえば、ほぼわたくしとニャン様だけで会話をしていましたし、現実的というより幻想的な現状でしたので、忘れていましたが、皆、というか、離宮の使用人全員、此処に居ましたね。……全員で叫んだから、離宮内に声は反響しているし、わたくしも耳がちょっと痛いですが、気持ちは同じなので、黙っておきます。


 うん、でも、ビックリしますよね。大きくなって。


 ニャン様の大きさは先程までの普通の(?)猫の大きさから、わたくしと同じ大きさになりました。ビックリです。そんなわたくし達の驚きを尻目にニャン様は、わたくしの額にチュッと口付けされました。

 額にニャンの口付け……。ヤダ。嬉しい。このままわたくし死んでも良いかもしれません。


「し、死んでも良いかもしれませんわぁ!」


『それはダメだ。久方ぶりにワタシが見える其方には長く生きてもらいたいものよ』


 ニャン様に言われては、長生きせねばなりませんっ!

 己を特別視しない、と自戒しつつ、ニャン様を見られる時を少しでも延ばしましょう!


「そういえば、ニャン様はお名前は」


『ワタシの本当の名前はワタシの伴侶にしか教えぬから、無理だが。仮の名前ならば其方が名付けると良いぞ』


 なんとっ! わたくしが名付け親でございますか! ええと、ええと、どうしましょう? 見た目がロシアンブルーなんですよねぇ、ニャン様。そしてオッドアイ。ううん。うーん。高貴なるもの、ノーブル。見た目ロシアンブルーだから、そのイメージが強いんですよねぇ。気品有るニャン様ですし。

 気品。優雅。ああ、そういえば前世の日本では、雅という言葉が有りましたねぇ。雅。正しくニャン様にピッタリな気がします。


「雅」


 ピッタリだと思った途端にポロリと零れ落ちました。


『ふむ?』


「ミヤビはいかがでしょう?」


『ミヤビ。ふむ。不思議な音だが、良い。気に入った。ではミヤビと呼ぶが良い』


 という事で。

 ニャン様は、本日よりミヤビ様にネームチェンジです。うっかり日本語で考えましたけど、気に入ってもらえたなら良いですよね。うん、良い事にしましょう。


「ミヤビ様、これからも宜しくお願い致します」


『うむ。其方の撫で方は気に入っておるからな。また来る。さて。ワタシはもう実体化を解くぞ。あまり人から構われるのが好ましくないのでな』


 そこはやはり猫の性質みたいなんですね。ロシアンブルーは家族には人懐こい性質ですが。どちらかと言えば気まぐれニャンの性質に近いんですかね。なんだって良いですけども。だって。


 猫は正義! なのですから。

 存在そのものが尊いのです。


 またもや光ったニャン様は、わたくしの目には変わらぬ姿ですが、ラッスルとケイとジョナスが周囲に目をやり、わたくし達の背後の使用人達が全員で


「「「「「消えた……」」」」」


 と、呆然とした様子で呟くので、成る程、今までと同じような状態に戻ったのだな、と納得しました。取り敢えず、ケイが持ってくれているニャン様推薦の膝掛けを、今度はケイと一緒にラッピングの包装紙選びですね。


 そこでグーッとお腹の虫が鳴きました。

 今度はわたくしでは有りません。

 ラッスルでした。

 その音で離宮の使用人達が全員、我に返ります。それから各々仕事場に戻っていきました。うむ。白昼夢として脳が記憶を封じた、可能性も有りますね。いえ、白昼夢では無い証拠がケイに抱えられていますけど。膝掛けという証拠です。


「側妃への懐妊祝いは決まりましたし、わたくしは部屋に戻りますね。ジョナス、さすがに色々な事が有って、わたくしも疲れてしまったので、申し訳ないのですが昼食は部屋にお願いしても宜しいかしら?」


 未だボンヤリしているジョナスが、ハッとした表情を見せてわたくしに「畏まりました」 と頭を下げた後。

 ゆっくりと顔を上げたと思ったら、マジマジとわたくしの顔を見て来ます。


「今のは夢では無かったのですね……やはり」


 やっぱり未だボンヤリしているような口調でジョナスが、わたくしの顔の一点、額に視線を固定させています。そういえば、わたくし、ニャン様もといミヤビ様から証を付けて頂きましたわね。


 そして、思うにとても素晴らしい誕生日プレゼントだという事に気付きました! わたくし、14歳の誕生日プレゼントが、ニャンの口付けでしたわ! 素敵なプレゼントです。あ、でも、これも自分が特別だと思ってはいけないんですよね。己を特別視しないこと。忘れないようにしなくては。


 そういえば。

 先程までミヤビ様がいらした場所を見ますが、いつの間にかミヤビ様は居なくなっておりました。やっぱり。

 でも、見えなくなったのではなく、居なくなったのだな、と解ります。証がポゥッと熱を持っている感覚がするのですが、先程まで……ミヤビ様が側に居た時までは、その熱が強かったのですが、居なくなった途端に弱くなりましたので。どうやら、証って居るか居ないかも解るようです。


 ニャン様、いえ、ミヤビ様、探知機?


 さて。お部屋に戻って昼食を頂いた後は、懐妊を祝うメッセージと共に、ジョナスかケイかラッスルに届けてもらいましょうか。……あ、でも、ラッスルは断って来るかもしれないですわね。わたくしの専属護衛ですから、離宮から王宮まで3日は掛かるのに、そんなに長く離れるわけは無いですものね。

 届けてもらうのは別の者に頼みましょう。


 そう思っておりましたが、ラッスルはケイにならわたくしを任せられるし、離宮内の護衛達もきちんとわたくしを守れるだろうから、と懐妊祝いを持って行く役割をこなしてくれるそうです。専属護衛って……そんな感じなんでしたっけ?


 そんなこんなで、午後からは包装紙選びやらリボン選びやらしていると。

 お父様から誕生日プレゼントが届きました。

 去年は確かわたくしの結婚云々で泣きながら小さめのエメラルドのネックレスでしたね。付ける時はあまり無いと思いましたが、有り難く頂きました。

 今年ですが。

 金を加工したブレスレットでした。……嬉しいのですが、こんなに金が掛かる物は要らないんですが。そう思うのは、多分日本人の時の庶民感覚が抜けない所為ですかね。尚、お母様はわたくしが子どもの頃手作りしたお守り(アレです、日本で良く見る布に入って中身がお札の。中身はわたくしの手書きでしたけどね)を真似て手作りして下さったお守りです。こういう方が嬉しいのですが。後、お兄様達は3人揃って剣でした。


 剣って……。これで身を守れ、と? わたくし、扱い方を学んでませんが。仕方ないのでラッスルに学びたいと思います。



















お読み頂きまして、ありがとうございました。


尚、誤字脱字・言い回し等の直しはちょくちょく行っているつもりです。


また、短編【思い出は、もらえませんでした】が、かなり読まれていたようで、驚きました。ありがとうございます。こんなに読まれているとも思いませんでしたので、近いうちに続編か何かをアップしますので、ご興味がお有りの方は、シリーズ設定に致しますので、よろしくお願い致します。

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