17
その日は朝早くから、騒々しさの起こされた。
「この国はいつも騒々しい」
アロイスが寝台から起き上がってため息をつこうとしたとき、目の前に道化の顔が出現した。驚いて「わっ」と声を上げてしまった。
「驚かすのはよせと言わなかったか?」
アロイスが睨むが、道化はただ笑っている。
「緊急事態なんですよ。お許しを」
「だったら、さっさと何が緊急なのか言え」
「スターテンから使者が来ました」
「それだけのことで、こんなに騒いでいるのか」
「いや、それが……」
道化が言葉を濁す。
「見ていただいた方が早いと思いますので、早速ご同行願います」
道化がアロイスを引っ張って寝台から立たせる。
廊下を歩いている間、すれ違う兵士達のアロイスを見る目に悪意が宿っているのを感じた。
果たして城門前の広場に着くと、そこに小さな少年と、彼が引いてきた荷車があった。そこに近付く前から、アロイスには何があるのかわかっていた。
「これは……」
荷車の仲には、アロイスが破壊した死体を、されに破壊した肉塊が乗っていた。
「猿まねを……」
顔をしかめたアロイスが、視線を止めた。
「これは……」
見覚えのある破壊方法だった。アロイスが切り落として再度縫い付けた指を、もう一度切り落として舌に縫い付けてある。そのほかにも、他の死体から取ってきた腕を一つの死体に縫い付けてあったり、この世界の人間の仕業とは思えない所業である。
極めつきは「Segen」と彫られていた。
「この世界に拷問はないと聞いたが」
「そうですね。ないです」
興味なさそうに道化が言う。
「そんなはずはない。これをやったのは、私の師匠だ」
アロイスは総毛立つのを感じた。




