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派遣勇者-SENT BRAVE-(29)

挿絵(By みてみん)


『巨大物体が出現。』

「ほう。」

 メタルザウラーに備え付けられたカメラの映像を見たメシアは感心した。見た目はウラジの大型スーツをそのままスケールアップしただけ。

 それでも体積が増大すればするほど重心制御は困難になる。ノアが技術を与えたにしても、この短期間で実現したことは称賛に値する。

「破壊しろ。」

 あれを破壊すれば、残るレジスタンスの戦力はトライブルーのみ。

「畏まりました。」

 飛び道具は無いのか、巨大スーツは2足歩行でゆっくりと接近してくる。

 目標の緩慢な動きに、メタルザウラーは遠距離からの必殺の一撃を与えることを選択。最強兵器“荷電粒子砲”の発射態勢に入る。

 前傾姿勢から下顎が展開し、背部ジェネレーターが大気中のナノマシンからエネルギーを充填してゆく。

 荷電粒子砲はチャージに時間を要するものの、その威力は絶大だ。この世界に存在するあらゆる金属を溶融させることが可能である。

 エネルギーチャージが100%に到達し、光の奔流が巨大スーツへ放たれる。

 のっしのっしと歩くのろまな巨大スーツへ光が迫り、そのまま直撃すると思われた直前、巨大スーツは足元からギャリギャリと音を響かせると地面をスライドし横へ回避した。

 荷電粒子砲を回避しつつ接近する巨大スーツに対し、メタルザウラーは顔を振り荷電粒子砲を当てようとする。薙ぎ払われた光が再び巨大スーツの上半身へ襲い掛かる。

 しかし、光は巨大スーツに当たることなく通り過ぎて行った。

「ハハハッ、よくやる」

 その光景に思わず笑ってしまうメシア。

 巨大スーツは横から迫りくる光線を、足を前後に開き背中を大きく反らしながら滑ることで回避したのだ。その華麗な身のこなしは見る者に優雅な雰囲気すら感じさせる。

 光線を当てるために勢いよく頭を振ったことで光線は大きく逸れ、メタルザウラーは再び頭を振り向けようとしたがそこでエネルギーが尽きてしまった。

 この機を逃すまいとティターンは体勢を戻すと一気に詰め寄り、左のジャブをメタルザウラーに繰り出す。ジャブはメタルザウラーの右後頭部へと直撃した。

『ボキンッ!!!』

 巨大スーツの左腕は大きな音を鳴り響かせたかと思うと、肘から先が崩れ落ちた。


「左腕破損!右腕並びに脚部駆動系に異常発生!!動けません!」

 片膝を地面についた状態で何とか姿勢を保つティターン。目の前ではメタルザウラーが再び荷電粒子砲のチャージを始める。何とかして脚部ローラーだけでも動かせるようにと回復処置を行うユーミカへ、ロムアから意外な指示が出る。

「右腕だけでいい、動かせるようにするんだ!!」

 回避を捨てるという普通では考えられない指示。ユーミカは即座に行動に移した。

 メタルザウラーの背中の突起部分が激しく発光し、再び口内の射出口に光が収束してゆく。ボディへの殴打にダメージが無いと判明したことで、AIは確実に処理できる方法として近距離からの荷電粒子砲を選択した。

 するとティターンの右足が爆散。瞬時にモーメントが計算され、転倒するという結果を導いたAIは警戒することなくそのまま射撃体勢を維持することにした。

 計算通りにバランスを失い左へと倒れ込むティターンが藁に縋るかの如く右腕を前に突き出す。

『ピタッ』

 するとその状態のまま、まるでマネキンの様に静止した。

『ドスッ!!』

 右腕から射出された金属の杭がメタルザウラー口内の荷電粒子砲門を深々と突き刺さり、首裏まで貫通した。

 ティターンはただバランスを失い倒れていた訳では無かった。

 ロムアはわざと右足を自爆させることで機体を傾け右腕を荷電粒子砲の射出口へ向けた状態で固定させ、そこからユーミカが右腕に装備されたショットランサーで射出口を正確に狙撃したのだ。

 レジスタンス最高の機装兵とスナイパー、この二人がいたからこそできた奇跡だった。

『ぼんっ!!ボボボボボボンッ!!』

 発射寸前までチャージされていたことによって逆流した荷電粒子の奔流がメタルザウラーの頭を吹き飛ばす。それでも溢れるエネルギーは全身へと連鎖的な誘爆を発生させると、最後は一斉に爆発して木っ端みじんとなった。


「妙だな・・・」

 メタルザウラーの爆散を見ながらメシアが呟く。

「何故トライブルーが出てこない?」

 巨大スーツとトライブルーが協力すれば、まだ損害を少なくメタルザウラーを撃破できたはず。その理由を考えていたところでスクエアガンから警報が鳴った。

「!!」

 慌てた様子で立ち上がるとメシアはすぐに格納庫へと向かった。

「ゲイツ、この後の戦闘指揮は任せたぞ!」

『いかがなさいましたか?』

 メシアは怒気を含んだ口調で答えた。

「船に侵入者だ。」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「やった、やったぞ!」

「やりましたね!!」

 倒れ込んだ際に展開されたエアクッションに包まれながら歓喜の声を上げるロムアとユーミカ。

「ズズン・・・ズズン・・・」

 喜びもつかの間、遠くから地響きが近づいてくるのを感じた二人はコンソールを操作する。ディスプレイに写された映像を見て、ロムアはコンソールに拳を叩きつけると吐き捨てた。

「くそったれっ!」

 メタルザウラーが2機、地平線の彼方からゆっくりと近づいて来るのがディスプレイには映っていた。

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