私の心落ち着く空間。
門をくぐり抜けると
空気が変わる。
庭園の飛び石を渡り
つくばいのもとへ向かう。
水を汲み上げ、手にそそいで清めていく。
水の涼しげな感触を感じる。
すると聞こえてくるのは琴のような音色。
つくばいと水琴窟により
真夏でありながらも涼しさを感じられる。
手を清めてむかうはにじり口。
体を縮こませ、にじって入れば
い草の香りに包まれる。
ここが私の落ち着く場所。
水屋に並ぶ道具たちが出番を待っている。
まずは風炉と御釜の用意。
今日の一杯の為に湯を沸かすのだ。
美味しい一杯の為に。
床の間に香炉を置く。
私の好きな白檀。
茶室内に柔らかな香りが広がる。
茶室内の準備が整った。
いったん水屋へと戻り、水指を手にして位置につく。
右手、左手、右手。
障子をあけて一歩、また一歩。
点前のはじまり。
一歩、一歩と
自分の足が畳を擦る音を聞く。
どんどん無心になっていく。
体が勝手に動いていく。
袱紗をさばいて道具を清めていく。
湯が煮えたぎる音がする。
水指から一杯の水を御釜の中へ。
すると音が変わり、静寂に包まれる。
茶筅で茶を点てる。
茶の香りが立ち込める。
今日は自服。
一口、二口、三口…最後のひと啜り。
自服でも、至福の時間。
口の中に広がる苦み、甘み、香り。
御茶を濁さずに点てられた。
御茶の香りと。
白檀の香りと。
ゆっくり流れる時間と。
これが私の心落ち着く空間。
無心になれる幸せな空間。
時々浸りたくなるこの空間と時間に。
心が落ち着くこの空間に戻りたくなるのだ。
疲れてるときは特にそう思う。
この空間、時間を
私はこれからも守っていきたい。
end