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目を覚ますと、そこは自分たちにあてがわれた家だった。
「昨夜はお楽しみでしたね」
グレーザが眼鏡を押し上げる。
「何のことだ」
すさまじい吐き気と頭痛で顔をしかめる。頭の中には何も潜り込んでいないし、目玉は眼窩の中に収まったままだった。
一体何があったのかわからなかった。
「夜中に、酔っ払って帰ってきたんですよ。何を言ってるのか全然わかりませんでしたよ」
うんざりした顔でグレーザが言う。彼はこの国が心底嫌いらしい。それを隠そうともしない。
酔っ払ったなどあり得ない、昨夜は酒など一滴たりとも飲んでない。飲んだとすれば――。
あのお茶か――。アジが勧めてきたのは、やたら生臭いお茶だった。あれは阿片茶だろう。阿片の吸い殻から抽出した、阿片を買えない貧困層が飲むものだ。元々質の悪いものである。さらにめちゃくちゃな濃度だったのだろう。アロイスは自分があそこまで中毒に陥ったことはない。
それに、あの建物から漂っていた煙。あれとの相乗効果に違いない。
なるほど、あのアジという男、司令官と対照的に話しやすいと思ってつい警戒を解いてしまったことが間違いだった。おそらく、そうやって何人も廃人にしてきたのだろう。あの司令官の策に違いない。
味な真似をするではないか。
フランクライヒに対する人質にでもするつもりだったのだろうか。確かに、自分の身は金になるだろうなとアロイスは自嘲気味に笑った。
「どうしたんですか、気持ち悪い。まだ酔っ払っているんですか」
グレーザに言い返す元気もない。
「さっき、そこに朝食が届けられたのでスープくらい飲んだらいいなじゃないですか」
見ると、机の上にいびつなクッキーのようなパンと、スープが置かれていた。
昨日の今日で彼らが持ってきた食べ物に手を付ける気にはならない。瓶の中から水をすくって飲もうとした。
まさか、この水も――。
疑い始めたらきりがない。それに、この水なら昨日ずっと飲んでいたし、グレーザも飲んでいるはずだ。大丈夫なのだろう。
「昨日、私は一人で帰ってきたのか?」
グレーザが再びため息をつく。
「いいえ、髪の長い、男なのか女なのかわからない人と肩を組んで帰ってきましたよ。その人はすぐに出て行っちゃいましたけど」
誰だろうか、その特徴はマヌしか思い当たらない。しかし、彼女が自分を介抱してくれるだろうか。もし、道端で寝ていたなら、寝首をかきそうなものだ。それに、彼女ならグレーザがわからないはずがない。
思い出そうと思っても頭痛でうめき声を上げてしまう。もう一度寝直そうと思ったとき、男がやってきた。マヌの代わりだという。もう太陽も真上に昇りそうな時間だ。随分緩い監視なのか、それとも昨夜のことを把握していて、アロイスが起きてこられないことがわかっているのか。
男は村を案内するという。随分機嫌が良いようだった。自分の名前はモニトルだと言った。
案内すると言われても、この村には芥子畑と軍隊関係の建物と小作人の家があるくらいだ。
案内の道すがら、彼はやたらビグマの歴史を語りたがった。彼の言い分では、世界人類の始祖はビグマ人であり、ビグマの土地をチナ国が盗んだのだという。こういった歴史というのは、往々にして都合の良いように改変されている。神話のようなものだと思ったほうが良いだろう。




