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「こんなに早く。何か隠していましたね?」
アジはいつものように笑顔を張り付けたまま、注射器を受け取る。
「さあて、誰に試すとしましょうか」
言いながら、奴隷たちを見る。次の瞬間、アジはアロイスの腕に注射器を突き立てた。
「やはり最初は、あなたからでしょうね。嘘だったら罰を受けるのです」
アジは正確にアロイスの静脈にヘロインを流し込む。かなり手慣れている。
体が燃えるように熱い。脳髄に絵の具が流れ込んでくるような気分だ。
「ほう。本当のようですね」
果たして、アロイスの体は爆裂四散することなく無事だった。
「解決方法を知っていて、隠していましたね?」
アジの声が遠くから回転して聞こえる。魔法で精製しているせいだろうか、雑味が消えて、限りなくクリアな品質に感じる。古今東西の薬物を試したことのあるアロイスでさえ、浮遊感を抑えきれない。
「もしくは、あなたが特殊なのか……」
おもむろにヘロインをもう一本注射器に詰めると、奴隷に打ち込んだ。奴隷は逃げ惑ったが、衛兵にがっちりと両脇を押さえられてしまった。
「ふむ」
アジが奴隷の弛緩した表情を見て顎に手を当てる。
「本当に完成したようだ。よろしい、では手順を」
アロイスの思った通り、注射器の中身が濁るのは、アロイスの魔法力が何かしら影響しているのだろう。
これはアロイスの謎の魔法力と関係があるのだろう。誰もわからなかったアロイスの魔法の正体。
薬を無害にする?
いや、薬効は残っているから違うだろう。
他人の魔法力への作用をなくす?
それだけだろうか。
自分にもわからない魔法の正体。その一片を垣間見たことが、アロイスにとっては大きな収穫だった。
しかし――もしそれがアジにバレたら。一生アロイスをここに拘束しようとするだろう。やつのことだ。アロイスの両手両足の腱を切って動けなくする位のことはするだろう。それか正体を失うまで薬漬けにするか。もしアロイスならそれ以上に過激なこともする。
「製法を教えれば、我々にはもう用はないな?」
アジはうなずいた。
「国から出るのも許可しますよ。もちろん、このままここに留まるというのであれば国賓待遇を約束しましょう。もちろん……」
アジが上目遣いにアロイスを見る。
「その製法が正しいかどうか確認した後に、ですが」
アロイスの背中を冷たいものが伝った。
「簡単だ。その方法は……」




