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建物から出ると、押し寄せていた村人はいなくなっていた。いや、正確に言うと、全員が死体になっていた。
「貴様がやったのか」
建物の階段で、返り血まみれのシルムが座って煙草をふかしていた。
「そうですよ、なかなかやるでしょ」
死体は、村人だけでなく衛兵も混ざっていた。初めて会ったときと同じように、仲間も殺したのだろう。彼は普通に見えるが、狂気に支配されている。殺人に対する罪悪感はないのだろう。その殺人衝動はサイコパスのそれである。
疲れた顔で煙草の煙を吐き「どこへいくんですかぁ」と気の抜けたような声で言う。
「貴様も来い。災害を殺す」
「うほっ、そいつぁ楽しそうだ」
疲れた顔をしていたのに、すぐにシルムは顔を輝かせた。まるで小さな子供のようだ。
「シャフトラはここで待て。ここからは危険だ」
言うと、シャフトラは首を振った。彼女は普段、どんな無茶な要望も答えようとする。しかし、拒否したことは、絶対に曲げない。
「仕方ない。グレーザはシャフトラを守ってくれ。シルムは私の前を歩け」
「えぇ〜、それって危ないやつじゃあないですか」
「この村のことは我々にはわからん。災害の居場所へも、見当はつくだろう」
「難しいこと言いますねえ。まあ、わかりますけど」