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派遣勇者-SENT BRAVE-(3)

挿絵(By みてみん)

 巨大な質量が地面に激突した衝撃が襲いかかる。

「うわぁぁぁぁぁ!!」

 バランスを取ることができず四つん這いになり、情けない声をあげてしまう。ノアさんの方を見ると水しぶきを受けながら直立を維持し、落下してきた物体を見つめている。

「ユースケ。囮になってあのドロイドを通路から引き離して下さい。その間に私達が先に退避して十分な距離を確保できた後、合図を送るので追いかけて下さい。」

 倒さなくても良いということなのか?そう思い、ノアさんへ質問をする。

「破壊しなくて大丈夫なんですか?」

 謎の機械は丸まった状態からガコガコと体を変形・展開させている。

「ゴーレムタイプは移動速度が遅く、一旦距離を開いてしまえば追いつかれることはありません。」

 今や高さ10mにもなったゴーレム。見た目はまるで金属でできた巨大な土偶。両腕が大きく、人間などは容易く握りつぶせそうだ。足は付いておらず、空気を地面に噴射してわずかに浮いている。確かに動きは鈍そうに思えた。

「分かりました。」

 そう言うと、ノアさん達と距離を取りながら、ゴーレムに向かってがむしゃらに光弾を撃ち込む。ドロイドは両腕で構えをとり頭部をガードしている。

 両腕に3発、残りはガード下の腹部に光弾が命中。ダメージの有無を確認しつつ射撃の構えをしたところで、ドロイドが右手をこちらにかざした。

 何だ?そう思い立ち止まったその瞬間。巨大な拳が目の前にあった。

_______________________

 希望は目の前で呆気なく打ち砕かれた。

 目指す場所も目的も知らされないまま、護衛としてこの遺跡までやって来た。このような朽ち果てた場所にいったい何があるのかと不思議に思っていたが、ノア指令の”勇者を呼ぶ”という言葉で初めてここが”始まりの遺跡”だということに気がついた。

 ”青き勇者”

 誰もが知っている伝説。親から子へ、はるか昔から語り継がれてきた物語だが、創作ではなく過去に実際あった出来事なのではないかと言う歴史家もいる。

 俺自身、伝説で語られる”青き勇者”の荒唐無稽な強さから、ただの御伽噺の類だと思っていた。

 しかし伝説と同じく、本当にどこからともなく現れた何者かがドロイドを易々と破壊してしまった。その光景を見て長らく持ち得なかった希望が胸に灯るのを感じた。

 我々を助けるために囮になった勇者。ひょっとするとゴーレムも倒してしまうのではないか。殿を務めながら、期待の眼差しで勇者を見つめる。

 ゴーレムの右腕から射出されたロケットアンカーを勇者は華麗に躱・・・せずに直撃。大きな衝撃音と共に壁にめり込んだ。ワイヤーが巻かれ、拳が戻されると。壁にめり込んだままピクリとも動かない勇者が見えた。 

 まずい。勇者があっけなく倒されてしまった。腕を巻き終えたゴーレムがこちらに向かおうとするのを見て、覚悟を決めた。

「後は頼む!!」

 恐怖を払拭すために雄叫びを上げながら、ゴーレムへ発砲しつつガムシャラに走る。今ここでノア指令を失えばレジスタンスは終わりだ。

「来る!」

 ゴーレムがこちらに右手を掲げたのを視界にとらえた瞬間、全力で飛び込む。

 背後で大きな衝撃を感じながら、再び全力で走りつつ銃を撃つ。きっと元いた場所には大きな穴ができているだろう。

 ロケットアンカーは予備動作として発射前に手をかざす。その動きに注意してさえいれば見てからの回避が可能だ。一度射出されば腕を巻き戻すのに時間がかかるので、搭載武器がこれだけならば時間稼ぎができるはずだ。

しかし、考えが甘かった。

 ゴーレムの胸が観音開きになり中から現れたのは2門のバルカン砲。

「クッ!!」

 すぐさま瓦礫に向かって飛び込むと粉々になった瓦礫の破片が頭上に積もる。

 銃撃が止み、次はロケットアンカーが撃ち込まれるはず、そう思い走り出そうと左足を踏みこもうとしたところ、前のめりに倒れこんでしまった。

 左足の先からおびただしい量の血が流れている。「不味い!」そう思った瞬間、瓦礫ごと吹き飛ばされた。

 何とか直撃は免れたが、両足の感覚が無い。ゴーレムを見ると既にこちらに右手を掲げている。もはや這いつくばる力さえ無い。

「ここまでか・・・」

 瞼を閉じると亡くなった家族や仲間達の顔が浮かび上がってきた。(みんな、今いく。)死を覚悟したその刹那、

「ウオォォォォォっ!!」

 突如響き渡る雄叫び。目を開き声の方を向くと、壁から抜け出そうと勇者が必死に藻掻いていた。

 声に反応したゴーレムが右手を勇者に向けたところで、「ボゴンッ!」強引に壁から体を引き抜くと急加速でゴーレムへと突進。それと同時に射出されるロケットアンカー。

「直撃する!!」しかし、ロケットアンカーは空を切った。ゴーレムよりもさらに高く、凄まじい勢いで跳躍していた勇者はそのままゴーレムの頭部に組み付いた。

「ハアアアアアアッ!」

 ゴーレムの横っ面を勇者は思いっ切り殴りつける。

「めきぃっ!」装甲が陥没し内部の電子機器が露出した箇所に勇者はすかさず銃撃を行う。

 するとまるで酔っ払ったかのようにゴーレムが揺れ始めた。尚も銃を撃ち続ける勇者を叩き落とさんと、ゴーレムは巨大な左腕を勇者へと振り下ろす。

 その瞬間、勇者はゴーレムを強く蹴り跳ね躱した。振り下ろされた巨大な拳はゴーレム自身に直撃し、露出がさらに広がる。再びそこへ勇者が光弾を撃ち続けるとホバー用のエンジンが停止し。体勢を整えることができなくなったゴーレムは地面に崩れ落ちた。

「倒した・・・。ゴーレムを、たった一人で!?」

 銃をしばらく構え続けていた勇者だったが糸が切れたかのように地面に倒れ伏した。

「2人とも大丈夫か!」

 ゴーレム撃破を察知した仲間たちが引き返してきたのを微かに捉えながら、俺は瞼を閉じた。

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