2 告白の断られ方
秋の桜子さま作成!
家に帰りお風呂から出て自分の部屋に戻った私は、髪をドライヤーで乾かしながら物思いに耽っていた。
いや、物思いとは違うか。
ただ、今までのことを思い出していただけだったから。
私はこの有名進学校である私立高校に入学して、その入学式の日に天敵を見つけた。
それは一海だった。
この学校は超のつくくらいの進学校だ。
私は受験の時、彼の次に高得点だったそうだ。
そういうことを最初のHRで隠さず話された。
本来なら受験の時の点数など生徒に言うことはないはずだけど、生徒同士の向上心、それとも競争心を育むためだとかで、全生徒の点数をオープンにしているのだそうだ。
余計なことをと思ったけど、わずか一点差だったと知った私は、彼のことを仮想敵と認定した。
うん。しっかり学校の思惑に乗せられていると思ったけど、私のやる気はあがったのだ。
勿論1年生のクラスは成績順だ。席順は……さすがにあいうえお順になっていたけど。
でも、これもすぐにテストの点数順に変わったけどね。
ということで、私は自分がわからない問題があると目の前の席の一海に聞くことにした。
一海も気軽に教えてくれたしね。
さて、その一海だけど、新入生代表として堂々と挨拶をした姿に、学校中の女子生徒の目は釘付けになったようだ。
入学式からしばらくの間、休み時間ごとに彼を見に来る女子生徒が後を絶たなかったからね。
それもいつの間にか見なくなったけど……。
理由はどうやら私らしかった。
先程もいったけど、一海と気軽に話す私は彼に「佐藤さんなんてありきたり過ぎて私に似合わない、莉奈って呼んで」と言った。
一海も「じゃあ、莉奈で」と名前で呼んでくれることになった。
それが原因と言えば原因なのだろう。
そんなこんなで仲が良さそうにしている私と一海に、彼のことを女子たちは諦めていったようだ。
私の気持ちが変わったのは生徒会選挙を終えたあとだった。
この頃にはさすがに天敵認定はしていなかったけど、それでもライバルではあった。
どうしても彼に一歩及ばなかったから。
この学校の特色として生徒会の任期は2学年の時のみというのがある。
なので、選挙が行われるのは2月だ。
それに投票できるのも同じ学年の1年生のみとなっている。
これは受験勉強に重きを置いている学校の方針だ。
それに選挙で選ぶのは会長のみ。次点が副会長になり、それ以外の候補は総務や会計、書記に振り分けられる。
ただし、立候補者が複数いた場合だ。
私たちの学年で生徒会長に立候補したのは、私と一海の二人だけだった。
選挙の結果は……言わずもがなだったけど。
私たちの生徒会が発足して生徒会メンバーと顔を合わせた時に、美羽と初めて顔を合わせた。
意外だったのは、彼女だけが先生からの推薦枠だったこと。
でも、実際に活動が始まって、先生が何故彼女を推薦してきたのかが、よく分かった。
彼女は段どりを作るのが上手い。
物事の流れというものがわかっているので、彼女が考えてくれた段取りでやるとスムーズに進むのだ。
無駄もほとんどなかった。
年度によってはいっぱいいっぱいの状況で、前任者が最初は手を貸すことが多いと顧問の先生が言っていた。
そう、私たちの学年は前任者の手伝いを必要としなかった。
代わりに同じ学年のみんなが手伝ってくれた。
これも異例のことだったらしい。
というのも、本来は生徒会から声を掛けて手伝いを募集するのに、行事の開催の予定が立つと協力を申し出てくれる人が多かったのだ。
私はそのことを生徒会長である一海の実力だと思っていた。
生徒会長の魅力に協力者が跡を絶たないと思ったのだ。
そんなカリスマ性に、いつの間にか私もやられてしまい、一海のことを好きになっていた。
と、同時に私は気づいてしまった。
一海の視線が誰のことを追っているのかを。
私はもやもやとした気持ちを抱えたまま過ごすのが嫌で、夏休みが終わる直前に一海に告白した。
塾からの帰り道だった。
「あのさ……好きだよ、一海」
「……冗談だろ?」
「さすがに私でも怒るよ」
「悪い。ああ、いや、ごめん」
「やっぱりかー」
見事玉砕!
わかっていたことだから笑って「やっぱりかー」と言えた。
のに、ついお節介な一言を足してしまったのよね。
「一海が好きなのはあの子でしょ。あの子が好きなら待ってちゃ埒があかないよ」
と。