5話 旅立ち
「そろそろアビリティが馴染みましたよね?」
マキは確かに殺気を込めながら二人を睨む。迷探偵もといアオイとツバキは蛇に睨まれたカエルのように動けなくなっていた。
「そっ、そうなのでしょうかマキ様。」
「うっ、うん、カンペキになじんでるよー。さ、流石マキちゃんの魔法だねー。」
震えながらも受け答える二人をどう思ったかは分からないが、マキは「もういいですよ。」と言った。二人はほっと胸を撫で下ろした。
「よし…行くか。」
流石に気持ちを切り替える。フル・ブルームの未来を背負っているのだ。アオイにとってはかなりのプレッシャーだった。それをわかっているのだろう、二人もさっきと比べ物にならないほど真面目になっていた。
「アオイ、これをお持ち下さい。」
マキは、水色の魔法陣の刻まれたお守りをアオイに渡した。お手製感溢れるお守りを。
「これは?」
アオイが聞きたいのはどんな種類の魔法なのかという点。それをマキもしっかり理解しているようで、
「これには、私の魔力を込めていて、その魔力使ったテレパシーに使えるんですよ。」
と言って、自らの腰にぶら下げてる人形を見せる。その人形も、同じ魔法陣が刻まれていて、お手製感も溢れてる。
「これで、フル・ブルームに言っても、会話ができます。あっでも、これかなり扱いが難しいな魔法で、使ってる間二人とも身動き取れないので、あしからず。」
「かなり使いずらくね?その魔法。」
最初の一文は良かったが、二文目の突然のデメリットカミングアウト。しかもデカすぎる。身動き取れないとか、どう使えばいいんだとアオイは思う。
「そんなことないです!きっと…」
マキも同感なのか、歯切れ悪く答える。やばくね?って空気が二人をとりまき出した。そんななかなか進まない二人にツバキが無理やり話を進める。
「アオイなら大丈夫だよー!多分、だって、ここに来れたんだし!天界に来れる人は魔法の素養っていうよりかは結界を破る素養…?まー、なんか才能ががある人だけだよー。だから、だいじょび!」
ツバキがポンっとと、アオイの背中を叩く。その勢いでいつの間にか展開されていた魔法陣に乗っかる。
「それじゃー、いってらー」
ひらひらとツバキが手を振る。ぽんぽん話が進み置いてけぼり。アビリティとかいう能力を貰い、祈りとかいうおまけも貰った。完璧なお膳立てとアオイは勝手に思うことにする。
「ああ、もう!任せとけ!俺の底力見せてやるよ!」
やけくそに宣言する。何事もまず、できるって思うことが大切だとばっちゃんが言っていた。
「汝、転移者なり。蒼の力を持って我命ずる。汝をフル・ブルームへ送り届けん。」
マキの詠唱が終わった頃、アオイは姿を消していた。
「どうか、頼みました!」
マキの声が、最後天界に残った。
さあ、アオイが転移しました!こっから物語が始まっていきます。