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第27話:放課後の特訓③

「……良いお話でしたね。即興でこんなお話を創れるとはさすがです」


「絵はちょっとあれだけど、話のおかげで色々と想像できて良かったわ」


「始めのところとか凄くリアルだと思ったよ!」


 即興で作った作品だけど、概ね高評価という感じだった。話の内容はありきたりな話だけど、俺の個人的な経験を入れたおかげで深みが出て良かったのかもしれない。


「紙芝居としての出来はどうでもいいんだ。これで【氷柱】がイメージできるようになったかどうかが問題」


「僕はちょっと自信があります。お話を聞いてすぐなら出来るかもしれません」


「私もちょっと出来るかもって思ったわ!」


「あれ……自信が無いの私だけ?」


 エストとアンナは自信ありで、セリカだけが自信無しって感じか。


「じゃあ二人は自主練習な。俺はセリカと一対一で教えるから」


「えーいいなー、アウルに個人レッスンしてもらえるなんて! 私も自信なくなったよ?」


「嘘ついてるのバレバレだよ。アンナは一人でやってくれ」


「むー、わかったわよ、一人でやるわ!」


「あの、僕もいるので一人ではないんですけどね」


 アンナはエストの苦言に反応せず、【氷柱】の練習を始めた。

 さて、自信が無いセリカにどうやって説明しようかな。


「まず最初に聞きたいんだけど、氷のイメージはあるか?」


「それは大丈夫。総合食料店で働いてた時に何度も見たことあるから」


「そういえばそうだったな」


 セリカは、生活費を稼ぐために王都のお店で働いていた。新鮮な野菜を扱うには氷が不可欠なので、嫌というほど見たに違いない。……ということは、氷自体のイメージができないというわけではなさそうだ。


 なら、【身体強化】の時と同じアプローチでいけそうだな。


「セリカには、勇者になりたい理由があったろ? ということは、魔物や魔族、最終的には魔王と戦わなきゃいけない。セリカが将来戦うことになる敵を思い浮かべて、その時【氷柱】がどんな風に役に立つのか考えてみるんだ。それできっとできるようになる」


「敵……そっか」


 セリカは小さく呟くと、右手を強く握りしめた。


「【氷柱】が使えるようになったら役に立つかな?」


「連射がしやすい魔法だからよく使う魔法にはなると思うぞ。【炎柱】とか【水柱】みたいに少し工夫することもあるけど、それも含めれば【身体強化】の次に役立つ魔法かもな」


「アウル、ありがと。出来る気がしてきた」


「それは良かった。あーでも、言い忘れてたけど今日は【氷柱】を出すところまでで、発射は今度にしてくれよ? ここでぶっ放すと庭に穴が空くから――」


 と、その時。


 ガシャアアアアァァァァンッと大きな音がした。

 驚いて音のした方を振り向くと、芝生に大きな氷が刺さっていた。

 あちゃー、やっちゃったか。


「ご、ごめんアウル! こんなことになるとは思わなかったの……!」


 氷を誤射したのはアンナだった。


「アンナは悪くないよ。俺の注意不足も原因だしな。初心者が誤射するくらいのことは想定しておくべきだったよ。そんなことより、怪我人が出なくて良かったよ」


「でも、綺麗な芝生が……」


 この家の庭には、青々とした綺麗な芝生がほぼ全面を覆っている。そこに大きな氷が穴を開けた。氷が溶けるまでは一種のオブジェみたいで綺麗だけど、溶けたら穴だけが残ってしまう。


「俺は治癒魔法はあんまり得意じゃないんだけど、これくらいならなんとかなるよ」


 治癒魔法――怪我を瞬時に治すときに使う魔法だ。得意な者なら瀕死の状態の人間を瞬時に完全回復させることもできる。少なくともリーシャならできる。


 そんな便利な魔法だが、使い方によっては怪我の治療以外でも役に立つ。治癒魔法は変化を巻き戻す効果がるので、それを利用してやるのだ。


 穴が空いた部分の体積はそこまで大きくない。地盤が固いため深くまで刺さっていないのだ。だから、俺の治癒魔法でも簡単に戻せる。


 まずは高温の【炎】で氷をすべて溶かした。


「あんなに冷たそうな氷が一瞬で!?」


「目の前で起こっていることが信じられませんね」


「さすがアウル!」


 俺は苦笑する。【炎】くらい誰でも使えるだろうに。温度を上げるのは単に酸素を多く取り込むイメージをしているだけ。小学生でも知っている知識だ。


 庭が元の芝生に戻るイメージで、治癒魔法を使って、巻き戻していく。土が元の場所にもどり、芝生は綺麗な状態になった。


「ほら、すぐ直っただろ? だから気にしなくて大丈夫だ。失敗は成功のもとって言うし、アンナが成長したと思えばこのくらいの手間はなんてことないよ」


「アウル……アンタって本当良い奴なのね! ちょっと魔法と剣技が上手くて……顔もそこそこの、ちょっとかっこいい男だと思ってたら全然違うじゃない!」


 アンナは顔を耳まで赤くして、言ってきた。

 そんな風に思ってたのか……って、結構褒めてない? 最初から評価高くない!?

 

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