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「進捗はいかがですか」
司令部の建物の前を通りかかると、アジが声をかけてきた。彼は手を後ろに組んで、ニヤニヤした笑みを張り付けていた。
「問題ない」
アロイスは答えて行こうとしたが、アジがアロイスの前に立ちふさがった。
「何だ?」
「いやね、本当に、犯人はあなた方じゃあないのかなあって」
「何が言いたい?」
「この国の人間は、ほとんど魔法が使えないんですよ」
「つまり、私か……グレーザがやったと思っているのか」
「正直なところ」
アジが笑顔のままうなずく。
「くだらん。知りもしない男一人殺したところで、私に何のメリットがある」
「それは、殺した人間にしかわからないことです」
「話にならんな」
アロイスはアジを押しのけた。
「真実を明らかにされることを、願っておりますよ」
いけしゃあしゃあと、どの口が言うのだ。




