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第15話:お宝ゲット

 勇者学院の入学は決まったけど、入学式はもうちょっと後になる。

 四月二日が入学式だから、まだ一週間もある。


 日課の鍛錬を終えたら特にやることもないので、俺は王都の商業地区をふらふらと歩いてみることにした。

 ついでにリーシャから頼まれた食材の買い出しもやっておく。


 入学前にも少しだけ様子を見たことがあるけど、やっぱり物凄い人の数だ。住民の数もそれなりにいるけど、行商人や冒険者みたいな見た目の者も多く歩いている。


 露店では、冒険者から買い取ったアクセサリーなんかも並んでいた。

 俺は、不思議な二つのネックレスを見つけて足を止めた。


 色や形がおかしいというわけではない。いたって普通の銀色のネックレスだ。禍々しい魔力を放っている物じゃないし、値段もお手頃で、二つ合わせて五百リール


 一リール=一円くらいの感覚なので、五百リールは五百円くらいの価値になる。


「お目当ての品はありましたかね?」


 ネックレスを見つめる商人が俺に気づいて声を掛けてきた。


「そのネックレスが気になってるんだが、これはどこから?」


「あぁ……それはリンシア遺跡で取れたものらしいですぞ。一級品のお宝と一緒の箱に入れてあったらしいが、鑑定してみたらガラクタ同然でしたわ」


「そうなのか、なるほどな。……では、それをもらおう」


「まいどっ!」


 俺は五百リールを渡して、その代わりにネックレスを受け取る。

 露店を後にした。


 この近所にある総合食料店を目指して歩きながらネックレスを改めて確かめた。


「やっぱりな」


 これはガラクタなんかじゃない。商人の話によれば、一級品のお宝と一緒に保存されていたらしいがこれこそが本物の宝に違いない。

 確かに、漏れ出す魔力の量は少ないし、付けているだけで何かの恩恵があるわけじゃない。……逆に、呪いの道具のようほんの少しずつ魔力を吸い取っている。


 だが――これは間違いなくお宝だ。

 こんなものが五百リールで手に入るとは、王都は良いものだな。


 二つのネックレスをポケットに入れて、先を急いだ。


 ◇


 総合食料店――日本で言うところのスーパーみたいなものが王都リンシアにも存在する。近代化できていなこの世界では一つの施設に全てを集めるというのが難しいので、少し工夫がしてあった。


 商店ごとに出品する大量の商品がジャンルごとに分かれて並んでいるのだ。各商店は一定のテナント料を支払うことで自由に物を売れるし、消費者はこの施設で食料の全てが揃う。――ショッピングモールを改良したみたいな仕組みだと考えると理解しやすい。


 施設側がレジ係を用意しているので、色々な商店を巡ってじっくり選んでから、まとめて支払いができる仕組みになっている。


「キャベツとレタスと白菜と……」


 会計専用の籠の中に、次々と買いたい物を放り込んでいく。

 あれ……? ブロッコリーってどこだろう。

 こういう時はそこら辺にいるスタッフの人に聞くのが早い。


「すみません、ブロッコリーを探してるんですけど」


「ブロッコリーですね。……えーと、確か向こうの方に」


 あれ……? この声どこかで聞いたことがあるぞ。あ、思い出した。

 向こうも俺に気が付いたようで、


「………………」


「………………」


 お互い無言になった。


「セリカ……だよな?」


 セリカはこくんと頷いた。


「その……勇者学院って寮が無いし、仕送りも無いから最低限の生活費を自分で稼がないといけなくて」


「そうだったのか」


 確かに王都出身じゃなければ、どこかに部屋を借りないと生活できないよな。合格したばかりだから宿に泊まってて、まだ部屋は借りてないんだろうけど……あっ、いいこと思いついた。


「セリカ、うちに来ないか?」


「うち?」


 セリカは意味がわからないようで、きょとんとしている。


「結構広い家で部屋が余ってるんだよ。うちに住めば家賃が浮くぞ」


「ええええ!? いやいやいやいや、それは悪いよ!」


「何が悪いんだ?」


「だってその……さすがに迷惑だと思うし、ご両親もいい顔しないと思うし」


「ああ、父さんと母さんは変わり者だから大丈夫だよ。気にするな」


「気にするって!」


 家賃タダで住める良い話なのになんでこんなに抵抗するんだろう?


「あっ、そうか。住むならまず下見しないとダメだよな。忘れてたよ」


「そ、そういう問題じゃ……」


「仕事いつ終わる?」


「今日は昼すぎまでだからもうちょっと」


「わかった、じゃあ外で待ってるから」


「ちょっとまって――はぁ」


 俺はセリカに教えてもらったブロッコリーを含むいくつかの食材を籠の中に入れて、レジに進んだ。

 それから一旦外に出て待つこと二十分ほどで、セリカが仕事を終えて出てきた。

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