派遣勇者-SENT BRAVE-(15)
看守の拘束と収容所のシステム破壊のために無傷の囚人達を連れ、エレベーターから地下に降りる。
地下ではドロイドを修理する工場や充電設備にコントロールルーム、ホバータンクのドックを見つけシステムを破壊した。
しかし、どれだけ探しても看守達を見つけることはできなかった。どこかに隠れているのかと探したものの、奇妙なことに髪の毛一本すら存在せず、人がいた痕跡等すら全く無かった。
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「地下には看守たちの部屋やトイレ等、人が生活する上で必要なモノは一切ありませんでした。」
「収容所を運営して囚人をいたぶり殺していた看守が、実は人間ではなくAIだった。そういう訳か。」
「ルビレさんはそのことを知っていて、でも囚人達には言えなかった。」
鉱山の中腹にてルビレさんの言っていた遺品をユーミカさんと共に探しつつ会話を交わす。
「AIなんぞに命を握られているなんてこと、囚人達が知ればやけを起こして暴動か自殺すると考えたんだろう。俺もそんな状況になったら、発狂してしまうな。」
ルビレさんは言っていた。あの地下がこの星の行く末だと。AIに人間が支配されているということなのか?考えながら歩いていると、斜面に何か金属が埋め込まれているのを見つけた。
「あっ!ありました!」
場所を指さすと、ユーミカさんが慎重に取り出す。それは銀色のペンダントだった。表面に美しい青い石が嵌め込まれている。
「青い電晶石が嵌め込まれたペンダントか。ん?中に写真が・・・」
ペンダントの中を見つめ、突然無言になったユーミカさん。何があるのか気になりペンダントを覗くと、そこには赤ん坊を抱きかかえた女性と軍人らしき男性が写った写真が収められていた。縁に文字が彫り込まれているが読めないので、
「これは何と彫られているんですか?」
そう質問したところ、ユーミカさんが涙を流していることに気づいた。
「ヒルダとユーミカへ 永遠の愛を」
写真に写った男性の顔を良く見ると、その顔つきはユーミカさんに似ていた。
「ヒルダは母の名だ。そうか、ここで死んでいたのか」
「ルビレさんの言っていた主任がユーミカさんの父親だったんですね。」
「軍のやり方に反対して収容所に送られたとは聞いていたが・・・。」
写真を見つめていたユーミカさんがペンダントをポケットへ仕舞い込むと、ポツリと漏らした。
「ユースケ。ノア指令はお前を殺すつもりでこの作戦を立てた。俺を同伴させたのも失敗した際、確実に処理させるためだ。」
予想していたことだが実際に言葉で言われるとやはり、何か心に来るものがある。
「それでも戦うか?」
ユーミカさんの問いにルビレさんの言葉が思い起こされる。呼び掛けた者の願い、ノアさんの願いに最も相応しい存在として僕が呼ばれた。ならばそこにきっと何か、意味があるに違いない。
「戦います。」
僕の答えにユーミカさんは笑みを浮かべると、
「お前に特別な力が無くても、俺はお前が勇者だと信じている。きっとここにいる皆もそうだ。」
そう言うとユーミカさんは微笑みながら右手を差し出してきた。
山を下りるとトラックにケガをした囚人達が乗り込んでいた。収容所への物資搬入は2週間後。トラックの台数を増やして往復を繰り返せば、それまでに全員をレジスタンス基地へ連れて行けそうだ。
収容所に待機する囚人達と打ち合わせを行っていると、見張りをしていた囚人の叫び声をあげた。
「バイクに乗ったパワードスーツが近づいてくるぞ!!」
急いでトライブルーに変身すると、ズーム機能で遠くからパワードスーツが近づいてくるのが見えた。
不思議なことに、スーツはずっと俯いた状態でこちらを確認する様子も無い。トライガンを構えて待機していると、ホバーバイクは岩に乗り上げてしまい、スーツは地面へと派手に転げ落ちた。
バイクは自動で停止状態に移行したが、落下したスーツの方はピクリとも動かない。不気味なモノを感じつつユーミカさんと共に駆け寄りヘルメットを外すと、その下にあった顔を見てユーミカさんが叫んだ。
「ツカ!おいどうしたツカ!」
呼び掛けられた男の顔に生気が全く無く、一目で死んでいることが分かった。しばらくツカさんを揺さぶり呼びかけを行っていたユーミカさんだったが、
「ダメだ、死んでる。どうしてアイッスルのパワードスーツを、しかも新型を着てるんだ。」
「何か他に情報は残されていませんか?」
しばらくユーミカさんがヘルメットを調べていると、「ボイスメモが残されている。」とスイッチを押されツカさんの音声が再生され始めた。
『ユーミカと勇者へ伝言を・・・。』
荒い呼吸音交じりの声が焦りを感じさせる。すると驚きの内容が告げられた。
『ノア指令がアイッスル軍に捕らえられたっ!!』




