1 そこには恋のこの字が……見えてきた?
この作品は陸 なるみさんのリクエストにより書かせていただきました。
陸 なるみさんの<『前世はお針子』うすらとんかち女子が恋に目覚めるまで。>という作品の、サイドストーリーとなっています。
そちらをお読みいただいてからこちらを読むと、二度おいしいという仕様となっております。
主人公は本編で名前しか出てこなかった生徒会副会長をしていた佐藤莉奈さんです。
では、お楽しみください。
秋の桜子さま作成!
入学式が終わっての昼休み。
私こと佐藤莉奈は、昨日まで一緒に生徒会役員をやっていた青井美羽を誘って食堂へと来た。
理由は……元生徒会長の渡辺一海に、後押しした結果を知りたかったから。
言いづらそうにしている美羽に、根気よく話を振り続けたら、観念したのかポツリポツリと話してくれた。
「……というわけで、えーと、一応……つき合う……ということに……なった……んだよね?」
私は美羽の疑問形の言葉にガクリと肩を落とした。
「いや、そこ。なんで疑問形になるのよ」
「えー、う~ん? 名前を呼び合うのが、つき合うということなんだと言われたんだよね」
「ふ~ん。じゃあ、美羽は渡辺のことを名前呼びしているんだ」
「う、うん」
赤い顔をして俯いた美羽に私は呆れた目を向けた。
といっても、呆れたのは一海の策略についてだけど。
美羽のことだから絶対に仕掛けられたあれこれには気がついてないんだろうな。
でも、まっ、いっか。
「一応言っとくね。おめでとう、美羽」
「あ、ありがとう」
顔を上げて私のことを見た美羽は、はにかんだ笑顔を浮かべていた。
そのかわいい顔に私の後ろのほうでガタッと椅子をならす音が聞こえてきた。
私は“落ちたな”と“ご愁傷様、もう囲い込まれたから、君の望みはないんだよ”と、心の中で呟いた。
それからやはり美羽は、私が一海じゃなくて渡辺と言ったことに気がついてないのかと思って、口元に苦笑を浮かべたのだった。
◇
話しながらお弁当を食べたので、昼休みギリギリになって美羽と別れることになった。
私と美羽はクラスが違う。なので一緒に昼休みを過ごすとしたら、どちらかのクラスに行くか、学食を使うか、中庭のベンチを確保するしかない。
中庭のベンチはカップルの指定席と言われているから行く気はなかったし、どちらかのクラスではクラスメイトに話を聞かれるかもしれない。
それなら学食のほうがいいだろうという判断だった。
教室に戻って午後の授業を終え、いつものように塾に行った。
今日も同じ講座を取っていたので、隣に座った。
なのに、一海から何の報告もない。
痺れを切らした私は塾からの帰りにからかい半分に「美羽から聞いたぞ」と、言ってやった。
一海は驚いた顔をしていた。
なんでと思ったらーーー。
「それを美羽が言ったのか」
「そうだけど?」
このあと、家に着くまでの短い時間で聞かされたのは、まだ美羽の中でつき合うということがどういうことかわかっていないようだから、美羽のペースに合わせて攻めていこうと思っていたということ。
「それじゃあ、よかったじゃん。美羽はつき合っている気になっているようだからさ」
「ああ、ありがとう」
苦笑のような笑みを浮かべて、一海は礼を言ってきたのだった。
秋の桜子さまより素敵なバナーをいただきました。
各話の前に入れさせていただきました。
陸 なるみさんの<『前世はお針子』うすらとんかち女子が恋に目覚めるまで。>のバナーを、下記に設置させていただきました。
そちらをクリックすれば飛べますので、是非お読みいただけると、二度おいしい仕様となっております('◇')ゞ