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エピローグ:アウルは英雄となる

 ――それから数日後。


「勇者アウル・シーウェル、貴殿の活躍を称え、ここに第一級勲章を与える」


「……ありがたき幸せ」


 俺は勇者学院での一連の騒動の中で、魔王ケクロスを倒したことを評価された。これはすぐに国王にも伝えられ、第一級勲章を授与されることになった。


 第一級勲章――それは英雄の証と呼ばれている。

 二十年前にアレスとリーシャが混乱の中たくさんの魔物を狩り、国を救った時にも、同じ勲章が与えられたという。


 王宮の一室で、たくさんの王族や貴族が見守る中、授与式は恙なく終了した。


 ◇


 魔王ケクロスが破壊した校舎は、現在修繕工事が行われている。

 勇者学院の第一棟は入り口が半壊、第二棟はほぼ全壊、第三棟は被害が少ないものの、修繕は必要だということだった。


 取り急ぎ安全に使えるようになるまでの一週間は休校という形になった。

 マルグレット先生は、あの後騎士団に逮捕され、現在も勾留されている。


 調査の結果、何らかの洗脳魔法を受けているだろうということが調査でわかった。その洗脳はかなり深刻なレベルのもので、かなり高度な魔法が使われていたらしい。洗脳が解ければ、保釈しようという話になっているというところまでは聞いているが、その目途は立っていないらしい。


 俺の治癒魔法で身体は魔人じゃなくなったが、洗脳までは戻せない。そんな洗脳状態でも『安全装置』であると自分に言い聞かせてジャミング魔法を用意しておいたのは、彼なりの抵抗だったのだろうか……。


 俺が魔力不足で寝てしまってからは、何日も勲章関連のことでバタバタしていた。そのせいで、家に帰るのは数日ぶりだったりする。勇者学院に寄って外から様子を確認して、家に帰った。見た感じだと一週間で使えるようになるのか疑問に思うくらいの崩壊具合だった。


「セリカ……待ってくれたのか?」


 家の前で、セリカが俺の帰りを待ってくれていた。スケジュールを確認すれば俺が家に帰る大体の時間は予測できるだろうけど、それでもかなり待ってたんじゃないか? 寄り道してたし。


「アウル……これ、プレゼント」


 セリカから包みに入った何かを渡される。膨らみはそれほど大きくないけど、ずっしり重い感じがする。


「指輪?」


「……うん。で、でも勘違いしないで。プロポーズとかそういうのじゃないから」


「わかってるって」


「ほら、今日アウルの誕生日だから」


 ああ……そういえばそうか。四月十日……俺の誕生日だ。正確な誕生日は誰もわからないけど、アレスとリーシャが俺を引き取った日を誕生日としている。


「ありがとう。……っていうか俺の誕生日知ってたんだな」


「その……知らなかったけど、昨日アレスさんとリーシャさんが話しているのが聞こえてきて」


「それで急いで用意してくれたってことか」


「何をあげれば喜んでくれるかわからなかったから、自分がもらったら嬉しいと思うものを選んだんだけど……」


 セリカの指がキラッと光る。

 俺にプレゼントしてくれた同じ指輪を付けていた。俺も、もらったばかりの指輪を付けてみた。


「ありがとう、気に入ったよ」


「ほ、本当……?」


「嘘言わないって。セリカとお揃いってのもポイントが高い」


「お揃い……気づいたんだ」


「そりゃ気づくよ。俺がお揃いのネックレスをプレゼントしたのを思い出して、贈ってくれたんだろ?」


 俺が入学式の日に銀色のネックレスをプレゼントしたとき、セリカは俺の予想以上に喜んでくれた。それが嬉しかったから、俺にもお揃いのアクセサリーをプレゼントしようと思ったんだろう。


「アウルがくれたネックレスみたいにそんなに良いものじゃなくてごめんね」


「贈り物は気持ちが大事なんだって。……そうだな、じゃあネックレスみたいに、何か魔法を組み込んでみようか」


 俺は指輪を見つめて、組み込みたい魔法のイメージを思い浮かべた。


「セリカの指輪もちょっと貸してみて」


 指輪を預かって、こっちにも魔法を組み込む。


「よし、できた」


「何をしたの?」


「ちょっとした魔法を組み込んだんだ。俺のことを思い浮かべてくれるか?」


「わかった。……こう、でいいのかな」


「ほら、指輪が緑色をしてるのがわかるだろ?」


 セリカの指輪はキラキラと緑色に光っていた。ちなみに、俺がセリカを思い浮かべると、俺の指輪も緑色に光る。


「意識が無い時は赤色。もし死んだときは黒色。近づけば近づくほど鮮やかな色になって、遠ければ遠いほどぼんやりした色になる……そんな効果をつけたんだ」


「素敵……」


「セリカ、これからもよろしくな」


「――うん」


 こうして見ていると、魔王ケクロスを相手に復讐に燃えていた女の子とは思えない。俺が彼女の代わりに復讐を果たした。ほんの少しでも、気持ちを軽くすることができたのかな。


「って、立ち話もあれだしそろそろ家に入ろうか」


 その後、帰ってきて早々に誕生日パーティが始められた。なんとアンナとエストも来ていて、今年は一番盛り上がったように思う。


 こんな平和な日々がずっと続けばいいのにな。

 いや、平和にしなくちゃいけない。俺は勇者になって、真の平和を手に入れる。そう心に誓った。

▼2020年7月よりこちらも連載しているのでよかったら読んでみてください。↓のリンクから読めます。

『神話時代の最強賢者、癒しの勇者に転生する 〜最強の攻撃魔法と最強の回復魔法で世界最強〜』

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