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4話 必勝祈願

「これで本当にいけたのか?」


魔法陣に包まれた後、なんの感覚もない体を見ながら、アオイはマキに問う。案外すっと終わったし、力を手に入れた感覚がない。


「もち、大丈夫ですよ。身体が馴染むまで少々かかりますがね。」


マキが言うならそうなのだろうとアオイは納得することにした。


「んなら、ここの茶菓子を物色しますかねっと。…っお、これじっちゃん家に似たようなんあったな。貰ってもいい?好きなんだよな。」


マキに許可を取り、見覚えあるのを頂く。じっちゃんが必ず常備していたお菓子のひとつに類似している『キノコMOUNTAIN』と宣伝された菓子を手に取る。懐かしの味を堪能していると、『タケノコVILLAGE』と宣伝されたものを食べていたマキが「あっ…」と言った。


「そうだ、忘れてた訳じゃないんですけど、フル・ブルームについて説明致しますね。忘れてた訳じゃないんですけど。」


忘れてた訳じゃないで挟んだ後、ぽんっと手を叩き、マキは説明を始めた。


「まず、フル・ブルームは4つの大きな国々でできています。」


マキはふよふよふよと、淡い水色の光で丸い形を作り、地図的な物を作り出した。


「人と亜人が共存し、私が担当しているアングレカム人が多く住み住む、主に技術力の優れたシュンラン、亜人のみが住み弱肉強食のカトレア一度入ったら戻れないと言われてる妖精の森、シンビジウム。主にこの四つですね。」


マキは円状の地図を、それぞれ指さしながら、説明する。北がシンビジウム、南がアングレカム、東がジシュンラン、西がカトレアとも付け加えた。そしてど真ん中には、小さい円状がもう1つ。


「真ん中の丸っこいのは?」


『wakaiドーナツ』と宣伝された4つ入りのドーナツをマキに半分譲渡し、突如現れた抹茶を飲み終えた後、再開された説明に耳を傾けた。


「そこは初まりの国、ランです。アングレカム、シュンラン、カトレア、シンビジウムと、境界を隔て繋がっています。」


マキは簡単に説明し終え、「さあ、質問をどうぞ」と言わんばかりにアオイの方を見た。なのでアオイはさっきからちょくちょく挟まる単語について言及する。


「んじゃなら、亜人ってのはなんなんだ?やっぱり、猫耳とかしっぽとか生えてんの?」


「んとですね、もそもそ、混血と純血にわけられるんですけども、耳やしっぽが普段から見えてる方が、混血さんです。純血さんは、それらを隠すことができるんですよね。」


ちなみにと、マキが補足する。


「亜人自体が総称で分け方として、獅子族や狼族、鳥族など細かく分けられます。」


「なるほどな。ちなみにその純血ってのは、やっぱり半血よりも強いのか?」


人間の血が混ざることで弱体化擦るのは案外よくある話だと思うが、一応聞いておく。マキから帰ってきた答えもアオイの予想通りだった。


「ええ、比べ物にならないほど。ですので純血はかなり身分の高い方ですよ。」


ふむふむとアオイは頷く。そして次の問いを投げかける。


「亜人についてはだいたいわかった。なら、妖精ってのはなんだ?」


アオイ的には亜人について聞いたなら、こっちも聞いておくべきだろう。マキもそれがわかっていたらしく、すぐに回答をする。


「妖精は主に魔力の多い場所に集まっていて、5属性の子達がいます。それで、半妖精、純妖精、妖精の順番で開花していきます。滅多にいませんが、妖精の力を借りて戦う妖術師もいますね。」


「妖術…かっこいい雰囲気だな。」


思ったことを口にしたアオイに対して、マキは「それには同感」というような表情でアオイを見た。


「妖術は妖精と契約をすることが必須なので、コンビネーション技が多いんですよ。ほんと、かっこいいですよ。」


おそらく見たことがあるのだろうそれを、目を輝かせながら語る。アオイは最初は興味津々で聞いていたのだが、専門用語に加え加速してきたマキの説明についていけなくなり、聞いてるフリして『黒い雷』と書かれたチョコ菓子を頂く方向へシフトチェンジした。

 

そんなマキの高速専門用語多用話、通称『otabana』を延々と聞き流していた中、マキ以外の元気っ子っぽい声が聞こえた。


「マーキーちゃーん!」


とてとてと軽い足音が近づいてきたかと思ったら、マキがよろけた。それもそのハズ、マキの背中に赤い少女が抱きついていたのだ。


「わっ、ツバキ!?どうしたの急に!?今大切なお話してるの!」


背中への突然の衝撃にマキは驚く。多分今日一番の驚きだっただろうそれのおかげで、マキのotabanaが終わった。アオイはotabanaを終わらせてくれたのは一体誰だろうと、マキの背中に回った。


「およ?もしかしてー」


赤みがかった髪が揺れ、紫紺の瞳と視線が交差する。目と目が逢う瞬間紫紺はキラット光る。


「わー、君があおいくん?ツバキはねー、ツバキっていうの!カトレアの番人だよー!」


マキにしがみついたまま、ツバキという少女が自己紹介をする。何となくよく花屋に母親と来ていた少女と雰囲気が似てるなぁと思いつつ、アオイは会話を広げる。


「へえ、そうなんだ。二人の様子から推理すると、マキの友達?」


「親友だよー」と付け足しながらぶんぶんと頭振り頷く少女の可愛らしさに心奪われそうになる。断じてロリコンではないアオイでもこのダメージ、えげつない。


「ちょっ、アオイ!今はそれどころではなくですね助けてください!」


さっきから背中にしがみつきゆらゆら揺れてるツバキにマキがとうとうバランスを崩し、転けかける。だがそこはツバキ、巧みにバランスをとりいい感じに体制を立て直させる。


そして何事もなかったようにアオイと目を合わせる。


「今からー、フル・ブルームに行くんだよねー?」


真剣味を帯びた声でアオイに尋ねる。それにはマキも表情筋を固める。


「ああ。」


確かに重くなった空気。だが目だけはそらさずアオイは答える。そんなアオイにツバキはまた目をキラッとさせ、口を少しあげた。


「ふっふっふー、ならツバキが必勝祈願をしてあげましょう!」


と言いながら、マキの背中から降り、アオイの前に立つ。するとさっきまで見えなかった少女の全身が見える。鮮やかな赤髪に、紫根の瞳、マキとはお揃いであろうワンピースも赤色。胸にはまたまたお揃いのブローチをつけていた。マキと違うのは、羽の形と、頭から生えてるような勢いの天使の輪。これまた赤。全身で桃や赤を押し出したような少女だった。


そしてその少女が唱えた言葉にアオイは疑問を浮かべた。


「必勝祈願?モノホンの神様の元に連れてってくれんの?」


するとマキが、「流石に無理です。」と言った後、必勝祈願とやらの説明をする。


「必勝祈願…祈りと呼ばれるものですね。アビリティとも魔法とも少し違ってて、ずっと弱めのバフのようなものがかけられている状態なんですけど、あまりに弱いのでおまけにちかいかと。」


「おまけ…?」


マキが発した言葉にアオイが聞き直す、おまけと言う言葉にツバキはムッとほを膨らました。


「おまけでもー、天使様直々の加護はすごいよー!ズバリ、香水効果!」


アオイに向かって人差し指を突き指し、ツバキはドヤァと笑う。


「それって、凄いのか…?」


「…微妙ですね。」


そんなツバキにとって渾身のアピール。だが、あくまで二人は微妙な態度だった。それにツバキはまたムッとほを膨らます。


「微妙じゃないよー!ツバキの香水はすごいのー!何時でもお肌潤ってしっとりしてるもん!」


「いや、俺的に肌は気にしてないっつーか…」


アオイは自分の手を見る。花の植え替えで小さな頃から荒れていることが当たり前でぶっちゃけ気にしたことがない。


「まーまーまーまー、まかせときんしゃい!」


とツバキが自身満々に言う。まあ、あって困るものでもないかと、アオイは祈りをしてもらうことにした。


「汝、継承者なり!紅の力を持って我命ずる!我が力、汝に授けん!!」


先程よりかなり小さな淡い桃色の魔法陣アオイの足元にが現れた。そしてぱっと光った後、すぐに消えた。


「よーし、ペキカングッジョブ!」


魔方陣が完全に消滅したのを見届け、ツバキはアオイにグッと親指を立てた。


「ん?ほんとにできたのか?2人とも、俺からドルチェ&ガッパーナの香水の香りする?」


すんすんとアオイは自分の手の匂いを嗅いでみたが、なるほど全く分からない。するとツバキが「まっかせんしゃい!ほら、マキちゃんも!」と言ってすんすんと匂いを嗅いだ。マキは一瞬顔を引き攣らせたが、一応匂いを嗅いできた。


「あー、はい。匂いますね。ドルチェ&ガッパーナではないですけど。」

「あー、うん。匂うねー。ドルチェ&ガッパーナなわけないけどねー。」


「匂うって、俺が臭いみたいじゃん!」


二人からのダブルパンチ。それに対抗するとツバキは「えへへー」と笑い、マキはあろうことか「はっ」っと鼻で笑ってきた。そのマキの笑い方にアオイはギョッとする。


「お前、そんなキャラだったっけ?もうちょい大人しい天使だった気が…。」


つい数十分前のマキを思い返す。儚げをまとった美少女だったはずだ。しかしその美少女が、大切な説明を忘れ、otabanaを繰り広げ、しまいには鼻で人を笑う。『第一印象って信じるものじゃあねぇ』つってたじっちゃんに心の中で深く頷く。


「あー、マキちゃんはねー、恥ずかしがり屋さんだからー。初対面じゃシャイガールなんだよー。可愛いよねー。」


ツバキの発したアオイの疑問を解決するための一言。俗に言うコミュ障的なものだとも付け加えて。


「なっ、ツバキ!それは違っ…」


親友の突然の裏切りにマキは焦る。そしてそれを否定する。駄菓子菓子、アオイの耳はツバキの言葉を一言一句のがさず拾っていた。

 

「なるほどな。つーことは少しは俺に少しは懐いたってことだな?」


右手を銃の形にし、顎をその親指と人差し指で挟み、顎を引く。それが迷探偵アオイの決めポーズだった。


「ふっふー、よく気がついたね迷探偵アオイ!」

 

迷探偵アオイと同じポーズをとる迷探偵ツバキ。二人の推理によるマキ茶化しは止まらない。


「俺の推理的にマキはツバキに対しても初対面の時はトゲトゲしい態度だったと予想するがどうだ?」


「ふっふー、よく気がついたねアオイ!そんときの話、聞く?」


イタズラっぽくツバキが笑う。マキは「ちょ、やめて!」と言っているが、ツバキは聞く耳持たず。


「聞く!」


興味津々のアオイにこしょこしょ話をするようにツバキが話し始める。


「ー汝、敵対者なり。蒼の力を持って我命ずる。水よ、汝らを流したまえ。」


マキが小さな声で詠唱を開始死、魔力を縫い合わせる。だが、二人は気づかない。


「実わね…」


そしてー


「水流!」

 

ツバキが話す直前、マキの後ろから現れた薄青の魔法陣から水が現れる。器を失った水は二人の迷探偵めがけ襲いかかっていった。これにより、迷探偵二人が降参、迷宮入りの事件がひとつ生まれたのだった。


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