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第38話:まだ終わらない

「アウル君、無事ですか! 魔王は!?」


 一段落ついたところで、エストとアンナ、セリカが集まってきた。


「魔王ケクロスは倒した。……正直、ちょっと呆気なかった気もするけどな」


 俺だけの力では倒せなかった。だけど、俺がこれからもっともっと強くなれば、俺一人の力でも倒せるようになるかもしれない――そのくらいの手応えだった。


「魔王ケクロスは、魔王の中では最弱……そう聞いたことがあるよ」


 ケクロスについて詳しいセリカは、そう言った。


「最弱でこれだと、後が思いやられるな……」


「でも、これにて一件落着ってわけよね?」


 アンナがちょっとテンション高めの感じで訊ねてきた。


「いや、まだだ。まだ終わってない」


「そうですね。……僕もそう思います」


「どういうことなの……?」


「私意味わかんないんだけど……」


 セリカとアンナは分からず、俺とエストだけが分かっているという状態だった。


「とにかく今は急いでいるんだ。二人はここに残って、誰かが来たら事情を説明してやってくれ! エスト、いくぞ」


「はい」


 俺とエストは、ケクロスが暴れた学院の中でも比較的被害がマシな、第三棟に入った。


「エストはどうやって気づいたんだ?」


「僕は鐘が何度も鳴ったあの時がきっかけです」


「なるほどな。あの鐘はやっぱり特別な意味があるのか?」


「あります。勇者学院には魔王勢力が入ってこないようにする結界があるのはご存知ですよね」


「ああ」


「万が一その結界が破られ、魔王勢力が入ってきたときには、警告として鐘が鳴るという仕組みになっているんです。……今ではもうほとんどの人に忘れ去られてしまっていましたけどね」


「エストはなぜか、その辺詳しいよな」


 こいつはどこから情報を仕入れているのか、普通は知らないことをたくさん知っている。前からずっと不思議だった。


「そろそろアウル君には隠し通せなくなりましたね。……いいでしょう、特別にあなたにだけ教えます」


「そんなに大事なことなのか?」


 エストは無言でこくっと頷いた。


「僕の父はアレイン王国の国王なんですよ」


「王子様だとしたら、エストって名前は偽名だったのか?」


「いいえ、本名です。父は国王ですが、僕はいわゆる隠し子なんですよ。でも、父にはとても可愛がってもらっていて、自然と王国の機密事項にもかなり触れてきました」


「へえ」


 まあ、こいつが国王の息子って言われても驚かないな。なんとなく王族っぽい感じの気品がある。


「逆にアウル君はどうして気づいたのか僕には不思議でなりませんよ」


「それについては、あの人と会ってから話すよ」


 第三棟――マルグレット研究室。


「鍵がかかってるな」


「魔法でこじ開けますか?」


「いや、その必要はない」


 俺は素手でドン! っと扉を殴った。木製の扉なので、簡単に壊れた。


「やり方がなかなか野性的ですね……」


 研究室の中では、マルグレット先生が奇妙な魔法陣の前にいた。


「マルグレット先生、あんたはどういう仕組みでこの学院の中に入ったんだ?」


「な、なんのことだろうか、アウル君。それよりちゃんとノックくらいはした方が良いと思うな!」


「トボけても無駄だ。あんたが魔王ケクロスのこの学院に引き入れたとしか状況的には考えられないんだ。これは周知の事実だけど、勇者学院には魔王勢力を入れないための結界が張ってある。いくら魔王といえど、この結界を外から強引に破るのは簡単じゃない。戦ってみた感触では、ケクロスでは無理だ」


「僕が魔王を引き入れた、そう言いたいんだね? 証拠もなしに人を犯人扱いするなんて酷いじゃないか。先生怒るよ?」


「まだトボけるつもりか? あんたが魔王勢力――例えば魔族だったとしたら、断定しても問題ないだろ」


 マルグレット先生は眉根を寄せた。


「何を証拠に……。僕が魔族なら学院に入れるわけがないだろう?」


「ああ、それだけが不思議だった。それを聞きたいってのが正直なところだ。……ちなみに証拠ならあるぞ。あんた、【炎球】の詠唱魔法を唱えてみろ」


 マルグレット先生は全てを悟ったのか、はぁと息を吐きだした。


「…………やっぱりあの時か」


「詠唱魔法は人間にしか使えない。詠唱魔法は正確な呪文じゃないと発動しない。……あんたは間違った呪文を唱えたにも関わらず、問題なく魔法が起動した。……それはなぜか。その答えは、あんたは詠唱魔法を使えないんだ。呪文を唱えるふりをして、無詠唱で魔法を使う。そうすれば、一見したら詠唱魔法を使ったように見えるからな」


 アレスは、詠唱魔法を人間だけに制約する意味を疑問視していた。だが、そのおかげでマルグレット先生が敵であると断定できるようになった。


「いいだろう。……僕がこの学院の敷地に入れている理由を教えようじゃないか」


 意外にも、マルグレット先生は自分の過去を語り始めた。


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