好きだった
ある日の午後、僕は夏休みの宿題も机に広げたまま横になっていた。
しばらく天井を眺めていると、窓の外から君の声が聞こえる。
早く出てきなよって。
僕は一度それを無視するんだ。
すると君は、いるのはわかってるよって言う。
そして僕が顔を出すと君はニコッと笑うんだ。
今日はどこへ行こうか。
一瞬強く吹いた秋風で私は思わず身を震わせる。
あなたが逝ってもう3年が経った。
あの時の私はあなたの痛みに気づけなかった。
でも今ははっきりわかる。
遅すぎたけれどもう逃げない。
あなたとしっかり向き合う。
今や曰く付きとされたその部屋。
いつも通り名前を呼ぶ。
無視される。いつもの儀式。
そしてあなたは顔を出す。
あの時から変わっていない長く伸びた前髪の奥に見える奥二重でちょっと細い目。
そう、私はあなたの目が好きだった。
思わず思いが込み上げそうになる。
だが堪える。そして、私は笑う。
君をそこから連れ出すため。
そこはあの夏で止まったまま。
初投稿となります。
夏木ソラと申します。
よろしくお願いします。