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25/32

第25話 ????

辺りを見渡す。

赤茶けた大地に、どこまでも続く青い空。


見た事のない世界。

見た事のない景色。


その視界には、鉄やコンクリートで組みあがった街並みは無く。

此処が自分の知らない世界であることを痛感させてくれる。


「夢じゃなかったんだ、ここが異世界……」


呟き、視線を降ろすと胸元に膨らみがあり。

耳を弄ると横に長く、尖がっている事が分かる。


注文道理……

顔は確認できないが、此方もきっと大丈夫に違いない。


いやでも、これは本当に現実なのかしら?

ひょとして夢なんじゃないだろうかという疑問が頭をよぎる。


「よく頬をつねって痛みがあれば現実って言うわよね」


夢ならば痛みは感じない。

もしくは、痛みを感じる様ならそのショックで目を覚ますはず。


理屈としては何となく納得は出来る。

ただ、頬をちょっとつねった程度の痛みで目を覚ますかは正直疑問な気もするけれど。


「とりあえず強めにつねってみましょう」


結論が出た所で頬を全力で摘まみ、捻って引っ張る。

これでもかと全力で。


「いだだだだだだだだ」


痛い。

それもとんでもなく。


予想を遥かに超える痛みに少し涙目になるが、ここまでの痛みで目を覚まさないのならば、これは夢ではないと確信出来た。


やった!

夢じゃない!


その余りの嬉しさから両手を大きく掲げ、ガッツポーズで叫び声を上げようとしたが、乙女の行動ではないと判断し咄嗟に止める。

そして改めて胸の前で小さくガッツポーズし、小さく声を出す。


「よし!よし!」


うん!こっちの方が断然女の子らしい!


以前の様なガサツな生き方はもうしない。

私はこの世界で生まれ変わる。

大好きな彼の為に。


「さて、どうしようかしら?」


彼がこの世界に来るまでには暫く時間が掛かるらしい。


彼がこの世界へと訪れる前に、目的を果たしておこうかしら?

ううん、ダメダメ。

折角なんだし、彼と二人で手と手を取り合って頑張った方が二人の仲も深まるわよね。


私は妄想する。

彼と二人で力を合わせ邪悪な魔女へと立ち向かい、長く辛い戦いの末に私たちは魔女からコアを奪い返す。

そして、彼と私は新世界のアダムとイブへ!


「良い!凄く良い!決まりね!」


おっとっと、危ない危ない。

興奮の余り口の端から涎が照れている事に気づき、慌てて拭う。


彼の前で涎を垂らすのはNG。

今後気を付けるようにしないと嫌われちゃうわね。


良し!決めた!

私女を磨くわ!

そして彼が来た時びっくりさせてやるんだ!


「彼の驚く顔が楽しみだわ」


溢れんばかりの希望を胸に、私は空に向かって呟く。


見上げる空は青く、どこまでも青く。

その眩い太陽の輝きは、まるで私の門出を祝福してくれているかの様だ。



ここから新たな人生が始まる。

私にとっての本当の人生が今、ここから……

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