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第10話:一次試験①

 一次試験は魔法と剣技の二種類の試験がある。


 魔法と剣技の成績を総合して、上位の者が二次試験に進むことができる。魔法と剣技のどちらかに抜きんでた能力のある者も数人は二次試験に進むことができる。つまり、多少偏った成績であっても勇者学院に入学することも可能だということだ。


 校庭の端に設置されている金属製の丸い的の前で、先に魔法の試験を行うことが発表された。


「えー、この的に得意な攻撃魔法を当ててもらう。中心に近いほどポイントが高いし、威力は問わん。魔法の撃ち直しは三回まで。……質問はあるか?」


 威力を問わないというのは、ここにいる全員が基礎試験を突破し、一定以上の魔力があると証明されたからだろう。威力に関しては魔力の使い方の問題だし、入学してからでもどうにでもなる。


 受験生は今の説明で理解したようで、質問の手は上がらない。


「えー、じゃあ今から試験を始める。さっきと同じ順番だ」


 俺の前には四人の受験生がいたが、さっきの基礎試験で魔力量が足りず二人脱落している。その分が繰り上がって、俺は三番目だ。


「えー、一人目」


 試験官に言われて、一人目の受験生が印のついた位置に移動する。

 印の部分から的までは大体二十メートルくらい。

 ……短すぎない?


「やっぱり二十メートルは長いわね……」


「当てられるか心配」


「どうしよう……緊張してきた!」


 嘘だろ!?

 みんな的当ては苦手なのかな? 魔法の基礎なんだけどな。


 一人目の受験生が試験官の合図で魔法を発動する。


「神の創りし氷山の一角、穢れなき氷を我が手に――氷岩(アイスロック)!」


 え、え、え、ええええ!?

 何言ってんの!? もしかしてアレか、詠唱とか呪文とかそういうやつ……?


 詠唱することで時間がかかるし敵に手口がバレバレになるっていう恥ずかしいやつじゃん……マジですか。

 早口で噛まなかったのは凄いけど、三秒くらいかかってるよね! こんなのが勇者になって大丈夫!?

 いや待て、さすがにそれはない。あの感じじゃ合格は無理だろうなあ。


「……凄いぞ! 主席候補じゃないか!?」


「ど真ん中!」


「なんてスムーズな詠唱なの!?」


 ええ……なんかみんなべた褒めしてるよ。この学校大丈夫?

 チラッと試験官を見た。

 パチパチと拍手している。……本当に優秀なんだ……あれで。


 そんな心配をしていると、俺の番が来た。


「よし、始め!」


 試験官の合図があったので、俺はゆるりと手の平を的に向ける。

 そしてイメージする。炎の球……【炎球】が飛んでいく過程を、結果を。ただし、威力はちょっと抑えめで。


 無詠唱で繰り出した【炎球】はスムーズな軌道で的に衝突する。

 その後には焦げた跡が残っていた。


 うん、これが魔法だよね。


「む、無詠唱!?」


「無詠唱であんなに綺麗に飛ぶものなの!?」


「あれは威力も凄かったぞ! どうなってるんだ!」


 結構な騒ぎになっていた。……普通のことをしただけなんだからここまで騒がなくていいでしょ。

 試験官は的に穴が空きそうなくらい、俺が攻撃した的を見ていた。


「あ、ありえない……この特殊合金の的に焦げがつくなんてことがあってはならんはずだ!」


 ……え?


「威力を抑えめにしたんですけど、加減が足りませんでした?」


「あ、あれで加減していたと言うのか!? ……さすがはというべきか。……本当に人間離れしているな」


 父さんと母さんは神様だけど、俺は正真正銘人間だよ!

 ……っていうか、魔王に後れを取ってたのって人間側の実力が無さすぎたんじゃないだろうな……。


「えー、気を取り直して次の者、定位置についてくれ」


「は、はい!」


 的には焦げがついたとはいえ、普通に使える状態だ。取り替えることなく試験は続行という形になった。三回のチャンスがあるため、ほぼ全員が的には当てることができたが、中心を射抜いたのは一人目の少年と俺だけだった。


 的当ての試験が終わると、校庭の壁に設置されていた金属製の的が丸太に交換された。


 

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