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第33話:紙芝居完成

 休日の二日間は、かなり充実したものになった。

 一日目で【黒炎】を全員が無詠唱で使えるようになった。【身体強化】【黒炎】と二つこなしたことでそろそろコツを掴んできたのかもしれない。

 どちらも簡単な魔法だけど、大きな進歩だ。


 二日目はまたアレスを交えて剣の練習をした。模擬戦を見せるのではなく、実戦形式でクタクタになるまで試合を繰り返した。


 この二日間で、さらに三人は強くなったと思う。


 ◇


 朝。いつも通りセリカと一緒に勇者学院に行った。時間はいつもと同じで、朝礼開始の十五分前くらい。教室に入って驚いた。


「……アンナが十五分前にいる……だと……?」


 雨降ったりしないよね!? いつも遅刻ギリギリのアンナがこんなに早く学校に来るなんておかしい! 何か起こるよ!


「私だってたまには早く来るのよ。……ほら、紙芝居の絵が描けたから早めに見せておきたくて」


「あー、今日の実技は午前だったもんな。さっそく見せてもらっていいか?」


「もちろんよ。そのために書いて来たんだから」


「僕は先に拝見しましたが素晴らしい出来でしたよ。アンナさんには絵の才能があります」


「褒めても何も出ないのに。ちょっと嬉しいけどね」


 アンナから合計二十枚の画用紙を渡された。前半の十枚が【氷柱】、後半の十枚が【黒炎】だということらしい。


 一枚目を見て本当に驚いた。


「色まで付けてくれたのか! しかもこんなに細かく!」


 たった二十枚のうちの一枚なのに、凄い描き込み量だ。これだけで一時間くらいはかかったんじゃないか? しかも俺が描いた絵よりもずっと精緻に描かれている。


「どうせやるなら本気でやらないとって思ったの。一応お詫びでもあるんだしね」


 アンナが描いてくれた二十枚の絵は、どれも同じくらい力が入っていた。限られた時間の中でここまでやってくれたら十分すぎるぐらいだ。クラスの皆もこの紙芝居なら無詠唱のコツを掴めそうだ。……っていうか、これでダメならもう何をやってもダメだよ!


「ありがとう、アンナ。期待以上の出来だった。本当に絵が上手くてびっくりしたよ」


「えへへ……ま、まあ当然ね」


 アンナは照れながらも、嬉しそうに微笑んだ。


「では僕が清書した原稿も目を通してくれますか」


「読ませてもらうよ」


 エストから三枚の紙に書かれた原稿を受け取って、軽く目を通した。朝礼まであまり時間が無いので、丁寧に読む時間がないのだ。


 その原稿は、俺が書いた文章より何倍にもパワーアップしていた。語彙の数が増えて深みが出ているのに、簡潔で読みやすくなっている。俺が読みやすいと感じるということは、聞き手にとっては聞き取りやすくなっているということだ。


「さすがエストだよ。……にしても、文章力凄いけどどこでこんなの覚えたんだ?」


「えっと……普通に本を読んでいればこのくらいの文章は書けるようになりますよ」


「本を読めば……ってみんな言うけど、俺は上手くないぞ? やっぱりこれも才能だよな」


「あまり謙遜しても嫌みになりそうですし、ありがとうと答えておきます」


 早くこの文章と絵を使って紙芝居をやりたい。

 より良くなった文章と、より良くなった絵。これらが一つになったら、相乗効果でそれぞれが何倍にも引き立つ。それを早く見てみたい。



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